“ニューノーマル”はどうつくりだすのか?
はじめまして、TBWA HAKUHODOのコンサルティングユニットDisruption Consultingの田貝と申します。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により人々の価値観や行動様式が変わりつつある今、“ニューノーマル(新常態)”なサービスやブランドとしてのあり方を考える企業が増えています。
では、“ニューノーマル”はどうつくりだすのか。コロナ以降、一度でも自社サービスの刷新を考えた方は「今まで通りの考え方では通用しない」と壁を感じることがあったのではないのでしょうか。むしろこれまで当たり前と思ってきた常識を否定する必要も出てくるはずです。
本連載では、そんなこれまでの常識を打破して“ニューノーマル”をつくりだす考え方として、私たちTBWAグループが30年にわたって培ってきた創造的破壊を促す思考法「Disruption(ディスラプション)」をご紹介します。
外食でも宅配でもない「自分で作るプロの味」というニューノーマル
ニューノーマルをつくりだすDisruptionとはどのような考え方なのか。連載初回の本稿では、筆者が最近ユーザーとして体験したニューノーマルなサービスをDisruptionの観点で解説しながら、Disruptionの過程と目的、そしてTBWAが提唱するDisruptionとそのほかの「ディスラプション」の違いといったDisruptionの全体像についてお伝えします(ご紹介するサービスはTBWA HAKUHODOが携わっているものではございません)。
コロナ禍において、ニューノーマルが生まれている産業のひとつが外食産業です。外出自粛で打撃を受ける飲食店がデリバリーへの切り替えを急ぐ中で、さらに新しい試みとして生まれたのがOisixさんの「Oisixおうちレストラン」でした。これは、有名レストランのメニューを食材と合わせて自宅に送り、少し手を加えて調理をすることで名店の味を自分で再現できるというもの。
サイト上で気になるお店、自分が作りたい料理を探して注文すると、必要な食材が一式レシピと共に自宅に届きます。そのレシピにはお店のシェフによる調理ポイントが書かれていて、案内に従いながら自分で料理を完成させます。
私も、こちらで代々木上原のフレンチ・レストラン「sio」の鳥羽周作シェフによる「ナポリタンを超えたナポリタン」に挑戦してみたのですが、普段自分で作るのとは違い「(炒めるのではなく)炒め煮する」「生クリームとバターを入れ火を止めて絡める」といったプロのアドバイスによって今までになかった新鮮な観点で料理をすることができました。
この「Oisixおうちレストラン」はレストランで食事をする外食でも、出来上がった料理の宅配でも、はたまた普段の料理でもない、「プロの味を自分で作ってみる」という新しい食体験を提供しています。
これは、コロナによる在宅時間の増加にともなって料理の機会が増えたことでレパートリーを欠いてきた私のような人にとって、楽しみながら質の高いレパートリーを増やせるという点でとてもありがたいサービスです。コロナ終息後もリモートワークの継続を表明する企業が出てきている中で、今後もこのニーズは高まると考えられ、まさにニューノーマルなサービスと言えます。