トリプルメディアを組み合わせてタッチポイントを作っていく
これらのオウンドメディアの展開と同時並行で、ペイドメディアも展開している。東洋経済とタイアップし、取材記事広告や大学教授へのヒアリング記事広告などが掲載された。
「オウンドメディアはとても良いのですが、なかなかそこまで辿りついてもらえません。多くの方が訪問するペイドメディアにまず記事を出すことで、より幅広く換気の情報を届けられると考えました。また、電車内の広告やデジタル広告も同じテーマで展開しました」(片山氏)
また第三者が発信するアーンドメディアにおいて情報が広がることを狙い、広報活動も矢継ぎ早に進めた。4月10日のサイトオープンに合わせてニュースリリースを出すだけでなく、このコンテンツを公開してからの反響をまとめたプロモーション資料も作成しPRした。また、サイトの英語版も作成し、日本に暮らす英語話者に向けても発信していった。
これらの取り組みによって、「上手な換気の方法」のWebコンテンツは、100件以上のテレビ番組などで紹介され、新聞、Webメディアでも数多くの媒体で紹介された。情報に触れて、「上手な換気の方法」を訪れた生活者の自発的な発信でSNSなどでも大きく拡散されることになった。

「とにかく手を替え品を替え、情報を出し続けました。このブランドづくりで企業の事業活動に貢献することができたのではないかと思っています」(片山氏)
これからの時代はスピードが勝負
換気の情報を発信しているのは、当然ダイキンだけではなかった。ではなぜ、同社の発信が大きく話題となり、評価されたのだろうか。
片山氏が挙げる理由の1つは、それまでに換気について情報発信を行っていた世の中のサイトは、専門的すぎてなかなか一般の人にはどう実践したら良いのかわかりづらいものが多かったことだ。そうならないために、ダイキンでは生活者の目線でわかりやすく、すぐに実践できるようなコンテンツにするという工夫をしていたという。
競合も同様に換気についての情報サイトを制作していた。ただ、早い企業でも公開は4月末、その他は5月以降となっていた。一方ダイキンの「上手な換気の方法~住宅編~」の公開は、企画開始からわずか2週間後のことである。なぜこれだけのスピード感を持って実行できたのだろうか。
「外部の広告代理店やPR会社、制作会社と共に制作していますが、従来からワンチームとなって動いていました。社内だけでなく、こうした外部の会社の方にも同じ情報を共有し、同じ認識を持った体制があったため、コロナ禍でも関係者みなでオンライン会議をし、迅速に進めていくことができました。
これは急にできることではなく、日頃のコミュニケーションが大切です。連携を密にすることで、外部の専門家の方が持つ能力も最大限に発揮してもらえやすくなります。現在のブランドづくりのコミュニケーションとして、スピードは非常に重要です」(片山氏)

こうした体制で他社より一早く情報発信することで、メディアで取り上げられ、検索上位にも表示されるようになり、サイト導線が太くなっていった。企業から広告代理店にオリエンし、そこからPR会社や制作会社にプレゼンしという一般的な手順を踏んでいては、そのスピードは実現し得ないだろう。
「ブランドづくりにおいて重要なのは目的です。どういうブランドを作れば儲かるのかを、存在価値、存在意義、人格・個性の視点からはっきりさせます。この際に、商品やサービスを売りやすくするために自分たちの存在意義や存在価値を曲げてはいけません。ウソは必ずバレます。決めたことをどう伝えたら、商品・サービスが売れるのかという順番で考えてください。今はなかなか難しい時代ですが、知恵を絞れば大きな競合に勝てるチャンスもあります。マーケターの腕の見せ所です」(片山氏)