サイトにメスを入れると、組織やビジネスの問題が見えてくる

――リストを使うと改善のスピードは上がっていくと思いますが、次はどのような課題が見えてくるのでしょうか。
枌谷:サイト改善がサイトの中だけで完結することはまれで、突き詰めるとほとんどが組織の話に行きつきます。たとえば「電話番号を表示したほうがいい」と言っても、「電話が増えても対応する人員がいないから難しい」と、勝ち筋が見えているのに実現できない場合も多いのです。
垣内:BtoBのサイトはECと違い、それ自体で完結するものではなく、得たリードをどう営業につなぐかというのが本当の伸びしろです。しかし組織が分断されてしまっているために、サイト修正だけが進み、成果につながらないケースを、私もたくさん見てきました。
枌谷:「CVは140%近く上がったのに、売り上げにつながっている実感がない」と相談を受けたこともありました。話をよく聞いてみると、増えたCVを営業サイドで追えていなかったことがわかりました。
垣内:リードがとれてくると、それをクロージングするための人員や能力が必要になりますよね。するとやるべきことは、サイト改善から「営業のリソース確保・育成」に変わっていく。それがだめなら、いかに質の高いリードをとるかを工夫しようということになります。
栗原:サイト自体のパフォーマンスは改善したものの、商材そのものの解約率が高過ぎてLTVが低く、マーケティングに予算を投下できないというケースも度々目にします。
本質的にやらなければいけないのが、LTVを伸ばしてCPA、CACを十分に確保し、マーケティング活動が十分できる状態にすること。こうした方向性で議論を進めていく必要があると感じています。
サイトのCV率は無限には上がらないので、ビジネスの成長を考えて、サイトに閉じない視点を持つことが大切です。
「型」を使って効率化し、本質的な課題に向き合おう

――最後に、皆さんの考える「良いBtoBサイト」、そしてそれを実現するためにリストをどう活用すべきか、考えを聞かせてください。
垣内:理想的なのは、流入別に多様なCVを用意しているサイトです。BtoBの商材は難解なものが多く、サイトだけで説得し切ることは難しい。そのため、流入時の期待に合わせたCVを複数用意することが最も重要です。トップページを訪問したユーザーには「無料トライアル」や「サービス資料請求」といった訴求が良いですし、ノウハウ系のコラムを読んだユーザーには「ノウハウ冊子ダウンロード」が有効でしょう。
コンテンツの充実度も大切です。良質な記事やホワイトペーパーが大量にあれば、新規リードも獲得できますし、既存リードを掘り起こすためのシグナルも検知しやすくなるはずです。
枌谷:私はマーケティングとのシンクロ率が高いことが、良いサイトの条件だと考えています。それを実現するために、質の高いコンテンツや使いやすいUI、ベターなビジュアルなどを追求しているはずです。
根本的に重要なのは「良い組織」で「良いマーケティング」を行うことなのですが、組織やマーケティング全体の改善については、正解が見えにくい。一方、比較的ノウハウ化しやすく、リソースを最小化できるのが、たとえば今回リストを公開したような領域です。
WebディレクターやWebデザイナーには、リストを活用して車輪の再発明を減らし、マーケティングとのシンクロ率が高い「良いBtoBサイト」を最短距離で実現してもらいたいです。
栗原:繰り返しお話してきたことですが、サイトのコンテンツの並び順やボタンの色、セミナーページをどう作るかなど、インパクトの小さい箇所にマーケターの思考リソースが割かれている状態は、あまりにもったいないと感じています。
顧客のインサイトを捉えること、顧客や市場へ伝えるメッセージを考えること、社内外と良いチームを作ることなど、経営者やマーケターがより本質的な課題に時間とお金を使えるよう、今後も成果が出る「型」を開発・発信していきたいと思います。