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顧客体験をAIで変革するキーワードは「顧客理解」と「体験価値」 電通デジタル住岡氏×アドビ安西氏対談

マーケターの仕事をもっとクリエーティブに

――これら「Adobe Sensei」の機能を使うことで優れた顧客体験を実現できるようになっていくわけですが、逆にAIにはできない、人間だからできる部分は何でしょうか。

住岡:私にはテーマパーク時代に同僚から聞いた印象に残っている言葉があります。先ほどの入場予測の話で、僕がいた当時AIなどはなかったので、予測を担当しているデータアナリストの方がチケットの予約状況や天気情報などのデータから予測を出していたのですが、その方に「変数が決まっているのだから、○○さん以外でも予測できますよね」と聞いたら、「できない」と言う。なぜなら、最後の最後に、データアナリストの経験に基づいた微調整をかけているからなんです。

 この“微調整”というエッセンスを実現できるかどうかが、AI普及の鍵になると思うんです。

安西:我々としては、AIがマーケターの仕事を奪うとは考えていません。これまでマーケターが人力でやって手間がかかっていたことや、手間がかかるからできていなかった点をAIで効率化していこうと考えています。

 一方でマーケターには、住岡さんのおっしゃるエッセンスの部分もそうですし、顧客体験のデザインにきちんとフォーカスしていただきたい。そうすることで、より良い体験価値をつくり出せるようになると思っています。

住岡:マーケターの仕事は、一言で言えば「ブランドを作ること」。そのためにAIを使ってカットできる手間をカットして、クリエーティブな仕事にいかに時間を使っていくかが重要ですよね。

 AIに関する技術は様々なものが出てきていますが、マーケターが最良な顧客体験をデザインしやすくなることは優れたツールの絶対条件だと思います。

安西:また、これからのマーケターにはいわゆるBTC型人材に必要な3要素「ビジネス・テクノロジー・クリエーティビティ」がスキルセットとして求められますね。顧客体験を提供していく中で、今はビジネスだけではものを語れなくなっているので、クリエーティブやテクノロジーを組み合わせて考えられるということがマーケターにも求められていますし、我々としてもその一助になっていきたいと思っています。

Azureとの連携で広がる可能性

――今回両社がコラボレーションして、「Adobe Experience Cloud」とマイクロソフトの「Microsoft Azure」を連携させたソリューションの提供を開始されましたが、提供の背景をお聞かせください。

住岡:きっかけは、金融系企業様の支援の中で、クリエーティブバナーを人に合わせて変えていくことでCVRが高くなるという分析をさせていただく中で、パターンが300通りできたのですが、これを人力で設定してカスタマージャーニーに乗せるのはほぼ不可能という課題認識がありました。

 そこにマイクロソフトとアドビの提携のニュースが届いたので、ターゲットに対して自動的に最適なバナーを出し分けられるソリューションを共同開発しようと考えたんです。

安西:今回の場合、顧客理解、セグメントの分割、スコアリングなどはAzure側で実現しています。各セグメントが購入に至る代表的な行動パターンを抽出した上で、「Adobe Target」の自動パーソナライズ機能を使って、最も購買につながりやすいシナリオにコンテンツを配信し、さらにはそのクリエーティブの検証も可能になっています。

――両社はどんな役割分担で関わっているのでしょうか。

住岡:あえて分けるなら、顧客体験をデザイン・施策まで落とし込むのが電通デジタルで、その実現をアドビのプラットフォームで支えていただくような関係で進んでいます。

安西:僕らはあくまでプラットフォーマーです。しかしそのプラットフォームはお客様のサービスや状況に合わせられるよう、カスタマイズ性が高いものなので、価値を引き出していただけるかは、プラットフォームに載せる顧客体験のデザイン・施策にかかっているという部分があります。その部分を最大化していただけるパートナーが電通デジタルさんだと思っています。

 かつ、電通グループのマーケティングプラットフォーム「People Driven DMP」とのソリューション連携など技術的な連携もしていますし、当社のWebサイトであるadobe.comの運用も、その連携を使いながらご協力いただいているという実績があります。一緒に取り組みをしながら、ナレッジを貯めて成長していける関係にあると感じています。

次のページ
AIがつくり出す未来の顧客体験とは

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/03/12 12:42 https://markezine.jp/article/detail/32416

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