※本記事は、2021年4月25日刊行の定期誌『MarkeZine』64号に掲載したものです。
アドテク理論に偏るポストCookieを取り巻く情報
2020年以降、日本のデジタルマーケティング話題において「ポストCookie」に関する話題が急増している。ところがその論調は「今後Cookieを使ったターゲティング広告が難しくなるから、企業はどうすべきか」という代替手段や対策に終始している。
これらの情報の大半の語り手は、主に広告予算の受注する側の「大手広告代理店」「アドテク企業」「プラットフォーマー」「パブリッシャー」などだ。彼らが「ポストCookie」という名称を立ち上げ、その対応策を提供して広告受注を維持する我田引水が発信されているに過ぎない。
たとえば、アドテクベンダー各社は「データ・クリーン・ルーム」という新カテゴリーとサービス商品を創出した。米国のThe Trade Deskの「Unified ID 2.0」、LiveRampの「Safe Haven」などがそれにあたる。米国ベンダーの場合は、Googleをはじめとするプラットフォーマーとの相互接続によるターゲティング広告が、これまでと同様の効果と見せるべく、自社商品をアピールしている。さらにはベンダー同士が相互接続してスケール化を狙う、お馴染みの動きも発生している。
上記のベンダー各社の動きの発端は、GoogleがサードパーティーCookieを終了させるとして2019年8月に「Privacy Sandbox」という代替技術を発表した影響が大きい。マーケティング企業はデジタル上での活動の大半をGoogleとFacebookに依存している。そのGoogleは総収益の約93%をターゲティング広告に依存しており、Facebookの事業に至っては約98%の偏り具合である。あらゆる企業のマーケティング活動がこの「2社」に集中していて、なおかつその2社がターゲティング広告事業「1本」に事業集中している状態なのだ。本稿では、この極端なリスク状況から一歩抜け出す思考を促したい。