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約9万のTwitterフォロワー増加と高エンゲージ獲得を実現!メルカリの「モノガタリ」成功の理由

 本記事では、メルカリがTwitter上にて実施した「モノガタリ」キャンペーンの実施背景や施策の詳細について、メルカリの宮川氏、山岸氏、原田氏に取材。同キャンペーンでフォロワー数を垂直的に増加させた同社のTwitter活用戦略に迫った。

モノが持つストーリーをTwitter上で生み出す

MarkeZine編集部(以下、MZ):これまでのメルカリにおけるTwitterアカウントの役割、そしてどのような情報発信を行ってきたのか教えてください。

株式会社メルカリ マーケティングストラテジー マネージャー 原田 和英氏(肩書は取材当時のもの)

原田:今回のキャンペーンを行う前から20万近いフォロワーを抱えていたのですが、主な役割としては既存のメルカリ利用者向けに新機能のリリースやトラブルに関する情報など、アプリに関する最新情報をお伝えする役割として活用していました。

MZ:ユーザー向けのお知らせにTwitterを使っていた中で、今回の「モノガタリ」キャンペーンはかなり攻めたチャレンジに見えたのですが、実施背景について教えてください。

原田:まだメルカリをご利用いただいていない新規層へのアプローチが1番の目的です。メルカリの日本におけるMAUは1,745万利用者(2020年6月時点)となっていますが、まだまだ使っていただいたことのない方も多くいらっしゃいます。

 その中でも、SNS利用者とメルカリとの親和性が高いと考え、今回のキャンペーンを実施するに至りました。

MZ:SNS利用者に対し、メルカリとの新たな接点を作るのが目的とのことですが、なぜTwitterを中心にしたのでしょうか。

宮川:Twitterを選んだ理由は、テキストベースのコミュニケーションに最も適したプラットフォームだと考えたからです。今回のプロジェクトでは、「すべてのモノには物語がある」というコンセプトのもと、モノのストーリーを可視化させ価値を高めることで、持続可能な社会へとつながる意識変容に寄与したいと考えていました。

 CtoCサービスのメルカリでは、お客様からお客様にモノが渡るとき様々な巡り合わせや物語が生まれており、ストーリーとの親和性が非常に高いと考えています。ストーリーの伝え方は様々ですが、Twitterであればリツイートやいいねを通じてメルカリらしい“思いがけない出会いや広がり”が生まれるのではないかと感じたんです。

 また、withコロナの状況を生きる今、どこでも、どなたにでも気軽にストーリーを読んでいただきたいと考えたときに、Twitterが連載媒体として最適だと考えました。

10名の著名作家によるオリジナルストーリーを展開

MZ:では、具体的なキャンペーン内容について教えてください。

株式会社メルカリ Marketing&Creative メルカリマガジン編集長 宮川 直実氏(肩書は取材当時のもの)

宮川:4月28日より2ヵ月間にわたって、伊坂幸太郎さんや又吉直樹さんなど10名の著名作家によるオリジナル短編小説をメルカリ公式Twitterにて連載しました。毎週火曜日の17時に1作品ずつ、各作家さんのストーリーをツイートしていったんです。

 ストーリーの内容に関しては「捨てないこと」だけをお願いし、「モノ×物語」をテーマに、人とモノから生まれるドラマを自由にご執筆いただきました。

山岸:より多くの方にこの企画を楽しんでもらいたい、そう思ったのでローンチ時にフォロー&リツイート(RT)キャンペーンも実施しました。イラストレーターの長場雄さんによるオリジナルデザインのエコボトルなど、オリジナルグッズが当たるものを、計2回。

 1回目はより多くの拡散を目的に、気軽に参加してもらえるようフォロー&リツイート(RT)に。2回目は対象ツイートに「カンバセーショナルカード」を付け、ハッシュタグ「#メルカリのモノガタリ」を付けた上で、フォロワーさん自身のストーリーを投稿してもらえるようにしました。

 各コンテンツの広がりについては、オーガニック投稿で話題化しましたが、加えて各作家さんのストーリーをプロモツイートとして配信してきました。

思わずTwitterで読みたくなるコンテンツ体験の設計とは?

MZ:Twitter上でキャンペーンを展開する中で、意識していた点を教えてください。

株式会社メルカリ Marketing&Creative Director 山岸 香織氏(肩書は取材当時のもの)

山岸:多くの方にモノにまつわるストーリーをTwitter上で発信してもらうための工夫は意識していました。先ほど触れた「カンバセーショナルカード」での取り組みについて、「#メルカリのモノガタリ」付きのストーリーが1,200近く集まったので、Twitter上での「にぎわい」が創出できたと思っています。

 アートワークにも非常にこだわりました。長場雄さんに描き下ろしてもらったイラストをクリエイティブに落とし込む際、Twitter上でのタイムラインでどのように表示されるのか、チーム内のアートディレクターおよび宮川と何度も調整を重ねましたね。コンテンツを読んでもらう際のユーザビリティも、チームで考え抜いて校了したのを覚えています。

宮川:メルカリはお客様体験を非常に重視しています。そのため、今回のTwitter上の読者体験においても、クリエイティブのデザイン性や視認性はかなり意識しました。

 著名な作家の方の作品をTwitterで連載するのは前例がない取り組みだったので、慣れ親しんだ書籍のブックカバーやページレイアウトを画像として投稿し、タイムライン上で“読みもの”としてのパーセプションを高める工夫をしました。アートディレクターに装幀デザインの経験があったため、読みやすい体験をどうすれば提供できるかについては、細かく相談させてもらいましたね。

MZ:各作家の作品は複数の画像ツイートで構成されていましたが、投稿のタイミングや方法などで意識していたことはありますか。

宮川:毎回リプライ形式で投稿することで、検索しなくとも続きや見逃した部分をスムーズに読めるようにしました。また当時、ステイホームが長期化する中、投稿を1時間おきの「ライブ配信」にすることで、読者が参加型のイベントとしてモーメントを共有できる設計にしたんです。

 自粛期間中のエンタメ界隈では「ライブ配信」がトレンドになっていましたが、文学では他に例が見当たらなかったので、時流と相まって注目していただいた面もあるのかなと感じています。

フォロワー数が約9万増加&高エンゲージメントを達成

MZ:「モノガタリ」によって得られた成果を教えてください。

山岸:Twitter上のパフォーマンスに関しては「モノガタリ」関連で発信したツイートに対するRT数が5万、いいねが17万、インプレッションが8,700万、そしてエンゲージメント率は10.4%と非常に高い数値でした。また、期間中にフォロワー数も21.2万から30.3万に増加し、非常に良いパフォーマンスだったと考えています。

 フォロー&RTキャンペーンで1.9万RT、1万近くのいいねを獲得していたので、Twitter広告の波及効果も感じていました。ただ、今回のエンゲージメントの中心はコンテンツに対する評価から生まれていたので、多くの方から「モノガタリ」に対する共感を得られたと捉えています。

 また、メルカリのお客様に向けてアプリでも「出品キャンペーン」を実施しました。メルカリへ出品する際に、「商品説明」の欄に「#メルカリのモノガタリ」付きで「出品するモノにまつわる思い出」を書いてもらうキャンペーンなのですが、12,000近くの出品があったので、「モノとストーリー」というテーマはメルカリのサービスと親和性があるということを改めて実感しましたね。

 この他にもローソンさんとのコラボレーション企画として、作家さんの作品をレジ袋に印字しナチュラルローソンで配布するという取り組みも実施しました。ありがたいことに、テレビや新聞、Webなどの各種メディアに取り上げられ、大きな話題となりTwitter上でも多くの会話が生まれていました。

MZ:宮川さんはいかがでしょうか。

宮川:今回のプロジェクトで嬉しかったのは、4社の出版社の方から「モノガタリ」の書籍化についてお問い合わせをいただいたことですね。キャンペーンが話題になったことで業界を超え、今後の展開にもつながって非常に良かったと感じています。

Twitterにはコンテンツプラットフォームの可能性がある

MZ:生活者から、自然な形で会話が生まれ、思わず参加したくなるキャンペーンを設計できていたのだと思いますが、Twitter利用者の反応はいかがでしたか。

宮川:驚くほどたくさんの良い意見をいただけました。ちょうどGW直前に始めたこともあって「あまり外出できない中、気軽に楽しめるコンテンツがありがたい」といった声を多くいただきました。

山岸:Twitter利用者の方による投稿を見ても、モノやメルカリにまつわる素敵な話がたくさんツイートされていて、参加者の方も、このキャンペーンを楽しんでくださったようです。

MZ:では、今回のキャンペーンを通じて得られた気づき、知見があれば教えてください。

原田:今回のキャンペーンを通じて想定の2倍近い方がフォローをしてくださり、Twitterにはまだまだ活用の可能性があると感じました。

 同時に、マーケティングにおけるコミュニケーションの可能性を感じた取り組みとなりました。今回のモノガタリを読んでくださった方で、他の方へのおすすめとしてツイートをシェアしてくださる方が多くいました。そこにはメルカリとフォロワーの方のコミュニケーションが存在しただけでなく、フォロワー同士のコミュニケーションもまたそこに存在しました。

 メルカリもC2Cのマーケットプレイスであり、お客様同士のコミュニケーションによって成り立つサービスです。そういう点では、今後、いかにお客様とコミュニケーションをするかという点ではなく、お客様同士のコミュニケーションの媒介となる価値も改めて感じた取り組みでした。

宮川:Twitterには、コンテンツプラットフォームとしての新たな可能性があることを身をもって感じました。今の時代、SNSでは日々多くのテキストが読まれ、共有され、拡散されています。今回のプロジェクトを数年前にやっていたら上手くいっていたかはわかりません。それだけ受け手の感覚というのは日々変わり続けています。

 Twitter利用者の方は新しいコンテンツの楽しみ方にとても柔軟だなと感じました。今後も新しいコンテンツ配信の形を模索していきたいと思います。

お客様の声に耳を傾けて会話を生む

MZ:最後に今後Twitterをどのように活用していきたいか教えてください。

宮川:今回の「モノガタリ」のフレームワークは今後も活かしていけたらと思っています。メルカリとストーリーの親和性を、今回得られた知見を活かしてまた新たな形で展開してみたいですね。そして、Twitterでのコンテンツの楽しみ方は引き続き研究していきたいと思います。

山岸:カンバセーショナルカードを使ったことがきっかけで素敵なストーリーをたくさんいただけたので、今後もお客様の会話が伺えるようなキャンペーンを行っていきたいと思います。

 なおかつ、多くの方と接点を持とうと考えたときに、お客様目線に立ったコンテンツが非常に重要になると実感したので、良いコンテンツを提供し、会話が広がるコミュニケーションを提供できればと思います。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/09/09 10:00 https://markezine.jp/article/detail/34066