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プロダクトアウト型の発想から顧客体験重視の金融サービス提供へ みずほ銀行が挑むエンゲージメント構築

 デジタル社会の到来とともに、「モノ(商品)」から「コト(体験)」へ、多様化する消費者のニーズはシフトしている。この動きはBtoCビジネスだけでなく、BtoBビジネスにおいても同様だ。先進的な企業は、良質な顧客体験を提供することで、事業収益拡大への商機を既に見出し始めている。2019年7月23日に開催された「Adobe Symposium 2019」へ登壇したみずほ銀行もその一社だ。同社が昨今の時代の変化をどう捉え、Marketo Engageをはじめとした最新テクノロジーを活用しながら、巻き起こす変革についてレポートする。

「デジタルを活かした新たな価値創造」に挑むみずほ銀行

 近年、テクノロジーの進化や人々のライフスタイルの変化により、消費者ニーズの多様化、複雑化が進んでいる。これらの変化はBtoCビジネスに限らず、BtoBビジネスや老舗産業においても同様だ。

 そんな中、みずほ銀行は「デジタルを活かした新たな価値創造」を掲げ、法人営業領域の変革に取り組んでいる。同行でその変革を推進しているのが、リテール法人推進部 部長の半田邦雄氏だ。半田氏は1993年の入行以来、法人向けサービス、特にSMB向けに特化したマーケティング全般、貸出・決済プロダクトなどの開発に長く携わった経歴を持つ。

 昨今の銀行を取り巻く環境の変化について、「デジタル化への取り組みは、大企業だけでなく、中小企業においても急務になっている」と、直面している状況を半田氏は語る。

 「従来、銀行の営業は“足で稼ぐ・足が命”だと言われてきた。顔と顔を合わせてビジネスを進めていくやり方は重要だが、旧来の営業スタイルではデジタル時代のスピード感についていけない。みずほは約80万社のお取引先を抱えているが、担当者が訪問するケースからATMでの振り込みまで、接点の内容や頻度は様々。対面営業にとらわれず、デジタルテクノロジーを使ってより金融サービスを身近に感じていただくことが大切ではないか、という考えから、デジタルを活用した新たなサービスの模索が始まった」(半田氏)

みずほ銀行のデジタル変革を牽引する、同行 リテール法人推進部 部長 半田邦雄氏

 実際、2016年には法人口座開設のネット受付を開始し、口座開設の可否について最短翌営業日には案内できるようになった。また決済サービスでは、2018年にメガバンク初の法人向けデビットカード「みずほビジネスデビット」をスタート。翌年5月からは、オンライン融資「みずほスマートビジネスローン」をサービスインした。これにより、ネットで手続き・審査が完了し、最短2営業日で借り入れが可能になった。

 みずほ銀行は、約80万社という膨大な顧客を適切にサポートしていくために、人力に頼るのではなく、Marketo Engageをはじめとしたテクノロジーを活用し、Webやオンラインを通じたサービスを提供している。

 これを受けて、対談をモデレートするアドビ システムズ マルケト事業統括 専務執行役員の福田康隆氏は、「テクノロジーを活用して中小企業にサービスを提供する重要性は、私自身も長年実感してきた。顧客体験のレベルを落とさずに、デジタルでどのようなことができるのか。このような共通の課題感をもっていたこともあり、みずほ銀行様のプロジェクトに関わらせていただいた」と語る。

プロダクトアウト的な発想から、顧客体験重視のサービスへ

 デジタル変革の取り組みは様々な業界で急務となっているが、歴史のある業界ほど障壁が高いという一面もある。これに対して半田氏は、「これまでの銀行は、プロダクトアウト的な発想だった」と振り返る。

 「身近に金融サービスを触っていただくことは大事だが、その本質は“サービスの提供”ではない。“サービスを使うことでどういう体験ができるのか”をお客様に感じてもらい、身近に寄り添う部分が必要だと考えた。たとえば銀行員は、インターネットバンキングをどう使うのかの説明はできるが、実際に使っていない。自分たちが体験できていないものを顧客に提供していること自体が課題だった」(半田氏)

 その一つの解として、昨年5月、みずほ銀行は中小企業向けに特化した「みずほスマートポータル」を立ち上げた。同ポータルでは、サービスの申し込みがオンラインでできるだけでなく、豊富な事例コンテンツを掲載。他の会社の経営者・担当者が新たなデジタルサービスをどのように活用し、メリットを感じ、それがどう経営にインパクトを与えているのかをケーススタディとして紹介している。

 「情報発信を続けるうえで大事にしているのは、お客様の認知から始まり、取り引き、そしてファン化まで促進していくカスタマージャー二―を念頭に置くこと。読んだ方の顧客体験を喚起し、みずほ銀行が提供するサービスをより身近に感じてほしい。これまでの銀行は画一的なサービス・情報発信が一般的だったが、これからはテクノロジーの力を借りながらお客様とOne to Oneコミュニケーションをしていきたい」(半田氏)

 これを受けて、福田氏は「業界が違っても、同じような課題に向き合っている企業は多い。その観点から、我々もオンライン・オフラインのユーザー会や今回のシンポジウムを開催するなど、ユーザーの皆様が情報を共有・獲得する機会を提供している」と語る。

 「SMBとひとくくりにしがちだが、一社一社、急成長中のスタートアップから歴史のある企業まで、企業の状況は異なるため、どんなコミュニケーションをしていくかは難題だろう。また、自社の業界だけでなく、他の業界の成功パターンを自社に当てはめるとどうなるのか、ぜひ掘り下げて考えてみていただきたい」(福田氏)

写真左:アドビ システムズ マルケト事業統括 専務執行役員 福田康隆氏が対談をモデレートした

 みずほ銀行は、エンゲージメントマーケティングプラットフォーム「Marketo Engage」を導入し、デジタル変革に取り組んでいる。そもそもどのようなきっかけで、活用に至ったのだろうか。

 デジタル変革に挑む際に、まず半田氏は「顧客分析」と「海外市場調査」を実施。そこから顧客が銀行に求めていること、海外の銀行におけるソリューション活用の現状を洗い出した。そこから、単なるプッシュ型のコミュニケーションではなく、顧客が求めている情報を適切に届けるマーケティングオートメーション(MA)やCRMの活用という議論に行きついたという。

 「シンガポールやアメリカの銀行の取り組みから、個人のお客様だけでなく、新たに中小企業のお客様とのコミュニケーションにもMAが活用できるのではと気づいた。ただ、コミュニケーションへのMA活用はあくまで手段であり、本来の目的は“日本の産業を支える”ということ。そのゴールに沿った世界観を実現するためにはMarketo Engageが最適であり、また良きパートナーだと判断し、導入に至った」(半田氏)

社内変革の第一歩は、Marketo Engageで実現する世界観の共有

 どんなに高機能なマーケティングソリューションであっても、社外パートナーを含めた関係者全員で目指す方向性やカルチャーが合致しなければ、大きなビジネス成果は期待できない。価値観を共有し、成功するプロジェクトに育てていくために、みずほ銀行内ではどのように意識変革を進めていったのだろうか。

 実は、「Marketo Engageは意思決定から導入までの期間はわずか2ヵ月で、スピード感をもって推進した」と半田氏。しかし、「対面営業こそが究極のOne to Oneマーケティングのカタチで、デジタルマーケティングは画一的なメール配信のようなマスマーケティングでは」という誤解を解くのに、多少時間もかかったという。

 「デジタルマーケティングでOne to Oneマーケティングが実現できることを、海外の金融機関の導入ケースをもとに、上層部を含め社内に丁寧に伝えていった。“Marketo Engageを導入したい”ではなく、“自分たちが目指す世界観の中で、Marketo Engageがどんな役割を果たすのか”を経営層と共有した。今は挑戦の最中だが、目指す世界の実現に近づいている手応えは感じている」(半田氏)

 変革プロジェクトを推進する上で、「抽象的な表現になるが、経営層との世界観の共有は必須。こういった視点でも、半田氏の話は他の企業においても大きな参考になる」と福田氏も賛同する。

 みずほ銀行では既に様々なデジタル化を推進するサービスが展開されているが、今後はどのようなプロジェクトの展開を描いているのか。半田氏は「つきつめればつきつめるほど山は高くなる。人材を社内外から集めたり、体制も徐々に整ってきているが、まだ3合目あたり」と実感を語る。

 銀行はBtoBとBtoC、両方のビジネスモデルをもっている業界だ。たとえ法人であっても一個人なので、コンシューマー向けレベルのサービスを法人向けに提供できなければ、真の顧客体験は実現できない。求められるレベルも必然的に高くなる。

 ここに向けて、Marketo Engage導入の決め手となった「世界観の共有と実現に向けたサポート体制」「ツール操作の簡易さ」「CRMへの拡張性の良さ」を半田氏は取り上げ、さらなる世界観の実現へ向けて推進していくと力強く語った。

 「描いたカスタマージャー二―の実現へ向けて、アドビをはじめとしたパートナー企業としっかりと連携し、中小企業の経営者がより本業に集中できるようにサポートしていく。そして、それが日本経済を支える一助になると信じている」(半田氏)

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MarkeZine(マーケジン)
2020/03/12 12:53 https://markezine.jp/article/detail/31860