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BtoBに衝動買いはない? 見込み顧客の獲得と育成を押さえたBtoBマーケティングの基本

2020/06/04 07:00

 企業(法人)を対象としたビジネスはこれまで「営業」が重要な役割を担っていましたが、近年は分析ツールの発展や購買プロセスの多様化などにより「マーケティング」が重要視されるようになりました。その考え方や手法を基本から解説したのが『デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』』です。今回は本書から、BtoBマーケティングの基本をしっかり押さえておきたい方に向けて、「CHAPTER 1 BtoBマーケティングの基礎知識」を紹介します。

本記事は『デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』 「潜在リード」から効率的に売上をつくる新しいルール』(著者:竹内哲也、監修:志水哲也)の「CHAPTER 1 BtoBマーケティングの基礎知識」を抜粋したものです。掲載にあたり一部を編集しています。

01 そもそもマーケティングって何?

 まず、そもそもマーケティングとは、具体的に何をすることなのでしょうか。マーケティングに該当する日本語もないため、何となく使っている用語の1つかと思います。

マーケティングできれば、営業はいらない?

 マネジメント関連で数多く書籍を残している経営学者のピーター・ドラッカーは次のように述べています。

マーケティングの理想はセールス(販売)を不要にすること

 非常に示唆に富む言葉です。セールスと比較してマーケティングを定義すると、マーケティングとは、「販売しなくても商品・サービスが売れる状態をつくること」です。それに対してセールスは、「商品・サービスを売り込むこと」と定義することができます(図1)。

図1 マーケティングとセールスの違い
図1 マーケティングとセールスの違い

 見込み顧客と営業担当者の関係で整理すると、マーケティングの場合、見込み顧客から営業担当者に問い合わせが入ってくるのに対して、セールスの場合は、営業担当者から見込み顧客にアプローチすることになります。前章02節で、インバウンド(プル)型とアウトバウンド(プッシュ)型の営業スタイルがあるという話をしましたが、前者がマーケティングで、後者がセールスの手法を用いることになります。

 とはいえ、法人企業の場合、すべてがマーケティング活動で解決するわけではありません。提案やクロージングにおいては、営業活動はいまだに重要であり、受注金額の大きい大型案件の場合は、「誰から買うか」も重要な評価ポイントになります。

02 個人と法人でアプローチの仕方が違う

 個人と法人でアプローチの仕方はどのように変わるのでしょうか。対象顧客と商品などの観点から、整理します(図2)。

図2 BtoB企業とBtoC企業の特徴
図2 BtoB企業とBtoC企業の特徴

BtoB企業とBtoC企業のアプローチの仕方

 BtoB企業の場合、対象顧客は法人企業(法人格を持つ企業)になります。商品やサービスに関しても、安くても数十万円、高いものでは数千万円から数億円と、個人では買えないぐらいの高額商品です。

 そのため、アプローチ前に、業種や業界を明確化して、マーケティング部門や情報システム部門など、対象企業の中で購入してもらえそうな部署まで特定する必要があります。例えば、「通信業界で法人向けにソリューション販売をしている事業部の部長」が正しいターゲット設定で、電話、DM(メール)、セミナーなどの手段を活用していくのが正しいアプローチの仕方です。

 BtoC企業の場合、対象顧客は生活者(個人)になります。販売する商品やサービスも、数百円から数万円と商品単価は決して高くはありません。また、アプローチの仕方に関しても、生活者1人ひとりにアプローチするのではなく、同じ趣味嗜好性や同じ属性単位などでターゲットを絞り込み、不特定多数のセグメントにアプローチします。

 例えば、「30代前半の首都圏在住のOL」というくくり方や、「20代でゲーム好きの独り暮らしの男性」などが、正しいターゲット設定で、TVCMやSNS広告など、多くの人に刺さるマスメディアやソーシャルメディアを活用することが正しいアプローチの仕方です。

個人と法人で購買の意思決定プロセスが違う

BtoBに衝動買いはない

 BtoBの場合、購買の意思決定に複数の担当者が介在するので、通常、顧客は稟議を上げて決裁をとることになります。

 例えば、実務担当者である課長が稟議書を作成し、上長である部長や購買部にお伺いを立て、最終的に部門の責任者である執行役員や取締役が承認するというプロセスを踏みます(図3)。購入する商品やサービスも高額であることが多いため、衝動的に商品を購入することはなく、きわめて合理的な意思決定がなされます

図3 BtoBの購買意思決定プロセス
図3 BtoBの購買意思決定プロセス

BtoCの意思決定はシンプル

 一方で、BtoCの場合は、家族や友人と相談することはあるにせよ、基本的に生活者(個人)が購買の意思決定を行います。

 例えば、消費財メーカーから商品を購入する場合、売り手のマーケティング担当者と直接やりとりはしません。TVCMや雑誌、インターネットの情報などで商品を認知し、興味を持った場合は、検索エンジンやSNSで詳しい情報を調べます。

 最終的に、商品やサービスを店舗で手にとってみてから購入したり、ECサイトで購入したりするというのが、BtoCの場合の購買意思決定プロセスです(図4)。BtoCの場合は、購買の意思決定において、自分以外の第三者の意見(流行・トレンド・世論などの時代の空気感)に影響を受けて、必ずしも合理的でない購買行動を起こす可能性があるのが面白いところです。

図4 BtoCの購買意思決定プロセス
図4 BtoCの購買意思決定プロセス

04 個人と法人で求めている情報(コンテンツ)が違う

 BtoBとBtoCでは顧客が異なるので、求めている情報(コンテンツ)に違いがあります。

求めている情報(コンテンツ)の違い

 BtoBの顧客は、新しい技術情報や、求めている商品・サービスの仕様や価格、導入事例や導入後の成果など、稟議に上げるときに必要な検討材料を欲しています。

 一方で、BtoCの顧客は、機能や価格だけではなく、第三者の意見(口コミ情報)や商品の情緒的な情報を求めています(図5)。

 それでは、BtoBで求められている情報(コンテンツ)を、どのように見込み顧客にお伝えすると、商品・サービスの購入の検討につながるのでしょうか。

図5 商材と求めている情報(コンテンツ)の違い
図5 商材と求めている情報(コンテンツ)の違い

情報(コンテンツ)の伝え方

 求めている情報(コンテンツ)を正しく顧客に伝えるためには、「情報認識」「課題喚起」「解決策の提示」「商品理解・価値提案」「限定オファー」の5つのプロセスでコミュニケーションを行います。自社の商品やサービスを顧客に知らせ、興味を持ってもらうことからスタートし、顧客が課題として認識している部分を訴求します。その上で、その課題を解決するための方法論を提示して、最終的に自社の商品やサービスと結びつけていくというのが正しい情報(コンテンツ)の伝え方になります(図6)。

図6 情報(コンテンツ)を伝える5つのプロセス
図6 情報(コンテンツ)を伝える5つのプロセス

 例えば、ビジネスコミュニケーション用のチャットシステムを販売している会社が、どのように見込み顧客に情報を伝えていくかを考えてみたいと思います(図7)。

図7 プロセスごとに提供するコンテンツの切り口の例
図7 プロセスごとに提供するコンテンツの切り口の例

 まず、情報認識として、昨今の働き方改革を推進していくためには、少ない時間で仕事の生産性を高める必要があり、今までのような仕事の仕方ではダメだという共通認識を持つように促します。

 次に課題喚起として、まずは、仕事の無駄を減らすことが重要であり、通勤時間や社内・社外の会議時間などを減らす必要性があることを課題として認識させます。

 無駄を減らす解決策の1つとして、ビジネスコミュニケーション用のチャットシステムを提示し、このシステムを活用すると、リモートワークでも円滑にコミュニケーションがとれるので、仕事の無駄を減らすことができることを伝えます。

 商品理解・価値提案では、競合他社の製品に対して、自社のチャットシステムのどこが優れているのか理解できるように提案します。

 最後に限定オファーとして、期限までに購入いただければ20%オフにする、その他システムも購入いただければさらにディスカウントするなどの、個別企業向けのオファーを提示します。

情報を伝える順番も大事

 情報認識がないと、そもそも興味・関心を持ってもらえません。また、顧客側に課題認識がなければ、解決策を提示しても興味を示してもらえません。情報認識から限定オファーまで、5つのプロセスを踏んでコミュニケーションを設計することで、見込み顧客の購買行動に変化を与えることが可能になります。

05 BtoBは営業部門がメイン、BtoCは広報・マーケティング部門がメイン

マーケティング部門をどこにおく?

 営業主体で商品やサービスを販売しているBtoB企業には、そもそもマーケティング部門がなく、本来は投資家向け情報提供(IR)を担う広報部門が主導でイベントやカンファレンスの対応を行い、コーポレートサイトへの問い合わせ対応もしていることがよくあります。さらに、中小企業やスタートアップですと、専属の広報部門がなく、他部門の担当者が兼務していることも多いです。たとえ、マーケティング部門があったとしても、営業部門とは別の部署だったりすると、営業部門とマーケティング部門が対立していることもよくあります。

 BtoBマーケティングは、マーケティングの力を活用して営業プロセス全体を改善し、収益を上げることがゴールになるので、営業部門内にマーケティング部門をおくのが理想です。そのマーケティング部門で、イベントやカンファレンスへの出展、コーポレートサイトにきた見込み顧客からの問い合わせなども対応していくほうが業務を運用レベルまで落としたときに進行がしやすいです(図8)。

図8 マーケティングを担当する部署の違い
図8 マーケティングを担当する部署の違い

 一方で、BtoC企業の場合、対象顧客が生活者(個人)になるため、全部門との結びつきが強い広報部門やマーケティング部門が担うのが一般的です。これは、BtoC企業が営業との関わりあいがなく、全部門との結びつきが重要だからです。近年では、新規顧客向けの施策だけでなく、既存顧客向けのCRM(顧客との関係構築を行うこと)施策や、テクノロジーを活用した施策も増えているため、経営企画部門内に統合マーケティング部門をおく動きもあります。

06 リードジェネレーションとは?

 リードジェネレーションとは、新規の見込み顧客(新規リード)を獲得するためのマーケティング施策です。アプローチすべき新規リードがそもそもない、リードの質が低いといった場合は、リードジェネレーションから検討を始めてみましょう(図9)。

図9 リードジェネレーションの特徴
図9 リードジェネレーションの特徴

 オフライン型の施策としては、名刺獲得のために通常の営業活動(顧客訪問)だけでなく、セミナーやカンファレンスに出展するなどの取り組みを行います。オンライン型の施策としては、コーポレートサイトや、商品・サービスを紹介する独立したサイトの立ち上げ、ブログ記事やホワイトペーパー(ダウンロード資料)などのコンテンツの充実があります。検索エンジンや広告などからサイトへの流入数を増大させ、問い合わせ件数を増やしていく取り組みです。

 通常、オフライン型の施策を広報部や営業部門が担い、オンライン型の施策をマーケティング部門が担っています。

どれぐらい新規リードをつくれるのか?

 オフライン型で新規リードをつくるには、アナログな活動がメインになるので、予算や人材に余裕のある企業は有利です。しかし、営業担当者が少ない会社では、投入できる人材に限りがあるため、新規リードの獲得件数に限界があります。

 一方、オンライン型での新規リードは、初めは仕組みづくりに労力・コストがかかりますが、その後は、営業担当者の労力をかけずに、月間200~300件程度の新規リードをつくることができます(図10)。

図10 オンライン型でつくれる新規リードの目安
図10 オンライン型でつくれる新規リードの目安

07 リードナーチャリングとは?

 リードナーチャリングとは、新規に獲得したリードや既存取引先に対して、興味関心や購買意欲を高め、関心度の高い見込み顧客(ホットリード)を営業に引き渡すマーケティング施策のことをいいます(図11)。

図11 リードナーチャリングの特徴
図11 リードナーチャリングの特徴

 名刺管理システムをすでに導入していて、数千件の名刺が登録されている企業の場合、リードナーチャリングからスタートするといいでしょう。リードナーチャリング施策を積極的に活用しているのが、顧客にMAを提供しているベンダー自身です。自らMAを使いこなしてリードナーチャリングで成果をだしています。リードナーチャリングとは別にリードクオリフィケーションという方法もありますが、こちらは、顧客を絞り込んでいく方法です(図12)。

図12 リードクオリフィケーションとは?
図12 リードクオリフィケーションとは?

08 リードジェネレーションとリードナーチャリングの連携方法

 新規の見込み顧客獲得のためにすべきことと、見込み顧客の育成・選別のためにすべきことを、オフラインとオンラインの観点でまとめました(図13)。

図13 リードジェネレーションとリードナーチャリングの全体像
図13 リードジェネレーションとリードナーチャリングの全体像

 オンラインに関しては、業務の流れを具体的に図示しています。見込み顧客を獲得後にリード情報をMAで登録・管理し、顧客の育成・選別に移ります。MAに登録するまでがリードジェネレーションです。営業担当者がリードを登録して初めて、今までバラバラに管理していた情報を会社全体で共有できます。検索エンジンやデジタル広告、ホワイトペーパー(ダウンロード資料)、オンラインからの問い合わせなどをマーケティング部門が主導で進めます。さらに、登録された新規リードを育成・選別するリードナーチャリングは、マーケティング部門のメインの活動です。

オンライン上で完結する施策が主流に

 少し前までは、新規の見込み顧客の獲得方法は、通常の営業活動や展示会での名刺獲得が主流でした。そのため、営業担当者が獲得した名刺をMAのデータベースに登録することがほとんどでした。

 ですが、最近では、オンライン上で見込み顧客を獲得し、そのままMAで育成・選別する動きが活発化しています。このようにオンライン上ですべて完結するマーケティング施策を、「インバウンドマーケティング」と呼ぶようになっています。

 オフラインからオンラインに変革するのは難しいかと思います。MAを活用した見込み顧客の育成・選別よりも、まずはオンライン施策から着手するとスムーズでしょう。

09 初めに着手すべきことは?

 本章08節で述べたように、BtoBマーケティングの最終形は、リードジェネレーションとリードナーチャリングを一気通貫で推進して、見込み顧客と継続的なコミュニケーションを図ることです。

 ですが、社内の人的リソースや予算の制約条件がある中で、一足飛びにすべてを行うことは現実的ではありません。リードジェネレーションからスタートするか、それとも、MAを導入してリードナーチャリングからスタートするか、どちらかにフォーカスする必要があります。

 お客様からの問い合わせで、「見込み顧客の獲得と、育成・選別のどちらからスタートすべきか?」という質問を数多く受けますが、見込み顧客の取得(リードジェネレーション)から先行着手していくほうが、取り組みやすく成果がだしやすいです。

 理由としては、リードジェネレーションの施策の特徴は、一度立ち上げて勝ちパターンが構築できると、その後の人的リソースをかけることなく、問い合わせ件数を増やすことができるからです。多いと月間200件から300件程度の新規リードを獲得できるので、営業担当者2~3人分の活動量になります。

 一方で、リードナーチャリングは、MA導入に初期コストがかかること、また、導入後もシナリオ設計やメール配信、インサイドセールスなど、運用を継続していくために、人的リソースを多く割かなければなりません(図14)。現実的に少ない人数でBtoBマーケティングを推進していくことになるため、まずは、リードジェネレーションに関連する施策(図15)から取り組み始めていくのがベターでしょう。

図14 リードジェネレーションとリードナーチャリングの特徴
図14 リードジェネレーションとリードナーチャリングの特徴
図15 リードジェネレーション成功事例
図15 リードジェネレーション成功事例

10 どれぐらい投資する必要があるか?

 BtoBマーケティングを本格的に推進することになった場合、どれぐらい投資する必要があるのでしょうか(図16)。

図16 デジタル施策でかかる費用の目安
図16 デジタル施策でかかる費用の目安

小額から始められるリードジェネレーション施策

 まず、MA導入にかかる費用から見ていきたいと思います。ツールの利用料は、大企業向けに月額数百万円と高額のものもありますが、一番安くて月額6,000円のものもあります。また、設計・実装、運用サポートといったコンサルティング費用に関しては、設計・実装で月額50万円から、運用サポートは30万円から利用できます。

 コンテンツ制作に関しては、商品やサービスを紹介するサービスサイトの制作に月額40万円(通常12か月契約)ほどかかります。また、ブログ記事やホワイトペーパー(ダウンロード記事)は内製化できれば当然無料ですが、外注した場合でも1本10~20万円ほどのコストで制作可能です。

 SEO(検索エンジン最適化)は、テクニカルSEO(サイトを構造的に分析するSEO)の場合、初期設計で100万円ほど、月額の運用費が50万円程度かかります。

 デジタル広告(サーチ・ディスプレイ広告)に関しては、5万円程度の広告出稿金額からスタートできます。

 作業自体を自社で内製化したり、低価格なツールを使用したり、まずは少額で施策を立ち上げ、成果に応じて徐々に投資金額を上げていくのが現実的な推進方法でしょう

デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』

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デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』
「潜在リード」から効率的に売上をつくる新しいルール

著者:竹内哲也 監修:志水哲也
発売日:2020年5月29日(金)
価格:1,480円+税

本書について

これからは、オンラインを活用した「顕在リードの掘り起こし」を行った上で、リードを育成していく統合的なマーケティングが必須です。本書は「そもそもBtoBとBtoCのマーケティングの違いって何?」といった初心者の方にも役立つ入門書となっています。

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