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「オフィスチェアレンタル」が捉えた、リモート時代の新たな価値観 “変化の兆し”を捉える視点とは

2020/10/06 07:00

 新型コロナウイルス感染症拡大以降、世の中の変化に対応したサービスが数多く生まれています。こうしたサービスの背景には、そのニーズが生まれるに至った「時代の価値観の変化」があります。これからの社会で受け入れられるサービスを作るには、価値観の“変化の兆し”を捉えることが重要だとも言えるでしょう。では、その変化の兆しはどう捉えたらいいのでしょうか。創造的破壊を促す思考法“Disruption(ディスラプション)”をヒントに、ニューノーマルな企業やサービスのあり方を考える本連載。今回は、時代の価値観を捉える取り組みとしてTBWAグループが実施しているbackslash(バックスラッシュ)をもとに、社会変化の兆しを捉える視点を解説します。

目次

リモートワーク普及で生まれた、新たな価値観

 新型コロナウイルス感染症拡大以降、リモートワークを導入する企業が増えており、6月に内閣府が発表した調査結果によると全国で3社に1社(34.6%)の企業がリモートワークを実施しているそうです。そんなリモートワーク時代に、SmartHR社は通勤手当の代わりに自宅のリモートワーク環境整備に使うことができる「リモートワークお願い手当」を導入したり、企業へ社食提供をするOKAN社はリモートワークをする社員への福利厚生として社員宅へ社食を提供する「オフィスおかん仕送り便」を開始したりと、各社新たな取り組みを始めています。

 私の勤めるTBWA HAKUHODOでも3月のリモートワーク開始から半年が経過しましたが、現在約85%の社員が自宅から勤務をしています。そんな中、社員から人気を集めている取り組みが、オフィスチェアレンタルサービスです。導入の背景として、リモートワークで自宅の家具で長時間勤務を続ける社員に腰痛などの心配が出てきていることがありました。そこで、リモートワーク開始後、社員の勤務環境向上を考えてきたワークスタイルプロデュース部(総務部の機能を持つ部署)が、座り心地の良いオフィスチェアの貸し出しを始めたのです。

 それまでリクライニングのない椅子で在宅勤務を続けてきた私にとって、このサービスはまさに求めていたもので、すぐに申し込みました。

(会社から借りたこちらのオフィスチェアに座りながらこの文章を書いています。)
会社から借りたこちらのオフィスチェアに座りながらこの文章を書いています。

 これらのサービスはリモートワーク普及以前には考えられなかった、今の時代の価値観を捉えるニューノーマルなサービスと言えると思います。このサービスに限らず、新しい時代に対応したニューノーマルなサービスを開発するには、こうした時代の価値観を捉える力が求められるでしょう。また、既にあるサービスが新しい時代でも必要とされ、不要不急なサービスとならないためにも、時代の価値観を捉えることは必須と言えるのではないでしょうか。では、時代の価値観とはどのように捉えればよいのでしょうか。

時代の価値観を捉える取り組み

 TBWAではこうした時代の価値観を捉える取り組みとして「backslash(バックスラッシュ)」という活動を展開しています。これは世界各国50以上のオフィスにいる280名以上の調査員が、各地で起こっている時代変化を象徴する事象を捉え、その根底にある時代の価値観を明らかにするシンクタンク的な分析活動です。定量的なビッグデータに加えて、定性的な個別事象も分析対象とすることで、数量的に推測が難しいような突発的な未来を洞察することを得意としています。洞察された社会変化の兆しは「Edge(エッジ)」と呼ばれ、2020年現在はグローバルで62、日本国内で17の兆しが導出されています

 Edgeとは具体的にどんなものなのか。先ほどご紹介したオフィスチェアレンタルサービスの背景にあたるものが、日本で洞察された兆しのひとつにあります。「ワークライフバウンダリーズ」です。一体どんな価値観なのか、調査員が作成した資料では次のように説明されています。

Work Life Boundaries
「ワーク」と「ライフ」は、“バランス”から“融合”へ。

 長時間労働の是正など働き方改革が推し進められる中で、世の中に広く浸透した「ワークライフバランス」の概念。人々の中に仕事を効率的にこなし、プライベートを充実させる意識が高まった。

 この「ワークライフバランス」に次ぐ新しい概念として、仕事もプライベートも人生の一部であると捉え、仕事と私生活を柔軟に融合する「ワークライフインテグレーション」という考え方がこの2〜3年の間に広まりつつある。それにともない「複業」や「パラレルキャリア」など新たな働き方の選択肢も増えている。

 また、今回のコロナ禍の影響でリモートワークが一気に定着し、それと合わせて密な都会を離れ、地方へと移住する人が増えるなど、仕事と私生活の関係性はより一層自由度が高まっている。

 資料ではそのほか、この兆しを象徴する事例として注目を集めるサービスや言葉、政府の動きや変化を表す定量的なデータが紹介されています。そのうちのひとつである視覚面での象徴的な変化「家なかオフィス化」は、これまでオフの空間だった自宅がリモートワーク によりオンの場に変わりつつある様子を示しています。こうした変化が生まれているからこそ、オフィスチェアレンタルのようなサービスが受け入れられたと言えるでしょう。

 なお、そのほか日本版の兆しは一般公開していないのですが、本稿では一部を抜粋してご紹介します。また、グローバル版の兆しはこちらからダウンロード可能です(全編英語)。

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