1. ユーザーとの対話を怠らない
1点目は、ユーザーとの対話を怠らないことです。D2C事業者の多くはデジタルドリブンでマーケティングをやってきていると思いますが、そうすると、CTRやCVRといった指標にどうしても目がいきがちです。また、プラットフォームの影響や商品サイクルやトレンドの変化が早いため、モノづくりではなく広告の手法にばかり注目してしまいがちです。たとえば、「最近はFacebook広告の表示単価があがったので、Twitter広告にシフトしよう」といったことです。
デジタルマーケティングをやる以上、割り切る部分も必要ですが、デジタル上で売っている商品が、消費者のどういうインサイトに向けて、どういう悩みを解決するものなのかを常に考えていく必要があります。デジタル上での販売となると、消費者の声を意外と拾えていないことも多いので、常にユーザーの声を拾い、対話することを怠らず、ブランドの本質と向き合っていくとよいでしょう。
2. 売り方を見直し続ける
2点目は、ユーザーが一番使い続けやすい売り方を考えるということです。D2Cビジネスは定期通販というビジネスモデルを採用することが多いですが、定期通販のみを追いかけていると、ユーザー数の限界が来てしまう可能性が高いと思います。
定期での売上を獲得することは、当然、客単価が増え、売上の向上に直結します。ですが、それをデジタルマーケティングの仕組みで誘導するのではなく、ユーザーが製品の世界観や製品の品質に心から納得してリピートしたい、と思ってもらう。そのうえで、リピートする手段として定期を提案する。これが本質的に消費者のことを考えているやり方ではないかと思います。
たとえばとても高単価な化粧品であり、「毎日は使わないけれど、気分をあげたい日や大事な日に使う」という使用パターンをしている方にとって、定期通販は良い売り方ではないかもしれません。「定期だと安く買えるから、一旦これで買っておいて、後でキャンセルしよう」という考えでユーザーが製品をオーダーしていたとすると、ブランドとユーザーに考えのギャップが生まれてしまっています。
もし、ブランドが定期購入を押しつけず「是非一度使ってみてほしい」というスタンスで消費者と関わろうとするなら、一度ブランドから離れて違う商品を使った消費者が「やっぱりこの商品がいい」と戻ってくることもあると思います。一方、最初から定期で購入し離脱した場合、再度商品を使ってみようと思う機会は少ないのではないでしょうか。まずはトライアルしていただき、「商品に満足している」「必要な時に届けてほしい」と心から感じていただいてから定期購買をおすすめするほうが、ずっと良いはずです。そしてそのようなロイヤリティを得られることほど、ブランドにとって嬉しいことはありません。
3. 広告手法を見直し続ける
3点目は広告手法についての検討です。D2Cのブランドの多くは、デジタル広告、そのなかでも獲得単価が安いデジタル広告チャネルに寄りがちです。
しかし、プロダクトの良さや世界観を伝え、長く残るブランドを作るうえでは、広告チャネルのハックだけでは生き残れません。たとえば、屋外広告だけを使ってみてもCPAは合わないかもしれませんが、デジタルチャネルと組み合わせると、投資対効果が合ってくることもあります。これはあくまで一例ですが、全体の広告設計は、カスタマージャーニーを考えつつ緻密な計画が求められます。勘でやっているか、計算してやっているかでブランドの成長は全然変わってきます。勘でやっている人と、緻密に考えている人とでは話す内容が全然違うのでわかります。とは言え、勘でやっていてもマーケター自身が商品のターゲットユーザーであり、センスにあふれていると成功することもあるので、どちらでやるかは企業の方針次第です。

まだまだ偉そうに言える立場ではありませんが、皆様がご担当されているブランドの成長に、お役に立てれば幸いです。