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MarkeZine Day 2021 Spring(AD)

真の顧客中心とは何か? セールスフォース・ドットコムが明かす「今、マーケターが持つべき5つの視点」

 これまでにないスピードで進むDX化に伴い、あらゆるプロセスがデジタル化されている。消費者の購買行動も明らかにこれまでとは異なってきた。この2021年、マーケターが持つべき「新たな視点」とは何か。MarkeZine Day 2021 Springではセールスフォース・ドットコムの熊村剛輔氏が5つのポイントを具体的な実行イメージと共に解説した。

真に求められている「顧客を中心にした体験のデザイン」

 米国を代表する企業マイクロソフトやベライゾンのCEOが口を揃えて、新型コロナウィルスの感染拡大によってDXがこれまでとは段違いの速度で進んでいると発言している。日本においても、デジタル化の加速はマーケターが身を以て体感しているだろう。そして、消費者も新たに手に入れた利便性を手放す可能性は低い。

 つまり、パンデミック前の世界には戻らない。不可逆な変化が起きている。

 米国Best BuyのCEOの語を引いて「今後、購買体験を提供する際には、デジタルファーストメンタリティが求められる」セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)マーケティングクラウド本部 エバンジェリストの熊村剛輔氏は切り出す。

 「これからのカスタマージャーニーは、自宅でデジタルから始まるのです。2020年は私たちの人生で最もネット検索した1年だったと思います。自宅でのデジタル上の接点から、私たちの購買行動が始まっています。そのため、デジタルファーストメンタリティを持たなければなりません」(熊村氏)。

 ではデジタルファーストメンタリティとは何か?その本質は「単なるデジタル化ではなく顧客を中心に体験をデザインすること」だと熊村氏はいう。

デジタルファーストメンタリティの本質
デジタルファーストメンタリティの本質

 顧客視点で考えると、マーケティング、コマース、セールス、サービスのすべてが「顧客体験の一部」でしかない。「マーケティング」「コマース」などと切り分けるのは、あくまでも企業側、体験を提供する側の都合だと熊村氏は強調した。

 「すべてのプロセスが顧客体験の一部である前提に立った上で、顧客接点は顧客体験を伝える窓口だと考えるべきです」(熊村氏)

 そのために、マーケターに求められるキーワードが5つあると熊村氏は語る。それが「聴く」「集める」「話す」「応じる」「見る」だ。

コロナ禍により重要度を増す「ソーシャルリスニング」

 「聴く」とは、顧客の声を聴き、人となり、行動や感情を理解することだ。主な方法はSNS上の声を聴く「ソーシャルリスニング」である。

 米国では、ソーシャルリスニングを重視する動きが急速に進んでいる。そこには企業にとって切実な4つの理由があるという。

 1)消費者が外に出られずface to faceの会話ができず、SNSの利用が明らかに伸びた。

 2)コロナ禍以前のビジネスができなくなり、少しでも多くの情報を集めざるを得ない。

 3)消費者の感情や急な動きをいち早く察知し、それに合わせたメッセージを発信するなど、トレンドにおいて優位性を得るため。

 4)消費者に対して「常に寄り添っています」という姿勢を見せ、エンゲージメントを築くため。

 この状況でセールスフォースが重要視するのは「戦略的なソーシャルリスニング」と「ガバナンスを利かせた投稿管理」の2つだ。

 例えばSalesforce Social StudioといったSNSに特化したツールや機能を使用し、自社・競合・市場・協業先という様々な角度からリスニングし、的確な分析をしながら、部門をまたいだアクションを展開する。一方で、サポートツールや広告系ツールと連動させながら投稿作業をしていく必要があるという。

顧客接点・体験をデジタルだけで考えてはならない

 もちろん「聴く」のはSNSの声だけではない。CRMやデバイスなど様々なデータからも顧客の声を聴く必要がある。

 その観点で重要なものが「集める」だ。顧客に関する様々なデータを集め、マーケティング・ビジネス要件に合わせて細分化していく

 「デジタルマーケティングの歴史は、データ収集と分析の歴史といってもいいかもしれません」と、熊村氏はデータ収集の重要性を説く。

 これまでもマーケターは、顧客の直接的なデータであるCRMから始まり、Web・アプリ等の行動データ、SNS等から導き出せる行動データなどを集め、顧客像を類推してきた。しかし、データの質を考えた時に最も重要なのは、やはり顧客から直接集めるデータだ。

 オンライン・オフライン含めて、ありとあらゆる接点から顧客の動きを理解・把握するデータを集める。それをもとに顧客の期待値を見極めて、期待を上回る体験を提供することが重要だと熊村氏はいう。

期待を上回るためにいかに感情のギャップを生み出すか
期待を上回るためにいかに感情のギャップを生み出すか

 実現するためには「お客様の人となりを把握できるだけの情報を集めているか、ビジネスやマーケティング要件に合わせて細分化できるか、様々なチャネルに合わせて有効活用できているかが問われる」と熊村氏。

 これまでのデジタルマーケティングは、デジタルな接点から顧客データを集め、デジタルな接点からデジタルな体験を提供する取り組みが大半だった。しかし、近年のデジタルマーケティングは、その姿を変え始めている。

 「そもそも体験はデジタルに限りません。デジタルの接点だけでは足りないのです。オンライン・オフライン問わず、最良の体験を提供する。ここが、『お客様を中心にした体験の質』が問われる部分です」(熊村氏)。

 例えばセールスフォースのCustomer 360 Audiencesではすべての顧客データの取得し、セグメント化、アクティブ化する。このように、あらゆるデータを分析し、適切なあらゆるタッチポイントに出力するツールを軸として、顧客中心の体験をデザインすることが求められているのだ。

「適切なメッセージをリアルタイムに」を実現する

 「話す」とは、適切なチャネルを用いて適切なメッセージを届けることだ。

 今、企業自らの情報発信姿勢が問われている。特にコロナ禍中は玉石混交の情報が氾濫し、情報に対する信頼度が低下している。今、企業に求められるのは、「顧客の属性やニーズに合わせたメッセージを、直接、素早く正確に投げかけていくことで信頼を得る」ことだ。

 「デジタル上できちんとした情報を提供できない企業は、お客様のニーズに応えられなくなっているといってもいいかもしれません」と熊村氏は危惧する。

 だが、単純にメッセージを発信すればいいというものではない。実際のオペレーションに落とし込んでコミュニケーションを考え、カスタマージャーニーを設計する必要がある。

 一言で表現すればシンプルだが、「理想のOne to One」のカスタマージャーニーを構築するためには、こなすべきタスクも多い。当然、ツールが必要だ。「Salesforce Marketing Cloudはこの分野を長くリードしてきた実績があります」と熊村氏。

 続く4つ目の「応じる」とは、顧客のリクエストや行動に合わせてリアルタイムに応じることだ。

 顧客体験の質を決定づけるのは「Why・What・Who・Where・When・How」(5W1H)の徹底だ。このうち今、最も重要視されているのが「When(いつ)」だという。

顧客体験の質を決定づける5W1H
顧客体験の質を決定づける5W1H

 「提供のタイミングが『今すぐ』となった時点で、残りの5項目がすべて用意されていなければなりません。これは簡単そうに見えて、非常にハードルが高いです。なぜなら、この5つは異なるシステム上で回っており、それぞれ異なるオペレーションで行われている場合が多いからです」(熊村氏)

 リアルタイムの重要性が高まる時代には、「今すぐ」体験を提供できる体制を整えておく必要がある。

 セールスフォースではInteraction Studioを提供。リアルタイムの人軸かつ時系列のデータ統合を行い、顧客の体験スピードに合わせたセグメント化をしていき、オンライン・オフラインを問わないアクション指示を出すことを実現できるという。

チャネル・オンライン・組織を超えた視点を持っているか?

 5つのポイントのうち「見る」が、最重要項目であると熊村氏は力を込める。これは、一段高い視座からマーケティング業務を見ることだ。

 高い視座を具体的にすると、「Beyond Channels“チャネル”を超えた視点」「Beyond Online“オンライン”を超えた視点」「Beyond Organizations“組織”を超えた視点」の3つある。

 「デジタルだけではデジタルマーケティングはできない」と言い切る熊村氏。これらの視点を持つことができているか、次の項目をマーケターに問いかける。

チャネルを超えた視点

 ・あなたのデジマは特定のチャネルに偏っていませんか?

 ・各チャネルの戦略・オペレーション・担当者・ゴール・KPIがバラバラになっていませんか?

 ・自分の担当していないチャネルがどうなっているか把握していますか?

オンラインを超えた視点

 ・あなたのデジマはオンライン接点だけをつないだカスタマージャーニーになっていませんか?

 ・オフライン上の行動データがデジタル施策にも活用されていますか?

 ・そのデジタル施策はオフライン上のビジネスにきちんと貢献していますか?

組織を超えた視点

 ・あなたのデジマはものすごく狭いスコープになっていませんか?

 ・コマースやサポートが自分たちと関係ないものだと思っていませんか?

 ・組織の都合だけではなく顧客の都合で体験をデザインしていますか?

 これらを問い直し、未達の項目をクリアしていくことで、マーケターの視座は高まっていくのだ。

カスタマージャーニー設計は一直線ではない

 「聴く」「集める」「話す」「応じる」「見る」。5つのキーワードを意識し、すべてのプロセスが顧客体験の一部である前提の上で、顧客中心のカスタマージャーニーを設計すると、その形は一直線に描けないことがわかってくる。

 認知から興味関心・情報収集・比較検討がぐるぐると回り、決定的瞬間を経て購買に至りまだ見ぬ顧客から顧客となる。そして、そこから定着化とLTVの長期化という新たなジャーニーが始まる。この2輪構造を意識することが重要だ。

 「例えばEコマースは購買だけを考えればよかったかもしれません。しかしこれからは前後を見る必要があります。つまり、担当者の境界は消えてきています」(熊村氏)

 1人の顧客に質の高い体験を提供するためには、あらゆる部門・担当者が一丸となって、まだ見ぬ顧客に対して顧客化前のCRMを作成し、セグメント化しながら広告出稿を最適化していき、購買を後押しし、顧客になった後も関係を強化していく必要がある。

 実現のためには、当然一元化された基盤も必要だ。「セールスフォースでは一元化のための手だてが揃っています」と熊村氏は語り、具体的なソリューションを紹介に移った。

あらゆる部門・担当者が協力して顧客体験を設計するために
あらゆる部門・担当者が協力して顧客体験を設計するために

 最後に熊村氏は「デジタルマーケティングをより戦略的に進めていくために、これまでより一段高い視座で臨む必要があります。そのお手伝いをセールスフォースはしていきたい。お困りの際はご相談いただければ」と力強く語り、講演を終えた。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/04/20 12:00 https://markezine.jp/article/detail/35847