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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

withコロナ時代の接客を考える

全国のデパート約300カウンターで一斉にWebカウンセリングを可能にした資生堂、取り組みの裏側


偶然の出会いをどれだけ増やせるか

MZ:先程、コスメカウンターはBCに会いに行く場所とおっしゃっていました。それをWebカウンセリングで行うとして、ブランド体験の維持は可能なのでしょうか?

松浦:既存のブランド体験は今のコロナ禍ではやっぱり維持できないです。これはもう、認めざるを得ません。一方で、お客様の購買行動は本当に多様であり、お一人おひとりに満足していただける引き出しをたくさん準備しておくことで、これまでとは一味違うブランド体験を楽しんでいただくことも可能です。

 例えば、クレ・ド・ポー ボーテカウンターはスマートラディアンスミラーという非接触機器で肌測定とバーチャルメイクを店頭でお試しできるようにしています。SHISEIDOのカウンターでは、Beauty Alive Circulation Checkという非接触で肌内部の血流のめぐりまで測定できるツールをご用意しています。

左:スマートラディアンスミラー、右:Beauty Alive Circulation Check
左:スマートラディアンスミラー、右:Beauty Alive Circulation Check

 他にも、電話応対も一つの手法です。先進的な機器よりも電話でカウンセリングを受けたいというお声もあります。また、SNS上でこれまで以上に積極的な情報発信も行っています。

 ブランドとお客様のコンタクトポイントをたくさん用意して、お客様が自由に引き出せ、私達もそれをお客様お一人おひとりに合わせてご紹介する。ある意味、デジタルの力も活用して“偶然の出会い”を能動的に創出し、その偶然の出会いをBCが“必然”に変えていく。ひいては、百貨店様、ブランドの長期愛用者になっていただく。Webカウンセリングも引き出しの一つという認識で取り組んでいます。

ITとマインドの問題を解消する

MZ:現場ではWebカウンセリングのためにどういった教育を受けているのですか?

松浦:まずはシステムに慣れてもらいました。とはいえ、ツールを使えるか・デジタルで接客できるかよりも、回線トラブルなどの通信トラブルに対しての不安のほうがBCにとっては大きかったように感じます。こちらは、ローンチからしばらくは STORES 予約 の担当者様にご支援いただくとともに、社内のサポート部にも体制を設けることでクリアしました。

倉岡:ツール導入は我々IT会社でも、自社に新しいものを入れる時は大変です。今まで慣れている業務オペレーションをガラッと変えるとなるとストレスが大きい。導入側の強い覚悟と巻き込み力が必要ですよね。私達もお客様の課題に向き合っていますが、どれだけツール提供側と導入側が二人三脚でやっていけるかが重要だと感じます。

松浦:導入初期は現場からの問い合わせに、電話やチャットやメールなど、本当に二人三脚で STORES 予約 にはサポートいただき助かりました。

 教育でのもう一つは、お客様への対応です。店頭のお客様とWebカウンセリングのお客様では求めるものが異なります。Webカウンセリング広告などから流入してくださる新規のお客様は商品軸の方が多いです。この商品が知りたい、と。一方、店頭からのご予約やブランドのメンバー様の場合は、商品だけではない対話も含めたコミュニケーションで関係を作っていきます。ですから、応対スタイルやマインドの変化を意識しました。現在は必要に応じて店頭のチーム内で練習し合ったり、毎月トレーニングしたりしています。

オン/オフでいかにデータを追うべきか

MZ:約半年、Webカウンセリングを運用されて現状はいかがですか?

松浦:定着・浸透が終わって、もう少し深いレイヤーで効果検証していくフェーズだと感じています。例えばWebカウンセリングの予約成約率が低い部分はどこか、メニューの質はどうかなどです。また、満足度が高まるとリピーターが増えてキャンセル率も低下すると考えているので、いかに満足度を高めるか。定性と定量の両面から次のアプローチ方法を模索しています。

 成果については、現段階では明確なことが言えません。Webカウンセリングから売上につながったケースもありますが、短期的な成果だけではないと捉えており、再来店率の向上を1つのゴールとして設定していました。

 今のお客様は店舗に来られる前に、様々なデジタルツールを使って様々な商品やブランドを比較した上で購買される方が大多数なので、比較のツールとしてWebカウンセリングも使ってもらいたいと思っています。情報に我々の強みである人が掛け合わさることで、カウンセリングを受けた後、時間を置いて店頭にいらっしゃって購入に至ることもあります。つまり、必ずしもWebカウンセリング経由での売上がその日に上がればいいという性質のものではない。ですから、もう少し中長期で見るためのKPI設定の仕方が悩ましいところです。

倉岡:オンライン経由のユーザーがオフラインで来店したことは、データとして追えるようになっているのですか?

松浦:ケースバイケースです。お客様の会員が百貨店様のみの場合や、当社のブランド会員のみの場合など、様々なケースがあります。また、A百貨店でWebカウンセリングを試され、A百貨店のカウンターにお越しいただける場合がある一方で、リアルはB百貨店を利用するケースもあります。個人情報の絡みもあり、追えないこともあります。すべてを把握するハードルは極めて高いのが実態です。

倉岡:STORES 予約 をご利用のアパレルブランドさんはWeb接客をしていることが多いのですが、「次の来店予約をしてもらえるか」を目標に設定されています。御社に関しても、Webカウンセリング後に来店予約をできるようにして、そちらに誘導する方法を考えるのも一つの手かもしれません。そうすれば、Webからオフラインについてはデータとして把握できます。

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コロナ禍で武器が増えた

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/18 11:29 https://markezine.jp/article/detail/37660

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