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動画制作未経験でもCPAを4分の1に削減!ベネッセが取り組む動画制作のインハウス化に直撃

 コロナ禍のマーケティングにおいて、ユーザーとコミュニケーションを図る手段として動画を活用する企業が増えている。動画で成果を出すために、より“低コスト”で効果的な動画を“量産”することが求められる今注目されるのが、動画クリエイティブのインハウス化だ。ベネッセコーポレーションは動画の内製に舵を切ったが、驚くことにチーム内全員が制作未経験だったという。それでも内製化を実現できたポイントはどこにあったのか、プロジェクトを推進した同社の上野淳次氏に話をうかがった。

インハウスの目的はファーストパーティーデータの利活用

――動画クリエイティブの制作のインハウス化を決めたきっかけは何だったのでしょうか。

上野:動画クリエイティブ制作のインハウス化以前に、当事業部では広告運用のインハウス化に取り組んでいました。

 DXを推進していく上で、自社で保有する顧客のファーストパーティーデータの利活用を見据えたものでした。まずは事業ごとに分断されていたデータを蓄積した統合DMPおよびマーケティング基盤の構築が概ねできたものの、そのデータは社外に出せないので、外部への委託ができません。

 そこで2018年に広告運用のインハウスチームを立ち上げ、社内の多くの案件を運用するようになりました。

 我々としてもインハウス運用の効果・効率をさらに上げるための方法を模索する中で、もっとクリエイティブをリッチなものにできないかと思いはじめていました。そうなると広告運用と共にクリエイティブ制作も内製化する必要が出てきます。

 しかしクリエイティブ制作をお願いできるメンバーがおらず、インハウスチームで制作できる方法を探していたときに、ふとリチカの広告に目が留まり、興味を持ちました。

株式会社ベネッセコーポレーション
Kids&Family カンパニー デジタルビジネス開発部 上野 淳次氏

ユーザーのニーズがよく考えられたサービス設計

――最近では動画クラウドサービスの数も増えている中で、リチカのマーケティング動画クラウドサービス「リチカ クラウドスタジオ」を選んだ理由を聞かせてください。

上野:提案時の安心感など、いくつかポイントはありますが、一番はクリエイティブ制作のインハウス化に最も適したツールだと感じたからです。当時複数のツールを試してみましたが、自由度が高いものだと動画制作未経験の自分たちには使いこなすのが難しく、制作の標準化や、様々な部署への展開が難しいと感じました。

 一方で「リチカ クラウドスタジオ」は、独自に開発されている動画フォーマットにより、素材とテキストを入れれば動画が制作できるため、素人でも一定以上の質を保ったクリエイティブが作れる設計になっていると感じました。

上野:また、制作した動画の著作権が導入側になる設計もありがたかったです。我々はメディア事業を展開しており、他のクライアントに制作物を譲渡することもあるので。使い手のことがよく理解されたツールだと感動したことを覚えています。

インハウス化を進めるにあたり、直面した2つの壁

――クリエイティブのインハウス化をどうやって進めてきたのか、具体的に取り組まれた内容を教えていただけますか。

上野:まずはクリエイティブ制作の内製化のために、社内のクリエイティブ運用体制を見直しました。

 弊社では従来からブランディングを重視しており、ブランド管理を行う体制が整っていましたが、旧来のマス広告の審査フローに基づいたものでした。そのためパフォーマンス重視のスピーディーな広告PDCAを回していくための、運用型広告の量産クリエイティブを素早く承認していくための簡易的なクリエイティブ審査フローがなく数週間かかることもありました。広報・ブランド課は既存の体制の中で最大限スピーディーに対応してくれていましたが、インハウスでの運用に必要なクリエイティブの量産・PDCAのスピード感を担保するためには、新しい体制の構築が必要でした。

 先ほどの課題を数ヵ月かけてようやくクリアにしたと思ったら、今度は各事業部との広告運用視点のすり合わせという新たな課題に直面しました。クリエイティブを作るとき、我々はパフォーマンスに重きを置きがちですが、事業部側はブランドの見せ方にこだわりたいという違いがありました。マス向けブランディングとパフォーマンス広告のクリエイティブの視点を擦り合わせ、目線を合わせてクリエイティブのPDCAをスピーディーに進めていくために、パフォーマンスとブランド目線のバランスを調整してインハウスでのクリエイティブ・運用を実現するのに苦労しました。

リチカのフレームワークで、組織内の意思統一をすることに成功

――インハウス化の課題に直面した状況の中、どのように解決したのでしょうか。

上野:こうした状況を打ち破ってくれたのが、リチカ様が数多くの動画クリエイティブを制作してきた実績をもとに作成したフレームワーク「AIBAC(アイバック)」でした。

 クリエイティブを検証して改善するべきものさしが得られたことで、社内に共通言語ができました。その結果、共通言語を軸としたクリエイティブ設計・制作が可能になりました。

クリック/タップで拡大
AIBAC(アイバック) クリック/タップで拡大

上野:ここまでで約半年かかってしまったものの、運用を開始してからはいくつかの案件で試しに作って運用してみることができました。そのクリエイティブの成果を各事業部に共有し、「使ってみたい」という声を少しずつ拾いながら、約1年間かけて現場全体で使ってもらえるような土壌を整えていきました。

制作する動画は広告で使うものが中心ですが、使っていくうちに活用の幅は広がり、社内の考え方も変化していきました。導入前はクリエイティブ制作をインハウスで行うことで、広告運用を効率化することをメインで考えていましたが、今はDX推進の機会として動画を中心に何ができるのかを探していくフェーズに移ってきたと思っています。

――「リチカ クラウドスタジオ」導入企業にはリチカのカスタマーサクセスがつくそうですが、どのようなサポートがあったのでしょうか。

上野:定例ミーティングにて、広告PDCAの伴走や、他社事例の共有や成功ナレッジの共有などをしていただきました。

 取り組むうちに複数の事業部が連携し、関係者から出てくるアイデアの数も増えました。問題点が発生すればカスタマーサクセスの方が細やかにくみ取ってくださり、できることを考えてくださいました。動画領域に限らずご提案をいただくこともあり、手厚いサポートが受けられているので信頼を寄せています。

動画広告でCPAが4分の1になった理由

――インハウスでのクリエイティブ制作を開始してから、現場ではどのような効果や成果、変化があらわれましたか。

上野:コストパフォーマンスが非常に向上したという話は、各現場から挙がっています。今までは外注で1本につき数万円から高いものでは数十万円単位で発注していたものが、社内でスピーディーに量産できるようになったためです。

 たとえば、現在はKids&Family事業部の「たまごクラブ」「ひよこクラブ」「いぬのきもち」などのメディアだけでなく、「こどもチャレンジ」「進研ゼミ」などでも使い始めているのですが、そこで使う動画というのは、お子様の年齢によってまったく違うキャンペーンが動くので1つずつ個別に作る必要があります。

 外部に依頼していたときは、動画の数だけ時間もコストもかかっていましたが、社内で内製化後は、内容が異なってもフォーマットがあれば素早く量産でき、費用がかさむこともないので、担当者から非常に喜ばれました。

 外注することもありますが、その場合も「リチカ クラウドスタジオ」で制作した動画が役立つ機会が増えているそうです。

 「こんなイメージで作って欲しい」と伝える絵コンテ代わりのイメージですね。それをつくるのが結構な作業だったそうですが、簡単に制作できるようになり、業務を進めやすくなったとの声を聞いています。

 あとは、PDCAの回し方も以前とは随分変わりました。これもリチカ様から教えていただいたやり方ですが、メッセージの文言を変更したパターンをいくつか作ったり、ある程度勝ちパターンが決まってきたら色味を変えたりと、少しずつポイントを絞ってPDCAを回していく方法が非常に合っていると思っています。

上野:私自身で「AIBAC」のフォーマットに沿って愚直に動画を制作したところ、CPAが4分の1程度になった例がありました。顧客のデータ利活用ですでにある程度CPAが下がっていたにもかかわらず、さらに下がったので大変驚きましたし、まだ数本しか制作経験がない上での成果だったのでその点も合わせて驚かされました。

動画を活用した、新しいビジネスアイデアの実現を目指す

――ちなみに動画の制作本数は、導入前と導入後でどのぐらい差がつきましたか。

上野:正式にリリースしていないものを含めると、月4本ぐらいだったのが月50本ぐらいまで制作できるようになりました。「動画1本を5分で作れます」というメンバーも出てきました。今後RICHKAを利用できるメンバーが増えることで、まだまだ制作を増やせるようになっていけると思います。

――動画のインハウス化を進めていく中で、新たに気づいた課題や問題点はありますか。

上野:今まで外注文化だったこともあって、各事業の現場の担当者たちが内製して使ってみるまでのハードルは想像以上に高かったと感じています。

 しかし、その一歩を踏み出してすでに内製に取り組んでいる事業部では、アイデアがどんどん生まれてきて、リテラシーも急速に高まっています。サポート部門として、「現場の事業担当者との二人三脚」を組める体制作りというのは、これからの課題だと考えています。

――最後に今後の展望について、現在のお考えをお話しください。

上野:社内で動画制作に対するリテラシーが高まってくると、動画を使って「もっとこんなこともできるんじゃないか」という話が出てくるようになります。

 動画広告の枠を超え、お客様とのコミュニケーションにて動画を活用することでより深い顧客体験を届けるアイデアなどが挙がっています。まだアイデアベースですが、事業部から新しい発想が生まれるような望ましい状態ができつつあるので、今後はその雰囲気は大事に維持しつつ、1つひとつのアイデアを実現していく手助けをしていきたいと考えています。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/07/08 11:00 https://markezine.jp/article/detail/36310