ECでは当たり前のアプローチを、実店舗の顧客にも
Cosmoseは2014年にMironiuk氏が創業し、オフライン小売プラットフォームを展開している。それまで広告エージェンシーに勤務していたというMironiuk氏は、立ち上げのきっかけを次のように振り返る。
「あるジュエリーブランドのマーケティング担当が、”毎日100人が来店するが、購入に至るのは10人。残りの90人とコネクトして、もう一度販売するチャンスが欲しい”と悩んでいました。ECでは来訪者を捉え、リターゲティングも可能ですが、実店舗にはECより多くの人が訪問しているにも関わらず、それが誰なのかさっぱりわからない。こうした悩みは他からも聞かれていました」(Mironiuk氏)。
Amazonなどのオンラインのプラットフォーマーは人々の振る舞いを理解しているが、世界の小売市場に占める比率を考慮すると、オンラインの割合はわずか15%に過ぎない。「もし残り85%を理解することができれば、非常にパワフル。Cosmoseはこれを実現するためのソリューションを提供する」とMironiuk氏は語る。
EC化が進んでいるとはいえ、まだまだオフラインの市場は大きい。世界の小売市場は23兆ドル、日本は1兆4,600億円。日本でのEC化率も遅れをとっている。「新型コロナでオンラインショッピングの流通額が増加したとはいえ、この巨大な市場の15%程度を占めるに過ぎない」とMironiuk氏。「ECが話題にのぼるが、人々はオフラインで買い物をしたいと思っているのが現実だ」と続けた。
現状の把握、将来の予測、配信を備える仕組みとは
それを実現するため、Cosmoseは「Cosmose Analytics」「Cosmose AI」「Cosmose Media」の3つの製品を通じて、分析と配信のターゲティングプラットフォームを構築している。
Cosmose Analyticsは誰が来店したのかを理解できる技術で「Google Analyticsのオフライン版」(Mironiuk氏)。競合と比較したフット・トラフィック(来店トラフィック)もわかり、自社の顧客がどこをよく訪れているのかなどを知ることができる。
Cosmose Analyticsが現状を把握できるツールであるのに対し、Cosmose AIは将来の予測を行うものだ。同社のAI技術「Cosmose Brain」を利用して人々が何に関心を持っているのか、誰が特定のストアを訪問するのか、誰にキャンペーンを送るべきかなどの予測を行う。
Cosmose Mediaは、オフラインの(潜在)顧客にオンラインの広告を展開するための技術だ。「Google広告」と同じようなもので、FacebookやInstagram、Googleなどとつなぎこんで配信できる。たとえばあるファストファッションが新たに店舗をオープンするとなったとき、Cosmoseに場所データを提供することで、同じ地区にある競合のファストファッションを訪問するユーザーや近くを通りかかったユーザーなどに対してソーシャルメディアにつなぎこみをして告知できる。また、訪問したが購入しなかったユーザー、前を通りかかったが別のショップに行ったユーザーなどに対して、オファーをするなどのこともできるという。まさに、オンラインで当たり前にできていたリターゲティングが、オフラインでもできるというわけだ。
ソリューションはすべてソフトウェアベースであり、カメラなどのハードウェアは一切不要でビーコンも使わない。すでにCosmoseは40万以上のアプリとの提携しており、11億台以上のスマートフォン、3億6,000万件の物理ストアのエコシステムを持つ。コンシューマーは何か特別なアクションをすることなくCosmoseのメリットを得られるという。
加えて、1.6メートルという位置情報の精度の高さも特徴だ。予測の精度としては、ビューティーカテゴリでは、いつ、誰が、どこでショッピングするのかの精度は73%を誇るという。