Googleの米国独禁法訴訟は「勝ち・負け」ではない
2025年4月17日、米国連邦地裁はデジタル広告市場におけるGoogleの独占的地位に対して厳しい判決を提示した。
「Googleが敗訴した」という単純な理解ではなく、具体的にどの項目で“違法”と認定され、どの部分で違法を“免れた”のかを区分し、未来への思考につなげたい。
Googleが違法と認定された点
1.売り手側市場の独占:パブリッシャー向けの広告サーバー市場(旧DoubleClick for Publishers、通称DFP、現Google Ad Managerの一部)と、広告エクスチェンジ市場(AdX、同様にGoogle Ad Managerの一部)で独占的地位を違法に獲得・維持していたと認定された。
Googleは「売り手側(SSP)」「買い手側(DSP)」「取引の仲介(Exchange:AdX)」という広告エコシステムの両翼から中核まですべてを自社で管理する構造を持っている。今回の判決では、特にGoogleの広告売り手顧客である「パブリッシャー側」の収益基盤となる技術領域における独占力が問題視された。
2.タイイング(抱き合わせ販売)の問題:DFPとAdXを技術的・契約的に不当に結び付け、DFP利用者に対しAdXの利用を事実上強制していた=「抱き合わせ販売」に該当すると認定された。これにより競合他社の参入機会が制限され、パブリッシャー側の選択肢が不当に狭められたとされている。
3.反競争的行為の認定:さらに、パブリッシャー側に競争阻害的なポリシーを課し、競合に有利な機能を排除することで、独占的地位を意図的に維持・強化していた点も違法と認定された。
ただ、上記の判決も額面どおりには受け取りにくい。もしGoogleの広告技術スタック、特にDFPとAdXを中核とするGoogle Ad Manager事業の分割・売却が現実となれば、Googleインフラ上での広告収益に依存していた多くのパブリッシャー企業は新たなスタック構築に迫られ、路頭に迷うほどのコストインパクトを受ける可能性がある。Googleを擁護する意図はないが、Googleの主張である「このエコシステムが効果的だから選ばれている」も、一概に否定できない。まさに「Too Big to Fail(大きすぎて潰せない)」という現実が横たわっている。
一方、広告買い手側である広告主向けのネットワーク市場においては、Googleの独占は認定されなかった。「2008 年のDoubleClick買収」や「2011年のAdmeld買収」について、それが結果的に市場支配力強化に寄与したことは認めつつも、当時の買収行為そのものが反競争的であったとは認定されていない。
この議論は、今後注目されるMeta社WhatsApp買収の合法性を巡る論争を理解する上でも予備知識・参考事例となるだろう。