ユーザーにID移行を促すことでデータをアップデート
第一の活用メリットは「バラバラな顧客IDとデータの統合」だ。たとえば、メディアやサービスごとにユーザーから情報を登録してもらい、個別に情報を管理している企業があるとする。企業側の管理には多大な手間がかかり、いざIDを連携しようと思っても、どのデータをどこに紐付けるべきかわからない上、そもそも複数回にわたる情報登録はユーザーの利便性を損なっていると嶋田氏は指摘する。
このようなシーンにおいては、CDCで「名寄せ」を行うことが有効だという。あらかじめ各サービスサイトの登録時に許諾を得ているユーザーを対象に、メールアドレスなどに基づいて名寄せを実行し、CIAMに移行するという方法だ。こうすれば、オウンドメディアの登録ユーザーが新たにECや他のサービスを利用する場合は、それぞれの利用規約を確認するだけで済むため、ユーザーの負担を最小限に留めることができると嶋田氏は解説する。
嶋田氏は名寄せ以外にも、ユーザー自身にIDを移行してもらう方法を紹介。各サイトにログインできる新たなIDを付与し、「これに再登録すれば、すべてのサービスを利用できます」と案内するか、新IDへの登録でポイントを付与するという施策も1つの手だと述べる。
「後者の場合、ユーザーが自分で情報を新IDに紐付けるため、最新のデータにアップデートできるという利点があります。仮に移行しないユーザーがいても、アクティブではないユーザー情報をその時点で廃棄できるので、有効なデータのみが集まるわけです」(嶋田氏)
データ収集のポイントは「入力項目の簡素化」
さらにCDCでは「Open ID Connect」を使ったFederation機能により、子会社/グループ会社が管理している顧客IDをソーシャルIDのように紐付けて連携し、バックエンドのデータ基盤に統合することができるという。このため、より広範なデータの管理・活用が行えると嶋田氏は紹介する。
第二の活用メリットは「あらゆるタイミングでのデータ収集」だ。収集の基本的な考え方としては「恒常的なログイン状態」と「段階的なデータ取得」の2つがあるという。
WebブラウザにおいてCookieの活用が制限されるようになったため、「ユーザー行動を把握するためには、常にログインしておいてもらう必要がある」と嶋田氏。そこで企業は、登録・ログインのしやすさにこだわるべきだと強調する。初期登録時の入力項目をメールアドレスとパスワードだけにしたり、ソーシャルログイン機能を採用したりすることが効果的だと語った。
また段階的なデータ取得においても「登録時に根掘り葉掘り情報を聞かないこと」がポイントだと嶋田氏は続ける。登録時の負担はユーザー離反につながるリスクが高い上、一度登録した情報が更新されることはめったにないため、情報が古くなってしまうからだと理由を述べた。