影響が大きいのに見過ごされるテクニカルSEO
――MarkeZineでもSEOは初期から取り上げている手法ですが、内部対策にフォーカスすることは少なかったと思います。今回は、あまり重要性が認識されていないという内部対策、テクニカルSEOについて、GMO TECHさんに解説していただきます。まず、お三方の担当領域をうかがえますか?
大澤:SEOコンサルティング事業のほか、O2O、HR領域のセールス・カスタマーサクセス・プロダクト全体を統括しています。共通して検索プラットフォームと自社プロダクトを掛け合わせたソリューションを軸にした集客支援領域を主に担当しています。
飯島:GMO TECH入社以来、約10年にわたり様々なポジションでSEO業務に携わってきました。現在は弊社の強みである内部施策を主としたSEO対策、コンサルティング、クリエイティブのチームを統合し、直近ではそこにSEO内部分析ツール「DeepCrawl」の運用も加わった形になり、総合的なSEMの視点でクライアントの事業貢献を目指しております。
芳賀:私はインフルエンサーマーケティングなどを担当した後、昨年半ばから「DeepCrawl」のチームに入りました。現在、「DeepCrawl」の展示会出展やセミナーイベントの企画をはじめ、多くの方にツールの魅力やテクニカルSEOの重要性を知っていただくための活動をおこなっております。
――はじめに、SEO対策におけるテクニカルSEOの位置づけについて教えてください。
大澤:大きく分けて、SEOには外部対策SEO、コンテンツSEO、そしてテクニカルSEOの3つのパターンがあります。外部対策SEOは被リンクやレビューなど自社でコントロールできない情報によるSEO、コンテンツSEOはページの内容や内部リンクなど、自社でコントロールできるページ上の工夫によるSEOです。
ただ、それらより対策し得るボリュームがはるかに大きく、2つを下支えするような位置づけにあるのが、サイト全体の内部構造をチェックし修復・最適化するテクニカルSEOです。問題を発見し、正しく手を打てば確実に効果が上がる重要な要素なのですが、実はこれまであまり重視されてきませんでした。
SEOをデパートにたとえると?
――なぜ、テクニカルSEOの重要性が見落とされてきたんでしょうか?
大澤:今、コンテンツマーケティングが拡大・浸透していますが、その観点から考えるSEO(コンテンツSEO)の効果やおこなうべき施策自体は非常に単純でわかりやすいですよね。またGoogleも、ユーザーの満足度が高いページを検出する精度をどんどん上げてきているので、「ユーザーにとって有益なコンテンツを増やしましょう。外部サイトから引用を受けやすい良質なコンテンツを制作していきましょう」という施策の必要性がわかりやすく、取り組みやすい。それに対してテクニカルSEOは、JavaScriptや、コンテンツの重複、リンクのエラーなど、文字通りサイトの内部構造を解析して最適化することですが、単純に目に見えにくい、そもそも問題が見つけづらいという部分があります。
――ただ、サイト内の構造はGoogleもクロールして健全性を判断しますよね?
大澤:その通りです。なので、コンテンツマーケティングが一通り成熟した海外では、テクニカルSEOへの注力がトレンドになっています。目視でのテクニカルSEO解析はとても工数がかかり、数千~数万ページをあらゆる指標で細かく見ていくのは正直無理なので、解析・分析ツールの活用が主流ですね。
また、海外では日本よりもリモートワークが進んでいて、チーム単位でプロジェクトを進める上では場所やデバイスに縛られないクラウドベースのツールの利用が基本です。日本でもSEO担当者の検証や解析・比較などの分析工数、レポーティング工数を削減して生産性を上げるという世の中的な流れの中で、こういったテクニカルSEOに特化したツールが普及することで海外と同様に流行っていくと考えています。
サイトの内部構造は、いわばサイトの“土台”です。ここを正して初めて、良質なコンテンツを増やした際のSEO効果を最大化できますし、かつ、ある意味で普遍的な領域なので、Googleのアルゴリズム変更の影響を受けにくいという大きな利点があります。
飯島:私はよく、新卒社員などに対してSEOをデパートにたとえて説明しています。コンテンツはデパート内の各テナント。外部リンクはデパートやテナントへの評判。そこで内部対策は何かというと、通路や階段やエレベーター、看板やフロアマップに相当します。
SEOにおける内部対策は必要不可欠なインフラの整備
――なるほど。これらが欠けると、そもそもデパートとして成り立たないですね。
飯島:そうなんです。エレベーターの故障や店名の重複、また1フロアに複数カテゴリが混在していたりしたら、すごく不便ですよね。それらがまんべんなく整備されていないと、当然お客さんの足は遠のきます。
なので、SEOにおける内部構造とは、サイトを訪れたユーザーにわかりやすく快適なコンテンツを提供するための、欠かせないインフラなんです。目に見えてわかりやすいコンテンツ対策と違い、内部施策は裏側のソースコードをコツコツと改善していくものなので、多くの企業で軽視されがちでしたが、ようやく日本においてもその重要性が少しずつ認知され始め、先進企業を中心に本腰を入れた取り組みが始まっているところです。
――内部対策が重視される要因とは?
飯島:ひとつは、ページ数の急激な増加です。ウェブを閲覧する環境が多様化し、特にスマホの普及によりインターネットがより身近な存在になりました。すると検索エンジンの上位表示をめぐるウェブサイト同士の競争力が高まり、結果的に世の中のサイト数が増え、1サイトあたりのページ数が増え、1ページあたりの文字量が増えていきました。ページ数が増えてくると、サイト構成が複雑になり、コンテンツ間の関係が親子なのか並列なのか不明瞭になったり、見出しや中身の重複が発生したりします。その状態ではGoogleに適切に評価されず、本来獲得できたはずのトラフィックを大幅に落としてしまうことになるので、こうした課題を解決するためにも内部対策が有効です。
飯島:次に、Googleが”Webサイトを検索する”ものから“情報自体を検索する”ものに進化しつつあることが挙げられます。“検索ゼロ位”とも呼ばれる強調スニペット(質問と思われる検索クエリに対し、Google検索結果の最上部に最適なサイトを強調表示する仕組み)をはじめ、Googleしごと検索(Google for Jobs)やマップ表示(Google Map)、航空券検索(Googleフライト)など、検索結果だけでユーザーの知りたい情報を表示する取り組みがおこなわれております。
これらは自然検索で高いクリック率を見込めることはもちろん、近い将来主流になると言われている”音声検索”の結果にも反映されることもあり、こうした流れは今後ますます加速していくでしょう。そのため一層、サイト内の情報価値をGoogleに適切に伝えるためのテクニカルな施策の重要性が増しています。他に、UXやCX向上のためにJavaScriptが多用されるようになったことも、要因のひとつです。
最も難しい課題発見を担う「DeepCrawl」
――膨大なページ内、あるいはページ間の解析は目視では無理、というお話がありました。海外ではツール活用が進んでいるそうですが、御社が扱う「DeepCrawl」もそのひとつですよね。
大澤:そうですね。他にも多少、方向性や特徴の違う内部対策ツールはあるものの、今グローバルで導入が進む中で、英Written Byte社が提供する「DeepCrawl」は世界最高水準のツールです。GMO TECHでは昨年10月から国内独占販売をスタートしていて、競合はないと考えています。
急に順位が落ちたといった際にも、Googleのアルゴリズム変更が原因なのか、それとも他にあるのかすぐに分析できるので、打ち手の初動が速くなります。たとえば求人サイトや不動産系、ECなど、SEO流入の集客がダイレクトにPLに影響する業態ではインパクトが大きいと思います。
――「DeepCrawl」の機能の特徴をうかがえますか?
芳賀:主に5つあります。まず、解析の大幅な工数削減です。先ほどから挙がっていますが、目視では対応できない量のページを効率的に分析できることです。
2つ目は、解析のスケジューリングが自由に設定できること。
3つ目は、社内や外部パートナー企業とも共有できるタスク管理機能があること。インストール型ではなくSaaS型のツールで、SlackやChatworkともAPIで連携しているので、業務がとてもスムーズです。
4つ目は、JavaScriptのレンダリング機能があること。Googleから見て問題があるかどうかを自動で検出できます。目視ではJavaScriptのページの問題点を発見するのは難しいので、ぜひツールを有効活用していただきたいです。
そして5つ目は、本番環境にアップする前に、テスト環境で問題がないかを一通り確認できるようになっていることです。JavaScriptのレンダリングとテスト環境でのクローリングまでできるツールは、当社で把握している限り「DeepCrawl」だけですね。
7,000ページ中、5,000ページで重複が発生していた
――3つ目のタスク管理は、興味深いですね。SaaS型だからできることで、対応スピードも速そうです。
大澤:まさに、そうですね。SEOの課題解決は、一人でできることはとても限られます。SEO担当者、システム担当者、さらに外部協力会社と複数が関わることが常ですが、これまではたとえば外部依頼には仕様書が必要だったり、作業的にとても煩雑でした。
「DeepCrawl」は企業にツールとして提供するほか、当然我々のSEOコンサルティング事業でも活用していますが、工数削減やタスク管理によって作業的な部分を大きく圧縮し、それだけ手厚い分析や対策の検討に注力できるようになりました。事業会社なら、よりコンテンツ制作やクリエイティブ改善にリソースを割けると思います。
――なるほど。実際に「DeepCrawl」を導入したサイトの、具体的な改善例をうかがえますか?
飯島:建築不動産業界のクライアントで、リニューアル直後のサイトの分析を「DeepCrawl」で診断しました。結果、7,000ページのうち5,000ページで重複があることがわかり、その箇所も表示されるので、重なりの大きいところから優先順位をつけて対応していきました。サイト内部のリンク切れも多数検出され、中にはトラフィックが多いページもあったので、早めに修復できて機会損失を回避できました。
内部対策の重要性が理解されれば日本のSEOも発展する
――「DeepCrawl」は、無料トライアルがあるそうですが、利用は進んでいますか?
大澤:かなり進んでいますね。全般的にページ数が多いサイトや構造が複雑なサイトに有効ですが、中小規模のサイトでも、最も難しい課題の発見が自動化できるので、浮いた時間を有効活用できるはずです。また、本利用もミニマムで月7,000円~なので、トライアルをせずに導入いただくケースも多いです。
――お手頃な価格帯ですね。
飯島:実際には、「DeepCrawl」で解析・分析した後に対策を講じなければいけないのですが、これまではその分析の初期費用で200~400万円ほどのコストがかかり、そこであきらめていた企業も多いと思うので、テクニカルSEOの手始めとしてぜひ試していただきたいです。
昨年、「SMX London」(※世界最大級のSEOイベント)に参加したのですが、そこでもコンテンツマーケティングからテクニカルSEO(内部対策)に軸足が移っていました。同時に、ロンドンの街中でたとえば歯科クリニックなどを検索するとしっかりコンテンツが表示されており、中小規模のビジネスでも内部対策が採られていることがわかりました。日本でも内部対策の重要性が理解されればSEO自体がさらに発展し、同時に「DeepCrawl」が不可欠なものになると期待しています。
芳賀:まだリリースして半年で、徐々に事例ができているものの、「DeepCrawl」はまだまだ認知獲得のフェーズだと感じています。これから展示会や当社主催のセミナーなどにも力を入れて、テクニカルSEOについて知っていただくとともに、「DeepCrawl」の認知を広げたいと思います。