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withコロナ時代の接客を考える

全国のデパート約300カウンターで一斉にWebカウンセリングを可能にした資生堂、取り組みの裏側


 2020年の緊急事態宣言でリアル店舗は売り場を強制的に閉めざるを得なくなった。その時、企業はどう動いたのだろうか?「爆速オムニ化」を掲げ対応した資生堂ジャパンの松浦大海氏と、Web予約システムなどを提供するヘイのVPoP倉岡寛氏に聞いた。

加速する店舗のデジタル化、その最前線

MZ:まずはお二人のミッションをうかがえますか?

松浦:弊社の企業ミッションは「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」です。非常に噛み砕いて言えば、「美を通じて一人でも多くの方に笑顔になってもらいたい、ハッピーになってもらいたい」。これを全社員が目指しています。

 その中で私は百貨店事業に属し、クレ・ド・ポー ボーテの関東甲信越エリアの営業責任者を務めると同時に、全国の百貨店様のカウンターを横断したオムニチャネル・デジタル関連全体の総括を務めています。

資生堂ジャパン株式会社 プレステージブランド事業本部 ブランド営業本部 Clé de Peau Beauté 営業統括部 営業統括部長 松浦大海氏
資生堂ジャパン株式会社 プレステージブランド事業本部 ブランド営業本部 Clé de Peau Beauté 営業統括部 営業統括部長 松浦大海氏

  ここでのオムニチャネル・デジタルは特にECやLive、Webカウンセリング、SNSといった活動を指します。あくまで、百貨店様における売上を高めて愛用者を増やしていくことがメインです。また、弊社のオウンドECのプラットフォームである「ワタシプラス」とは事業体が別ですが、こちらと百貨店のデジタルでの橋渡しも担当しています。

倉岡:弊社はネットショップを簡単に作れる「STORES」や、お店にキャッシュレス決済を導入できる「STORES 決済」、お店のネット予約管理の「STORES 予約」など、事業のオーナーや事業会社がビジネスに集中するために、周辺の業務をすべてデジタルで解決するサービスを提供しています。私自身は「STORES 予約」の前身である「Coubic」を立ち上げ、2020年にヘイとのグループ化を経て2021年にヘイに統合し、現在は全プロダクトの事業責任者を努めています。

MZ:コロナ禍によってリアル接点が強制的に閉じた際、倉岡さんから見て、事業者にどのような変化が見られましたか?

倉岡:STORES 予約 (旧 Coubic)を利用するオーナー様がリアルを主軸に事業を展開している場合が多いので、正直な話をすると、緊急事態宣言が出たら私達の事業自体にも影響が出ると予想していました。しかし、いざ緊急事態宣言下に入るとオンラインに活路を見出そうとする事業者さんが多く、問い合わせが急増しました。

ヘイ株式会社 VP of Product 倉岡寛氏
ヘイ株式会社 VP of Product 倉岡寛氏

MZ:資生堂さんもリアルの接点に制限が加わった事業者ですね。従来計画されていた取り組みと、急遽とることになった路線の両方があったかと思います。その両軸をいかにバランスさせてきたのでしょうか?

松浦:大きな方針には変更がないと捉えています。コロナ禍前から、変化するお客様の生活様式に合わせて、いつでも・どこでもお客様が欲しい時に我々のブランドと出会えて、楽しいお化粧体験をお届けすることをずっと突き詰めてきました。コロナで大きく変わった点はスピード感が圧倒的に早まったことに尽きると思います。

 あらゆる計画、もしくは見えてなかったものを可視化し、前倒しで実施しています。それが思っていた以上に早く進んでいる印象です。また、加速度的にスピードが上がったぶん、失敗も出てきますが「そういうものだよね」と許容し、失敗から学んで次の一手を考える姿勢が強くなりました。

顧客を中心に据えると打ち手が見える

MZ:組織全体でスピードを出すために工夫されたことはあるのでしょうか?

松浦:工夫ではないですが、常にお客様を起点にしています。お客様の考え方や行動がどのように変化をしているのかを考えています。

 百貨店にいらっしゃるお客様は、ビューティーコンサルタント(以下、BC)にカウンセリングやタッチアップをしてもらいたい・対話をしたいというニーズが強いです。BCに会いに行くという感覚もあり、BCという存在が資生堂の強みであり、お客様の購買行動の中心にありました。

 カウンターの閉鎖やタッチアップ禁止によってBCとお客様とのコミュニケーションが不可能になりました。百貨店を利用されるお客様もご自身でネットや雑誌で調べたり、ECで購入したりされますが、どうしても化粧体験の満足度は低下しがちです。そのままでは、お客様が離れてしまいます。

 ですから、百貨店に来ることが難しくなったお客様のお困りごとにどう応えていくか?を考えることで打ち手を明確化しました。全国292ヵ所(当時)にある百貨店の美容カウンターでBCが対応する「Webカウンセリング」の実施を企画し、2ヵ月弱で実現したのが一例です。

 短期間で実施ができた背景には、コロナ以前にも顧客接点作りのために様々な施策を行い、Webカウンセリングも何度かトライアルしていたことがあります。ツール選定についても、過去の利用経験があったのですぐに STORES 予約 さんへお問い合わせできました。

倉岡:私達の印象としても、大手企業の対応スピードは非常に速かった印象があります。以前から商談を続けていた事業者様が緊急事態宣言の直後に、経営層を含めたオンラインミーティグをセッティングされるケースもありました。元々、ビジョンを持っていた企業の場合は早々に「やる」と覚悟を決めたのかもしれません。その中でも、全国規模での新サービスの導入スピードは資生堂さんが群を抜いていました。

松浦:経営層や現場での危機意識が強かったことも背景にあります。これまでとは違う戦い方、活動をしなければいけない。でも、答えは誰もわからない。だから、やってみようという雰囲気でした。

 また「爆速オムニ化」をスローガンにして、目的やゴールとともに何度も伝えて意識改革を促しました。特にBCは店頭をベースにした技術力とカウンセリング力を磨いてキャリアを築いてきた方々です。急にWebカウンセリングと言われても困ってしまいます。また、すぐに売上につながるものでもありませんから、「これって本当に今やるべきことなの?」といった声も上がりました。将来的に店頭への再来店につながると少し先の未来を伝えて進めました。

 これらを上長である本部長が強く背中を押してくれましたし、営業美容の関係者が一体となって活動をリードしてくれました、全員の根本にある、私たちのブランドで一人でも多くの生活者に美を届けたい、楽しんでいただきたいという想いがスピード感に繋がりました。

倉岡:それでもツールを導入する際は段階的に運用を広げる例がほとんどです。弊社でも、資生堂さんのように全国で同時に導入するのは非常に珍しいケース。何か狙いがあったのですか?

松浦:全国のカウンターで同時にサービスを開始することにこだわりました。私達は百貨店様と一緒にブランドを育てています。カウンターにいらっしゃるお客様は各百貨店のお客様でもありますから、全国の店舗とBCとお客様が紐付くようなサービスを実現したいと考えました。

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。2013年までは書籍の編集をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/18 11:29 https://markezine.jp/article/detail/37660

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