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消費者調査からひもとく生活の変化

情報収集はもう時代遅れ?「調べたくない」消費者の実態と、これからの情報提供の在り方を考える

生活現場で起きている「変化」に注目し、15年間で約1万人の消費者心理を分析してきた犬飼江梨子氏が消費者調査で得たデータを元に解説する本連載。第2回はデジタル化が進み情報量が増える現在、「情報への接し方」の変化を考えます。

あふれる情報の中にいる消費者

 とある調査の報告会で、メーカーの方からこんな質問を投げかけられました。

 「これからメーカー側の情報発信はどうなっていくと思いますか?例えば、公式サイトはより重要になっていくのでしょうか、それとも廃れていくのでしょうか。今後の在り方について、どう考えていますか?」

 私は次のように答えました。

 「公式サイトは、今後見られなくなっていく可能性があります。在り方は状況にあわせてアップデートしていく必要があるのではないでしょうか」

 私がこのように答えた理由は、消費者の情報収集に変化が起きていると感じたからです。

 インターネットの進化と共に、人々は多くの情報に触れることが可能となりました。しかし、得られる情報が多くなると、その中から取捨選択をする必要が出てきます。情報が多くなればなるほど、取捨選択に時間や手間がかかるため、今、Z世代を中心に「調べたくない」消費者が増えてきていると感じています。

 そこで今回は、「調べない」消費者の実態をひもとき、どんな変化が起きているのかをデータに基づいて分析することで、2021年現在の情報収集の在り方とこれからの情報発信について考えていきたいと思います。

2つの情報収集タイプ

 インターネットが発明され、SNSが浸透し、情報の量は以前と比べると何百倍にも膨れ上がりました。そして、多すぎる情報を前に消費者の行動に変化が生まれました。前述の通り「情報を自分で調べなくなっている」のです。

 以前は自分で時間をかけて探していた情報も、媒体側が履歴情報などから各個人に合わせて、「お勧め」するようになっていることが背景にあげられます。しかし、この「お勧め」の情報は、ジャンルやシステムを導入している媒体が限定的なこともあり偏っています。お勧めでは表示されない情報については、引き続き自分で検索されていくことでしょう。

 つまり、情報の取得方法は、「自分で探す」と「お勧めを見て出会う」の2つのタイプに分かれていくといえます。

 具体的には、「自分で探す」は検索サイトにキーワードを入れて調べ、そこで出てきた口コミサイトやまとめサイト、公式サイトを見ていくことが代表的です。他にもSNSでのタグ検索や、ECサイトでの商品検索等があげられます。

 「お勧めを見て出会う」は、WEBサイトのバナー広告、SNSのタイムライン・ウォール・ストーリー、Instagramの検索画面やYouTubeのトップ画面に出てくるお勧め、ECサイトのレコメンド等から情報を取得することがあげられます。

 ここからは、現在、消費者がどのようにして情報収集をしているのか、その実態をデータと共に見ていきたいと思います。本稿を執筆するにあたり、全国1,003名を対象に「インターネットを使った情報収集」に関する調査を行いました。概要は以下の通りです。

インターネットにおける情報収集の実態把握調査
  • 調査方法:webアンケート調査
  • 調査期間:2021年6月24日~25日
  • 対象者条件:全国15‐69歳の男女、インターネットで情報収集をする人
  • 有効回答数:1,003サンプル
  • 調査主体:株式会社イー・クオーレ

「お勧めを見て出会う」に慣れてきた若年層

 以下のグラフはインターネットで情報を得る際に、月に1回以上、視聴・利用することがあるものについて選んでもらい、その回答を世代別に表したものです。

ネットで情報を得る際に、月に1回以上、視聴・利用することがあるもの(クリックで拡大)
ネットで情報を得る際に、月に1回以上、視聴・利用することがあるもの(クリックで拡大)

ジェネレーションZ:1997‐2012年生まれ(15-24歳)
ジェネレーションY:1981‐1996年生まれ(25-40歳)
ジェネレーションX:1965‐1980年生まれ(41-56歳)
ベビーブーマー:1946‐1964年生まれ(57歳以上)

 詳しく見てみると、「検索サイト」「公式HP」はベビーブーマーとX世代、「口コミサイト」「まとめサイト」はY世代、「SNSのタイムライン/ウォール/ストーリー」「SNSに出てくるお勧め」「SNSに出てくる広告」「YouTubeのお勧めにあがる動画」はZ世代の割合が高くなっていることが分かります。

 【お勧めを見て出会う】タイプの情報収集といえる、「SNSのタイムライン/ウォール/ストーリー」「SNSに出てくるお勧め」「SNSに出てくる広告」「YouTubeのお勧めにあがる動画」において、最も割合が高かったのはZ世代であり、それぞれ、39.2%、23.9%、25.9%、45.3%となりました。また、次いで高かったのはY世代で、それぞれ、29.9%、16.8%、17.4%、29.6%となっています。

 それに比べ、ベビーブーマーではそれぞれ、13.5%、6.6%、8.4%、27%にとどまりました。

 上記から、【お勧めを見て出会う】行為は若年層を中心に増えており、年代が上がるにつれて浸透度が下がっていくことが分かります。

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この記事の著者

犬飼江梨子(イヌカイ エリコ)

消費者心理分析専門家 マーケティングリサーチ会社 (株)イー・クオーレ代表取締役
15年間で約1万人の消費者心理を分析。「顧客が真に求めるニーズを見つけ出し、それを解決する方法を考える」ための調査に定評がある。消費者の変化に注目し、新商品開発のための調査や商品リニューアルのための調査を多数実施し、売れる商品を作るため...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/07/14 09:00 https://markezine.jp/article/detail/36719

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