インフォームド・コンセント・マネジメントで消費者の同意を得る
強まるCookie規制の動きに対して、企業はどのようなスタンスを取るべきか? 重要なのはインフォームド・コンセント・マネジメントを原則とした考え方である、と三嶋氏は語る。
「インフォームド・コンセント・マネジメント」とは企業が収集したデータの利用可否や、利用範囲について消費者側に説明をした上で同意を得る手法だという。
最近では、2018年に施行された「EU一般データ保護規則」(GDPR: General Data Protection Regulation)などが一例として挙げられる。「プライバシー規制において、ユーザーの個人情報利用には同意が必要である」と義務づけられた件だ。GDPRの施行後、個人情報の利用許可についてポップアップを表示するサイトの数は、飛躍的に増加した。
「当社のクライアント様からは、『Cookie規制への対応について何から始めればいいかわからない』といったご相談を受けます。そのような場合に我々がお話しさせていただくのが『お客様のデータを尊重しながら活用します』という意思表示と、コミュニケーションの重要性です。
まずはお客様の立場に立った上で、データの必要性と利用範囲を明確に説明する必要があります。そもそも自社にとって何故そのデータが必要なのか、という原点に立ち返ってみることが、Cookie規制下におけるデータ活用に必要な考え方だと思います」(三嶋氏)
ファーストパーティデータの重要性と可能性
Cookie規制によってデータ収集の難易度が上がる中、今後益々重視されるのが、ファーストパーティデータ、つまり企業が消費者から直接得た一次情報である。
横大路氏によれば、ファーストパーティデータの可能性として議論されているのが、多角的なデータに基づいたビジネスやマーケティングキャンペーンの多様化だ。
たとえば日本オラクルが提供する広告効果計測ツール「Oracle Moat」では、インプレッションなど従来活用されてきたデータだけではなく、広告上でのマウスの動き方や、モバイル端末上における指の動き方などからユーザーのアテンションを計測し、蓄積できる。
入手するデータポイントが増え、ファーストパーティデータの精度が高まれば、企業の取れる選択肢は増える。詳細なカスタマージャーニーをたどったり、LTVを可視化したりすることが、将来的にできるようになる可能性が高い。そのようにして得たファーストパーティデータは、顧客の体験価値を高める上で非常に有効なのだという。
ECサイト運営においては、ライフステージの変化に寄り添うかたちでレコメンドする商品を変える。そうすれば、生涯を通じて顧客とのコミュニケーションの機会が生まれると三嶋氏は話す。
「お客様に対してより有益なサービスや情報を提供するために、精度の高いファーストパーティデータをできるだけ多く収集するという手法は、Cookie規制後のマーケティングにおける具体的な対応策の一つではないか、と考えています」(三嶋氏)