「愛されるブランディング」がダメな理由
同セッションのタイトルは「コロナ禍に立ち向かう世界のダイキン 愛されるためのブランディングとは」。講演内容に基づいて編集部がつけたものだったが、片山氏はまず、「この『愛されるブランディング』というテーマはとても良くない」と語った。
片山氏は「愛されるブランドというのは、趣味の自転車といった特定の嗜好品や『iPhone』などの一部のカリスマ的ブランドしか存在しないのではないか」と考えており、自身はダイキンを愛しているものの、社外の人が一般的な企業やその商品を愛するようになるというのはほとんど不可能なことだろうという。
また、ブランディングの目的が「愛されるため」ということもおかしいと指摘する。ブランドが愛されると企業にとってどんなメリットがあるのだろうか? もちろん愛されないよりも良いことだが、愛されるというのは手段であって目的ではない。そこを目的とするとブランディングに失敗してしまうという点でも、愛されるためのブランディングをしてはいけないのだ。
ブランドづくりに必要な4つの考え方
では「ブランディング」について企業はどのように考えれば良いのだろうか。企業のブランディングにおいて必要な考え方として、以下の4つが挙げられる。
1つ目、ブランディングの目的は、当然、商品・サービスがさらに売れ、採用など企業の様々な事業活動に貢献することだ。
2つ目の理解・定義については、まずブランドという言葉の捉え方が人それぞれ違うことがあるため、ベクトルを合わせる必要があるだろう。ここでいうブランドの定義は、「生活者がブランドを思い出すきっかけになるものに触れたときに、頭の中に浮かぶイメージ」のこと。そのため、同じ企業や商品に対しても、人それぞれに思うブランドは違ってくる。
3つ目のどんなブランドを作りたいかについては、どんなブランドを作ると商品・サービスが売れ、事業活動に貢献できるのかという視点で決めていく。その際に、「Brand Identity(存在価値)」「Brand Purpose(存在意義)」「Brand Personality(人格・個性)」の3つを絶対に決めるべきだという。
「存在価値」というのは、その企業のこだわりや、その企業らしさが凝縮されていること。対して「存在意義」は、「あなたの企業がなくなっても類似の企業はあるし困らないけれど、存在した方がいい理由がありますか?」という問いに対して「こんな意義があると思う」という答えになるものだ。また「人格・個性」は、企業を人間に例えたらどんな人かといった企業の性格を指す。
そして、4つ目の情報発信は、生活者とのタッチポイント(企業やサービスとの接点)を作るということ。前述の通り、片山氏の考えるブランドとは「その企業やサービスについて、それまでに接した情報の中で頭の中に残ったもの」だ。当然、情報が伝わらないことにはブランドづくりはできない。どんなブランドを作るか決めたら、様々なタッチポイントを通じてそれを届けていかなければならないと話す。
その手段として、トリプルメディアと呼ばれる「オウンドメディア(自社サイトなど)」「アーンドメディア(SNSなど第三者が発信するメディア)」「ペイドメディア(広告・記事広告など)」を組み合わせて様々なタッチポイントを作っていく。