ポストCookieの世界がマーケターに及ぼす影響
先程のメディアが受ける影響につながるのですが、Web広告によるターゲティング効率が減少し、CPAが悪化する可能性が考えられます。企業のマーケターにとっては、適切なターゲットに対する広告が配信できなくなるためパフォーマンスが悪化し、出稿を抑えるケースも出てくることが考えられます。そうなると、メディアの収益も下がるという悪循環に陥るのです。

また、メディアにおけるオーディエンスターゲティングと同様に、広告主がプライベートDMPやCDPで貯めている1st Party Cookieデータについても広告配信用の3rd Party Cookieとデータを連携することができなくなります。そのため、自社で貯めている1st partyデータを広告で活用することは難しくなるでしょう。
広告配信以外にも、広告効果計測ツールで3rd Party Cookieが使われているケースがあります。たとえば、アトリビューション計測をする場合は、様々なドメインのデータをまたいでデータを計測しているため3rd Party Cookieを利用しています。それ以外にもアフィリエイトの計測や一部のトラッキングツールでは3rd Party Cookieを使った計測がされているケースも多く、設定の見直しが要されます。
GoogleやAppleも3rd Party Cookieを使った広告配信だけではなく、コンバージョン計測についても新しい方法の提供を開始していたりもするので3rd Party Cookieによる影響以外もどのような影響があるかを把握する必要があります。
続いて、消費者に対して起こる影響について解説します。
ポストCookieの世界で消費者に起こる影響について
元々、3rd Party Cookieの規制やブラウザ側の仕様の変更は、消費者のプライバシーを守るために変化していったものであるため、消費者に対してはこれといったデメリットがないと感じる方が多いのではないでしょうか。むしろ、「自分のプライバシーが保護される」「追いかけられる形式の広告(リターゲティング広告)が出なくなる」といったことが消費者に対してメリットと感じるかもしれません。
しかし、一方でメディアにリターゲティング広告が表示されなくなる、企業の広告効果が悪くなることで、回り回って消費者に対して起こるデメリットがあるかもしれません。
先程紹介した通り、メディアは今までターゲティング広告で一定の収益を稼げていました。それができなくなることで、メディアは「一般的にCVRが高い広告」や「目に付きやすい広告」などCPMが高い広告を設定して消費者に表示することが増えると考えられます。その結果として、見ていて不快な広告や誇張表現を含む広告がより表示されることが懸念されます。
また、CPMが高い広告を入れずに有料課金のコンテンツを増やす会社も増えるのではないかと考えられます。こういった変化は3rd Party Cookieの制限が付いた直後に影響が出てくるというよりも徐々にメディアの収益構造が変化していき、その過程で消費者に対して影響が与えられると想定されます。
その他にも、企業のマーケターにとって今までより広告による効果が上げづらくなることで商品が売れなくなったり、今までの価格設定で商品を提供することが難しくなったりするかもしれないのです。
結果として、これらの影響は起こらないかもしれませんが、少なくとも今までメディアと企業と消費者の間で成り立っていたエコシステムに変化が起きるので、ここに上げた以外にも何らかの影響が現れる可能性は高いです。
ここまで、企業のマーケター、メディア、消費者の変化について解説しました。最後にまとめとして、そういった世界でデジタルマーケティングはどの様に変化していくのかについて触れていきます。