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「コンロをオンラインで買う」という新しい体験をどう広げるか リンナイ×D2C Rのプロモーション戦略

 リンナイが「キッチンが、もっと好きになるコンロ」をコンセプトに手がけた、オンライン専売のビルトインコンロ「ILO(イーロ)」。この「コンロをオンラインで買う」という新しい体験のプロモーション支援を、D2C Rが担当している。広告運用だけではなく、クリエイティブ制作からサイト改善、キャンペーン設計と幅広い施策を実行し、販売台数は増加。リンナイとD2C Rの担当者4名に、販売から1年間のマーケティング活動を振り返っていただいた。

D2Cモデルのビルトインコンロ「ILO(イーロ)」

――今回は、リンナイのビルトインコンロ「ILO(イーロ)」のWebプロモーションについてうかがいます。まずは、皆さんの自己紹介からお願いします。

亀島:リンナイの亀島です。リンナイでは、2011年からインターネット直販モデルの販売をスタートしており、私が所属するeビジネス推進グループは、その直販モデル領域の業務を担当し、私はその責任者をしています。

野田:同じく、eビジネス推進グループの野田です。私は自社ECサイトで扱う、メーカー直販モデルのプロモーション設計やクリエイティブ制作の進行管理、広告運用など、Webマーケティング全般を担当しています。

椿本:D2C Rの椿本です。D2C Rでは、インターネットの総合代理店として、リンナイ様をはじめ、幅広い業種のお客様のデジタルマーケティングをご支援しています。

川村:同じくD2C Rの川村です。椿本とともに、今回ILOのWebプロモーション施策を担当させていただきました。

(左から)リンナイ 営業本部 営業部 コミュニケーションデザイン室 eビジネス推進グループ 課長 亀島直人氏/リンナイ 営業本部 営業部 コミュニケーションデザイン室 eビジネス推進グループ 主査 野田大介氏/D2C R 第一営業本部 本部長 椿本晋之介氏/D2C R 第二営業本部 営業部 マネジャー 川村卓氏
(左から)リンナイ 営業本部 営業部 コミュニケーションデザイン室 eビジネス推進グループ 課長 亀島直人氏
リンナイ 営業本部 営業部 コミュニケーションデザイン室 eビジネス推進グループ 主査 野田大介氏
D2C R 第一営業本部 本部長 椿本晋之介氏
D2C R 第二営業本部 営業部 マネジャー 川村卓氏

――では、ILOについて教えてください。

亀島:昨年販売を開始したILOは、お客様が自由にカラーを選べるビルトインコンロです。天板10色、前面パネル3色、五徳などの上部パーツ2色から選べ、組み合わせは60通りにもなります。

 コンセプトは「キッチンが、もっと好きになるコンロ」。“自分らしさ”を大切にする時勢を反映し、お客様の好きな空間や、お気に入りのキッチンを作る大切な存在になりたいと、ILOを企画しました。メーカー直販のD2Cモデルとして、オンラインのみで販売し、工事費込みで販売している点も特徴です。

Web限定モデルを通じて、新たな顧客接点を創出したい

――ILOのWebプロモーションをD2C Rへ依頼された背景を教えてください。

野田:ILOは、128,000円(工事費込・税抜)と、ECでさっと購入するには難しい価格帯の商品です。また、従来ビルトインガスコンロは、住宅購入時やリフォームのときに、ハウスメーカーや工務店などを通し、提示された選択肢の中から選ぶものでした。ですから、ILOにあたっては「コンロをオンラインで買う」「コンロのカラーを選べる」という、新しい購買行動の提案が必要だったのです。

 そこで、広告運用だけでなく、販促の企画やサイト設計なども一緒に考えてくださるパートナーを探していたところ、D2C RさんからILO全体のマーケティング戦略をご提案いただきました。さらに、名古屋のオフィスまで実物のILOを見にいらっしゃったことも、商品への熱意を感じ、「パートナーとして信頼できる」とお願いすることになったのです。

椿本:ありがとうございます。野田さんたちから、「お客様へコンロの新しい価値を提供し、ビルトインコンロの市場を広げていきたい」とお話を伺っていましたので、広告運用だけではなく、コミュニケーション設計のところから、マーケティング全体をご支援したいと提案しました。

亀島:おっしゃる通りです。私たちは、直販事業を通して、お客様との接点作りを最も大切にしています。当社に限らず、一般的なメーカーはBtoBtoCビジネスが中心で、エンドユーザーのお客様との距離が遠くなってしまう課題があります。直販事業でお客様と直接繋がり、今後の商品・サービスへと活かしていく。そして、ブランド価値を高め、お客様が販売店様へ「リンナイが欲しい」とお求めになるサイクルを描いています。

広告運用に加え、クリエイティブ制作やフォーム改善までサポート

――では、これまで展開されてきたWebプロモーションについて教えてください。

椿本:まずは、ビルトインガスコンロの購入に関するユーザー調査から始めました。そこから、ビルトインガスコンロを買い換えるタイミングは、経年劣化や引っ越し時が大半であることがわかりましたので、まずはILOのコンセプトを踏まえて「好きな色のコンロを選んで、お気に入りのキッチンを作りましょう」のメッセージを伝えるコミュニケーション設計を行いました。

椿本:その上で、具体的なWebプロモーションを実行していきました。始めは、リスティング広告からスタートし、ディスプレイ広告やInstagramなどの運用広告、リターゲティング広告などへ展開しています。

――クリエイティブ制作では、どのような点に注意されましたか。

川村:広告を始め、LPやWebサイトのコンテンツなど、すべてのクリエイティブに「自分のキッチンにILOがあるときの気持ち」を考えた表現を取り入れています。そして、A/Bテストを行いながら、PDCAを回し、クリエイティブを改善しています。やはり、料理シーンなど、お客様の生活やキッチンをイメージできるような表現、自分ごと化しやすいクリエイティブの反応が、高い傾向にありますね。

野田:広告やクリエイティブだけでなく、サイト内のユーザー行動データを参考に、Webフォームの改善も行いました。D2C Rさんに、Webフォーム内の離脱傾向を調べていただき、電話番号の入力を必須から任意に変えるなど、お客様のサイトへの来訪からご購入まで、プロセス全体の改善を進めています

オンライン専売なのに、紙のカタログを作成。その理由とは?

――「オンラインでコンロを買う」体験を訴求するため、どのような施策を行われていますか。

椿本:ユーザーアンケートでは、「実物を見たい」の声が多いんです。ショールームへのご案内が理想的ではありますが、やはり「オンラインでコンロを買う」という新しい体験の訴求がポイントです。まずは、オンラインでILOを深く知るコンテンツの制作を強化しました。

亀島:具体的には、実際にILOを設置されたお客様のご自宅へ伺い、ILOがある生活のレポートコンテンツを制作したり、モニターキャンペーンを行い、投稿頂いた画像をサイト内でユーザーフォトとして公開するなど、ユーザー視点を重視したコンテンツも作りました。すると、お客様の反応も次第に変わっていき、注文数に反映しています。

あいう
実際に使われている様子をコンテンツに

野田:また、電子と紙のカタログ2種類を制作し、お客様がILOを理解、ご検討しやすいような情報発信に取り組んでいます。

――Web上のコンテンツだけでなく、紙のカタログも作成されたのですね。

野田:はい。やはり紙面のほうが、より実物に近い色味を表現でき、お客様の納得感を得られやすいのではないかと考えました。また、ビルトインコンロは検討期間が長い商品です。住まいのことですから、ご家族で相談するシーンを想定すると、紙のカタログが使いやすいですよね。また、カタログご請求後にオファーメールが出せるため、お客様との関係を作ることもできるんです。

カタログ
カタログで実物に近い色味を表現

川村:リンナイさんは常に、お客様が納得して購入できる環境作りを大切にされています。紙のカタログもコンロの質感が表現できるようにとこだわっていらっしゃいますし、お客様の利便性を考え、楽天市場など販売チャネルを増やしています。私たちも、トータルのプロモーションがご提案しやすいですね。

多角的なサイト改善で、注文数は増加

――これまでのマーケティング活動から、どのような成果が出ていますか。

野田:販売開始より、順調に購入台数は増えています。紙のカタログは好評で、カタログを請求された方の10%が購入されています

亀島:また、申し込みプロセスを改善したことで、販売数が大きく伸びました。ILOの設置には工事が必要で、費用はお客様の住環境によって異なります。そのため、ILO販売当初は、お見積もり依頼をいただき、オペレーターが担当、場合によっては現地へ伺い、最終的な金額をご案内していたのです。

 しかし、オペレーションが複雑ですし、お見積もり提示後の離脱率も高く、なかなか注文に至りませんでした。このあたりの分析をD2C Rさんにもご協力いただき、課題を明確化しました。打ち手として、見積もりのステップをなくし、工事費込みの一律価格でカートインいただけるよう販売方法を変更するなどサイトの改善も行った結果、お申し込みが増えました。

――サイト全体の改善やお客様ニーズを考えた施策が、成果へつながっているんですね。

亀島:D2C Rさんからは、私たちがなかなか手の回らない、サイト内の動線やアンケートの分析、キャンペーン設計など、広告運用に留まらない全体的なマーケティングのご支援をいただいています。

野田:レポートもわかりやすいですし、コミュニケーション頻度も高いですね。週1回のオンラインミーティングだけでなく、すぐに情報共有ができる関係性がありますから、スピーディーに施策を打ち出していけます。こういった早さも、成果に繋がっていると思います。とても、良い取り組みができているのではないでしょうか。

メーカー直販の安心感、ブランドへの信頼感を大切に

――最後に、これからの展望をお聞かせください。

野田:世の中のEC化率が高まり、オンラインでコンロを買うことが特別ではなくなってきたと感じます。一方で、価格比較がされやすくなりますから、「ILOが欲しい」と指名されるようなブランディングを強化したいです。

亀島:メーカー直販で買われるお客様は、安心感を一番大切にされていると思います。ILOのコンセプトにあわせて、メーカー直販サイトならではの安心感をお伝えできたらと考えています。

 また、リンナイ製品の交換部品やお手入れアイテムを扱うR.STYLEの会員数も、83万人になりました。より一層、お客様へリンナイの商品を便利にご活用いただくサポートや情報発信をしていきたいです。それが、ブランド価値へつながり、販売店様も含めたステークホルダーの皆様との関係構築にもなると考えています。

――D2C Rのお二人は、今後どのようなサポートを強化したいですか。

川村:データを活用したプロモーションですね。この1年間で蓄積されたデータを参考に、お客様の感情など定性面も踏まえ、コミュニケーションプランのアップデートを進めたいです。

椿本:ILOは、新しい価値を作る商品です。私たちは、リンナイさんが持つブランドを大切にしながら、よりお客様のインサイトを理解して、ILOの価値を発信していかなくてはなりません。中長期的には、リンナイさんのファンの方達へ向けた、コミュニケーションプランやファン化へのプロセスなども設計し、注力されているビルトインコンロ市場を大きくしていきたいと思います。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/04 11:00 https://markezine.jp/article/detail/35172