※本記事は、2020年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』58号に掲載したものです。
アプリダウンロード数・消費支出ともに増加
新型コロナウイルスによる各国でのロックダウンや外出自粛を受け、アプリの月間ダウンロード数(世界)は2020年上半期に640億を突破し、2019年下半期から10%、2019年上半期から5%増加する結果となりました。また、消費支出(サブスクリプション、アプリ内課金を含むアプリでの収益)でも、2020年上半期に500億ドル(日本円で約5兆4,000億円)を超え、2019年下半期比で10%増加。さらに、2020年4月のダウンロード数急増を受け、2020年5月には過去最高額を記録しました。日本でも、ゲーム/非ゲームともにダウンロード数・収益額が成長していますが、特に非ゲームの成長率が高いことがトレンドです。消費支出額の増加は、消費者がアプリをこれまで以上に利用しているということだけでなく、モバイルサービスに価値を見出していることを示しています。
またモバイルの利用時間も、コロナ下において伸長しています。図表1は、2019年から2020年におけるモバイルデバイスでの1日の平均消費時間(利用時間)を表したものです。世界的に年々モバイルの利用時間は拡大していますが、このコロナ下で、可処分時間はさらにモバイルに費やされる結果となりました。日本においては、1日のうち平均3時間36分の時間が、モバイル(スマートフォン)利用に費やされていることがわかります。
休校延長の影響からZ世代の「時間消費」が増加
ここからはZ世代におけるモバイル利用傾向を、多世代と比較しながら見ていきます。まずコロナ下において、Z世代の間でユーザー数を伸ばしたアプリをカテゴリー別に推移を見ていきます(図表2)。全カテゴリーでユーザー数が伸びていますが、中でもソーシャルアプリ、エンターテインメントアプリが3〜5月にかけて著しく増加していることがわかります。ゲームアプリの利用は伸びてはいるものの、6月にかけてゆるやかに下落し、教育アプリは4月以降で急増しています。また、ヘルスケア、ファイナンスは、例年通り横ばいで推移しています。
一方25〜44歳の世代では、ショッピングアプリ(ECやC2Cのフリマ)の利用者が増加しており、この世代では、アプリカテゴリー全体の中でショッピングアプリの利用が最も大きいシェアを占めています。エンターテインメントアプリは巣ごもり需要の影響で増加を見せるものの、ゲームアプリは大きな変化はなく、ほぼ横ばいで推移しています。
では、アプリの利用時間は世代別にどのように変化したのでしょうか。Z世代のアプリ利用時間は、2020年3月に前月比で30%(カテゴリー全体)の急増を記録。25〜44歳の世代と比較すると、月平均成長率は2.7倍となっています。3月以降、春休みや緊急事態宣言による休校延長の影響を受け、時間消費が加速したことが予測されます。また、エンターテインメントアプリ(動画視聴など)はコロナ前後で2倍近い変動を見せています。教育アプリは利用者数が伸びたこともあり、2020年5月は2月比較で4.5倍と、時間消費が増加しています(図表3)。
一方25〜44歳の世代では、2020年3月に前月比で12%(カテゴリー全体)の増加を記録しています。中でも、ソーシャルアプリは2020年4月に125%増加(2月比)し、メッセージ系、オンライン繋がり系のアプリが成長をけん引しています。また、巣ごもり需要により、エンターテインメントアプリ(動画ストリーミングアプリ)も増加しました。