マーケティング業界のイチロー、レイ・イナモト氏が来日
デジタルインテリジェンスは、ベストインクラスプロデューサーなど5社とともに、2019年4月からデジタル時代のマーケターを養成する「横山塾」を開講している。今回のセミナーは、その拡大版として、一般公開で開催されたもの。会場には300名近くの人が集まった。
第一部では、ニューヨークを拠点に活動するクリエイティブ・ディレクターのレイ・イナモト氏による特別講演が行われた。
レイ氏は、Creativity誌の「世界で最も影響力のある50人」や Forbes誌の「世界の広告業界で最もクリエイティブな25人」に選出され、“マーケティング業界のイチロー”とも言われている人物だ。2016年にビジネスの新開発やブランディングまでを手掛けるBusiness Invention Firmとして「☆I&CO(アイ・アンド・コー)」をニューヨーク・ブルックリンに設立。今年7月にはユニクロやトヨタなどにサービスを提供するため、「I&CO Tokyo」も開設した。
特別講演のテーマは「Designing the Magical & Memorable in the Age of Data データ時代の『魔法と記憶』の作り方」。あらゆるデータ・情報が溢れている時代において、企業・ブランドが人々の記憶に残るために必要なことが語られた。
ベストプラクティスを求め、消えていくオリジナリティ
レイ氏はまず、デジタル時代の落とし穴として、「データで見えるからこそ、ベストプラクティスを決めたがる傾向がある」ことを指摘する。
レイ氏が例として紹介したのは、現在シリコンバレーで活躍する企業のロゴだ。Google、Airbnb、Spotify、Pinterestといった企業は、スタートアップ企業として登場した際、それぞれが個性のあるロゴを使っていた。ところが現在の4社のロゴを並べてみると、すべて同じようなフォントを使い、個性がなくなっているのがわかる。
EVERYBODY FALL IN LINE! pic.twitter.com/B9JU5nvpMu
— OH no Type Co (@OHnoTypeCo) February 13, 2018
「おそらく、こういうフォント・太さのロゴだとスクリーンで見やすいという“ベストプラクティス”を出した結果だろう」とレイ氏。「最適解を求めることは間違いではないが、突き詰めた結果オリジナリティが失われ、差別化が難しくなっているのでは」と続ける。
これは一例だが、ロゴだけでなく、デジタル時代にはこういったことが至るところで起きているといえるだろう。たとえば消費者に対するアプローチもそのひとつ。消費者のデータを使い、デジタルを活用したアプローチを行おうとすると、どの企業も同じようなツールを使い、似たようなプロセスでのアプローチになってしまう。
企業からのアプローチ手段なども含め、最適解を求めた結果オリジナリティがなくなってしまえば、人々の記憶に残ることは難しくなるだろう。では、この時代において、どうすれば人々の心に残ることができるのだろうか。