同一チームに専門家を集め、施策をスピーディーに
事業者・個人向けに間接資材(ヘルメットなどの工具や消耗品)を扱う、MonotaROが運営するECサイト「モノタロウ」。
主な顧客層は製造業、建設・工事業・自動車整備業で、各現場で利用される道具・資材のほとんどが同EC上で揃えられるという。医療、飲食、学校、農業向けの商品も展開しており、現在品揃えは1,800万点以上、顧客数は484万にのぼる。
幅広い品揃えながら、UXのわかりやすさで多くのユーザーから支持を得ているモノタロウは、創業当初から一貫して次の課題の解決に取り組んできた。
「間接資材は多種多様で、商流通は複雑、買うのに手間がかかる。見積もり、交渉が必要で、適正な価格でタイムリーにモノが買えない。探すにも時間がかかる」
顧客にとって適した商品を探す時間、購入するまでの時間をいかに短縮できるのか、そこに徹底したデータドリブンマーケティングを主軸に追求している。
データドリブンマーケティングを担うのは、米島氏が所属するデータマーケティング部門だ。
米島氏によれば、同部門には5カテゴリの専門家が在籍している。PM(プロダクトマネージャー)から、ITエンジニア、データサイエンティスト、マーケティング、UIUXデザイナーまでが同じチームに所属しているのだ。通常多くの会社ではそれぞれ部門として独立しているが、モノタロウではなぜこのような体制になっているのだろうか。
米島氏は、あえて同一の部署に集約することで、1つの事象を複数の専門的な視点から捉え、意見交換しながらアイデアをブラッシュアップし、スピーディーに施策を展開できる体制を構築していると述べる。
10年連続+20%成長の秘訣は「時間を買える」強み
こうした体制と、膨大な顧客データの分析によって、UX改善に努めてきた同社は、10年連続で+20%成長という驚異的な成長を続けている。リピーターが多いうえ、1回あたりの平均購入金額も右肩上がりだという。
興味深いのは、初回注文した顧客の2年目以降の購入単価が増加する傾向にあるという点だ。初回に買った年の10年後、購入金額が倍増する顧客の割合が多いという。長く利用している顧客の比率が高く、かつ長いほど単価が高くなっているのは、優れた顧客体験を提供できている証拠だろう。
「ネジや工具など、現場作業に必要な資材を購入しようとなった場合、まずは営業担当に連絡して、コミュニケーションしながら適した商品を探します。商品が見つかったら価格交渉して、見積もりをとって……とかなり時間がかかるのが当たり前でした。
モノタロウは、必要な商品がすぐに見つけられて、すぐに買えて、すぐ届く。ECサイト上ですべての商品価格を公開しているので、見積もりをとる必要もないですし、企業によって価格が変動することもありません。そうして購入にかかる手間をできる限り排除することで、お客様の時間を守っているんです。モノタロウを使えば、商品だけでなく時間も買えるのが、最大の差別化ポイントですね」(米島氏)