ユニリーバのマーケターからラフラ・ジャパンの経営者へ
私はユニリーバ・ジャパンで消費財のマーケティングを担当した後、スキンケアの複数のブランドを持ち、2019年にユニリーバのグループ会社となったラフラ・ジャパン株式会社の経営に携わり、この7月から同社のCEOに就任しました。本連載ではこれまで、D2Cブランドを成長させる方法を様々な角度で検討してきましたが、本稿ではラフラ・ジャパンとユニリーバの事例をご紹介しながら、
グループ化の背景にあった両社のニーズ
まずはラフラ・ジャパンとユニリーバそれぞれの状況を説明するとともに、グループ化の背景にあった両社のニーズについてお話しします。ラフラ・ジャパンは設立以来、高品質な製品開発と明確なポジショニング戦略を基に、真摯なブランディングを行ってきた日本発の企業です。TUNEMAKERSや、RAFRAといったスキンケアブランドに加えて、PROUDMENという男性化粧品のブランドを有しており、中国をはじめとするグローバル市場にも展開されています。
一方ユニリーバは、これまでヘアケアカテゴリーをビジネスの主戦場としてきましたが、近年はスキンケアカテゴリーにも注力するようになっています。たとえばダーマロジカ(Dermalogica)やレン(REN)といったスキンケアブランドを傘下に入れ、欧米を中心に展開しています。今年6月には、米国で非常に歴史の長いD2Cスキンケアブランドであるポーラチョイス(PAULA'S CHOICE)の買収を発表し、話題になりました。これ以外にもビューティー系のブランドを、毎年複数大型買収しています。
スキンケアカテゴリーはより市場規模が大きく、また利益率も高いと言われており、P&Gやロレアル、また日系企業である資生堂といった企業も、有名ブランドを展開しています。加えて近年は、複数の化粧品ブランドを持っている企業が、スキンケア、特にプレミアム(高級路線)カテゴリーに特に力を入れる動きが見られます。ユニリーバも、2017年には韓国で展開するスキンケアブランドであるカーバー コリア(CARVER KOREA)を買収しました。
つまり、ラフラ・ジャパンはユニリーバが持つグローバルでのビジネスのノウハウを活用することで、ブランドのグローバル化をさらに加速させる。一方ユニリーバは、スキンケアカテゴリーを強化する。両社のニーズが一致したことで、今回の買収・グループ化が成立しました。
なお、ユニリーバが数あるブランドの中からラフラ・ジャパンに着目した理由は、スキンケア市場の中でも、世界でトップ3の大きな市場である中国と日本において、ブランドを力強く、また堅実に成長させてきたからです。グループ化の具体的なプロセスについては、私は関わっていないので、詳細は把握しておりませんが、中国で伸びているスキンケアブランドを展開する日本企業はそれほど多くはなく、自然と候補になったようです。
D2Cブランドの先駆けとも言えるラフラ・ジャパン
もう少し、ラフラ・ジャパンについて紹介させてください。ラフラ・ジャパンは1999年に、現代表取締役会長兼ファウンダーの松岡 潤によって設立されました。20年以上前ですので、当時D2Cという概念はありませんでしたが、昨今のD2Cブランドのように、ブランドの世界観や、コンセプトをゼロから考え、そのコンセプトに基づいた製品を、OEMと共に開発してきた企業です。
他の企業との大きな違いを挙げると、(1)複数のブランドを保有した明確なポートフォリオ戦略があること、(2)バラエティストアを主戦場としたオフラインビジネスが強いこと、(3)中国市場を中心としたグローバルでシェアを拡大してきたこと、の3つのポイントがあります。(3)については、少し詳細に触れていきます。