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アドテック東京 2020

「問われる立場」に立つことが、成長につながる ヤマハとユーグレナのCMOに聞いたキャリア論


「誰もやっていなかったことに着手する」CMOの役割

音部:最初の質問は、CMO固有の仕事や責任について。企業によってはCMOという肩書きがないところもありますが、いわゆるマーケティングリーダーに求められている役割とはなんなのでしょうか。それぞれの考えを教えてください。

大村:一番重要な仕事は、会社が向かうべき方向をしっかりコンセプトに落とした上で、仕組みを作っていくことだと思います。

 方向性を決める際には、「LTVを最大化する」「ブランド力を高める」といった抽象度が高い指示が出てくることが多いです。それに向けて、具体的に何をするべきなのか割り出し、組織体制を整えていく。ざっくり言うと「とにかく今まで会社がやっていなかったことをやって、新しい価値を作っていく」、これがCMOに求められる大きな役割ではないでしょうか。

 例をあげるとヤマハでは、「Make Waves」というブランドプロミスを掲げています。この言葉は人々が心震わす瞬間を表していて、「個性、感性、創造性を発揮し、自ら一歩踏み出そうとする人々の勇気や情熱を後押しする存在でありたい」という思いを込めています。これを体現するために、社内で「Make Wavesしましょう」と声をかけても、何をしたら良いのかわかりませんよね。「Make Waves」のために、ヤマハが保有する技術、たとえばAIなどをどう活用するか、お客様のMake Waves実現にどうつなげていくかというところが、我々の腕の見せどころだと思います。

音部:抽象的な概念で終わってしまいがちなブランドプロミス。これを体現するのはCMOの1つの重要な役割ですね。工藤さんはいかがですか。

クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役 音部 大輔氏
クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役 音部 大輔氏

工藤:この質問は難しいですね。私の場合、マーケティング部門の立ち上げから入っているので、どこからがマーケターで、どこからがBMでどこからがCMOか、正直よくわからなくなりながら働いています。

 私の資生堂時代を含めた経験から考えると、BMは良い選択肢を作ることが仕事だったように思います。一方でCMOの仕事は、その選択肢を基に良い判断をすることなのではないでしょうか。もちろん、CMOはBMが良い選択肢を持ってくるのを待っているだけではありません。良い選択肢を作るために、良い資源を提供する。つまり、大村さんも話していたように組織などの仕組み作りによって、BMが良いジャンプをするためのジャンプ台を作っていく。これがCMOに求められていることだと思います。

知識は後付けできるが、経験は自ら飛び込まないと得られない

音部:続いて、マーケターとしての矜持についてうかがいます。これまでのキャリア、あるいはマーケティング責任者になってから意識していることはありますか?

大村:私がいつも考えていることは、プロジェクトの大小に関係なく、仕事の本質はすべて同じだということです。これまでに経験してきたことは必ずどんな分野にも活かせます。「やったことがあること」に取り組むときには当然、自身の経験が活きるわけですが、「やったことのないこと」でも違う経験から引っ張り出せるのです。目標設定したところからバックキャスティングしていくというか。これは、30代の頃に上司が教えてくれたことですが、ずっと大事にしている考え方です。

音部:先ほどのCMOの役割の話にも通じていますね。「Make Waves」があり、それを具現化するためのCMOの仕事があり、そのミッションを完遂するために組織構築をするというバックキャスティング。工藤さんはどうですか。

工藤:CMOになりたいと思ってキャリアを築いてきたわけではないので、皆さんの参考になるかはわかりませんが、意識してきたことは2つあります。

 1つめは、「とにかくバッターボックスに立ちに行く」ということです。20代の頃から自分の成長角度をいかに高めるかを意識してきました。縦軸が成長度合い、横軸が時間だとすると、成長角度は「知識×経験」から成り立っています。知識は内発的に得られますが、経験は自分から飛び込んでいかないとなかなか得られないものです。たとえば、「マキアージュ」を担当していた頃、MBAを取るために夜間はグロービス経営大学院に通っていました。それが功を奏し、一年後に社内改革があり、BMを担当することになったときには知識と経験が合わさって、グンと成長することができました。

 もう1つは、自分の1つもしくは2つ上の視座をもつことを意識しています。たとえば、BM時代はCMOの判断軸とは何かを考えていました。BMとしてブランドのPLをいかに良くするかに加え、CMOの立場に立ち、会社にとってのブランド存在意義をロジック、調査、ファクト視点で考えていく。それにより、自分の仕事の意義も見えてきました。

音部:お2人の在り方は対照的ですね。大村さんは、目的に基づくリーダーシップを発揮しているのに対し、工藤さんは、目的を達成する手段の原材料となる資源確立に軸足を置いています。いずれにせよどういう目的でどういう資源をもっているかが戦略を確定するので、どちら側からのアプローチもありですね。

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「問われる立場」に立つことが、成長につながる

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/15 11:10 https://markezine.jp/article/detail/34793

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