ログインIDに基づくコンテンツ出し分け
社内営業・SE向けイントラネット、パートナーディーラー向けの会員制情報サイトはいずれもIDでシステムにログインする仕組みになっている。このログインIDがパーソナライズの核となる。
社員IDの場合は富士通社内の人事データベースと連携しているため、利用者が「どの業界を担当し、どんな職種なのか」をシステム側で自動判別し、金融業界の担当営業なら金融業界向けソリューションの情報や最新業界ニュースなどをトップページに表示できる。
パートナーディーラーの場合は、ログインIDから扱っている商材がハードウェアか、それともソフトウェアなのかを判別し、ディーラーごとに適切な商材の拡販情報をトップページに表示する。
なお、こうした属性ベースのコンテンツ出し分けは富士通独自のAI技術を活用することでさらなる精緻化を模索しているという。
またトップページには、コンテンツの閲覧履歴を元に「この情報を見た人は、こんなコンテンツも読んでいます」というレコメンド機能も加えている。
「レコメンドは、ECサイトには当たり前のようにある機能ですが、これを追加することで、これまで気づかなかった休眠コンテンツが掘り起こされるようになりました。一般にWebサイトは、クリックするごとに離脱率が高くなるといわれており、深い階層にあるコンテンツは閲覧されなくなりがちなので、BtoBサイトでのレコメンドは非常に有効です」(西本氏)
コーポレートサイト改善の好事例
富士通ではコンテンツガイドラインやプロジェクト推進体制などといった自ら蓄積したノウハウを元に、外部企業に対して戦略立案からデリバリーまでをカバーしたSitecore導入支援を手掛けている。
平野氏によると、イントラネットや自社パートナー向けWebサイトではない普通のコーポレートサイトでも、「顧客理解」「マッチング」「最適化」はWebサイトをデジタルマーケティング基盤に変革したい企業の基本になるという。
BtoB向け不動産事業を展開するとある海外法人のコーポレートサイト改革事例を見てみよう。
このコーポレートサイトには、投資家やビジネスパートナーなど世界中から様々な利用者がアクセスしていたが、いずれも匿名状態で、属性などパーソナルな情報を取得できていない状態だった。
そこでWebサイト訪問者を、訪問目的に沿って「ビジネスパートナー」「転職希望者」「不動産投資家」など5つに分類し、コンテンツの閲覧履歴を元にセグメント化して、それぞれの目的に応じたコンテンツを自動で出し分けた。たとえば「不動産投資家」と思われる訪問者に対しては、「お問い合わせページ」の項目で「投資に関するお問い合わせ」を表示する、といった具合だ。
「Webサイト全体を変えなくても、トップページから第二階層まででコンテンツのマッチングを行えば、インパクトのある成果が得られます。Webサイトである程度ニーズが熟成するまでカバーできるので、少ない人手でも営業効率が上がり、売上向上につながります」(西本氏)
富士通では今後MAやSFAのSitecore連携のほか、AI活用によるパーソナライズの高度化、機械学習による運用の負荷削減といった連携ソリューションを提案し、クライアントのWebサイトを起点としたマーケティング力向上に全力を注いでいくという。
同社の実践は、イントラサイトやコーポレートサイトがBtoBビジネスを根本から立て直す、重要なデジタルマーケティング基盤だということに気づかされる貴重な事例だといえるのではないだろうか。