ブランディングは「イケてるイメージを作る」ことではない
今回紹介する書籍は、『ブランディング・ファースト――広告費をかける前に「ブランド」をつくる』。著者の宮村岳志氏は、2003年に企業のブランディングを支援するグロウ・リパブリックを創業。現在は、時流を予測したマーケティングから、コンセプト開発、クリエイティブ、分析・運用まで、一気通貫でディレクションを行っています。
モノがあふれ、人の嗜好が目まぐるしく変わる現代、「ブランディング」の視点は欠かせません。ただ同氏は、ブランディングとは様々な媒体で広告を打つことや、“イケてる”デザインのロゴや会社案内をつくる「イメージ戦略」ではないと語ります。
「売れ続ける」ための本質的な力とは
そもそも「ブランド」と「ブランディング」とは何か。同氏によるとブランドは柱であり、ブランディングは柱を確立することだといいます。
柱は特別なものである必要はありませんが、建築物においてなくてはならないもの。企業においても、これと同じことがいえます。企業という構造体は、プロダクトや、その背景にある企業の強い思いといった柱があってこそ、安定して自立できます。この柱がない壁だけの構造体では、ちょっとした揺れで崩れてしまいそうです。
同氏は、そんな企業の中にある「柱にしたいもの」「柱になるべきもの」を、誰もが納得するブランドとして確立させるための施策をブランディングと呼んでいます。
それは、企業やプロダクトの知名度を上げようとする活動に留まるものではありません。売れ続けるための本質的な力を養うのが「ブランディング」だというのです。
本書は、こうしたブランディングの基本的な考え方に加え、情報収集・開発・具体化、ブランド開発における3つのフェーズなど、ブランディングに着手するうえで知っておきたいことが盛り込まれています。編集部の一押しポイントは、ブランド戦略を社内に浸透させ実行していくための手法「インナーブランディング」の重要性を説いている項目。ブランディングとは、多くの人がイメージする社外への発信だけでは不十分で、社内向けの発信の両輪がそろって初めて機能するものだといいます。
数多くのプロダクトがある今、広告だけで顧客を獲得するのは至難の技。本書から、事業をドライブさせるためのヒントを得てみてはいかがでしょうか。