真に求められている「顧客を中心にした体験のデザイン」
米国を代表する企業マイクロソフトやベライゾンのCEOが口を揃えて、新型コロナウィルスの感染拡大によってDXがこれまでとは段違いの速度で進んでいると発言している。日本においても、デジタル化の加速はマーケターが身を以て体感しているだろう。そして、消費者も新たに手に入れた利便性を手放す可能性は低い。
つまり、パンデミック前の世界には戻らない。不可逆な変化が起きている。
米国Best BuyのCEOの語を引いて「今後、購買体験を提供する際には、デジタルファーストメンタリティが求められる」とセールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)マーケティングクラウド本部 エバンジェリストの熊村剛輔氏は切り出す。
「これからのカスタマージャーニーは、自宅でデジタルから始まるのです。2020年は私たちの人生で最もネット検索した1年だったと思います。自宅でのデジタル上の接点から、私たちの購買行動が始まっています。そのため、デジタルファーストメンタリティを持たなければなりません」(熊村氏)。
ではデジタルファーストメンタリティとは何か?その本質は「単なるデジタル化ではなく顧客を中心に体験をデザインすること」だと熊村氏はいう。
顧客視点で考えると、マーケティング、コマース、セールス、サービスのすべてが「顧客体験の一部」でしかない。「マーケティング」「コマース」などと切り分けるのは、あくまでも企業側、体験を提供する側の都合だと熊村氏は強調した。
「すべてのプロセスが顧客体験の一部である前提に立った上で、顧客接点は顧客体験を伝える窓口だと考えるべきです」(熊村氏)
そのために、マーケターに求められるキーワードが5つあると熊村氏は語る。それが「聴く」「集める」「話す」「応じる」「見る」だ。
コロナ禍により重要度を増す「ソーシャルリスニング」
「聴く」とは、顧客の声を聴き、人となり、行動や感情を理解することだ。主な方法はSNS上の声を聴く「ソーシャルリスニング」である。
米国では、ソーシャルリスニングを重視する動きが急速に進んでいる。そこには企業にとって切実な4つの理由があるという。
1)消費者が外に出られずface to faceの会話ができず、SNSの利用が明らかに伸びた。
2)コロナ禍以前のビジネスができなくなり、少しでも多くの情報を集めざるを得ない。
3)消費者の感情や急な動きをいち早く察知し、それに合わせたメッセージを発信するなど、トレンドにおいて優位性を得るため。
4)消費者に対して「常に寄り添っています」という姿勢を見せ、エンゲージメントを築くため。
この状況でセールスフォースが重要視するのは「戦略的なソーシャルリスニング」と「ガバナンスを利かせた投稿管理」の2つだ。
例えばSalesforce Social StudioといったSNSに特化したツールや機能を使用し、自社・競合・市場・協業先という様々な角度からリスニングし、的確な分析をしながら、部門をまたいだアクションを展開する。一方で、サポートツールや広告系ツールと連動させながら投稿作業をしていく必要があるという。