全国110店舗を展開する「古本市場」のマーケティング戦略
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに自己紹介をお願いします。
篠原:テイツーは書籍やゲーム、トレーディングカード、CD、DVDなどの販売および買取を展開しており、「古本市場」など全国で110の店舗を運営しています(2021年11月時点)。その中で私は、販促領域全般を担当しています。
古本市場は現在、店舗運営を中心としたビジネスモデルなので、店舗への送客を目的とするWeb広告の出稿やLINEを活用した集客、Webサイトのメンテナンス、店頭のPOP作成などの販促活動を行っています。
MZ:店舗が中心のビジネスモデルということですが、古本市場ではどのようなマーケティング戦略を立てているのでしょうか?
篠原:既存、新規でお客様を分けて戦略を考えています。新規のお客様に関しては、折込チラシで「店舗に来て下さい」と促しても、効果が見えにくいという課題があります。デジタル広告も同様で、当社のWebサイトなどに誘導して、実際に何人の方が来店されたかを計測することは困難です。そこで、PayPayクーポン、楽天カードのポイント還元などのように、実際に来店して店舗での購入に繋がったことがわかる成果報酬型の仕組みに対して広告を出稿しています。
既存のお客様に関しては、しっかりと関係性を構築して再来店を促すコミュニケーションの継続を重視しています。競合の多い業界のため、継続して来店いただくためのコミュニケーションおよび関係性構築は特に注力しているところです。
メルマガ・DMの問題点をLINEで解決
MZ:古本市場では、既存顧客とのコミュニケーションを図る目的でLINE公式アカウントを活用されています。どのような経緯で活用に至ったのか教えて下さい。
篠原:以前は、店舗での会計時に住所やメールアドレスを記入いただいて、プラスチック製のポイントカードを発行していました。その時に取得した情報をもとに、紙のDMやメルマガをお送りして、再来店を促すメッセージを発信するという流れです。
しかし、メルマガは店舗で使用できるクーポンを付与するのが難しく、効果測定が難しい。DMはクーポンによる効果検証は可能ですが、制作・配送に大きなコストがかかるという問題がありました。効果測定ができる形で、来店の動機づけをするコミュニケーションを行うために、LINE公式アカウントの導入に至りました。
MZ:LINE公式アカウントでは、どのようなメッセージを配信し、再来店を促しているのですか?
篠原:店舗ごとに個別のLINE公式アカウントを開設していますが、配信は本部で一括で行っています。お客様がよく利用される「○○店」のLINE公式アカウントを友だち追加すると、その店舗からメッセージが届く形です。
お送りしているメッセージは、ゲームの新作発売情報やセールのご案内が中心です。LINE公式アカウントのクーポン機能を使って、クーポンの配信も行っています。
クーポン配信によるROIは900%!DMと比較にならない効率性
MZ:LINE公式アカウントから配信するメッセージとDMを比較して、クーポンの使用率や再来店されるお客様の数に違いはありますか?
篠原:回収率に関しては、紙のDMのほうが高い状況です。ただ、配信コストに非常に大きな差があるので、ROIはDMが165%、LINEが2,700%と圧倒的にLINEのほうが高い結果が出ています。
加えて、クーポン配信の工数や労力に関しても、LINEとDMでは比較にならないほどの違いがあります。DMの場合、まず配信対象者のリストを作成するところから始まり、原稿作成・校正・印刷・配送と、約1ヵ月はかかります。対してLINEは、極端な話、「明日クーポンを配信したい」と思ってもすぐに実行できる迅速性があります。
MZ:LINEとメルマガを比較して良かった点は何でしょうか?
篠原:メルマガと比較すると、クーポンの配布・使用状況がわかる点にメリットを感じています。メルマガの場合、テキストでクーポンを作成・付与すると、何度も使用できてしまいます。LINE公式アカウントのクーポン配信機能では使用状況を管理画面から簡単に確認できるので、大きな違いがあります。
また、メッセージ内のURLクリックについても、概算ではありますが、メルマガと比べてLINEは倍以上の反応があります。
LINEミニアプリを活用し、デジタルポイントサービスも提供
MZ:古本市場では、LINEミニアプリも導入されています。LINEミニアプリを活用し、どのようなサービスを提供されているのですか?
篠原:LINEミニアプリで、ポイントカード機能を備えたデジタル会員証を開発し、2021年2月にリリースしました。お客様は、店頭でQRコードを読み取りLINEを立ち上げていただくだけで、ほぼワンクリックで会員登録を完了できます。
もう少し仕組みをご説明すると、店舗ごとに開設しているLINE公式アカウントとは別に、ポイントカード会員様向けのアカウントを開設しています。お客様がLINEミニアプリでデジタル会員証に登録すると、自動的にLINE公式アカウントの友だちが追加され、ここでLINEのユーザーIDと会員情報が連携する仕組みです。
MZ:なぜ、ネイティブアプリではなく、LINEミニアプリを選択したのでしょうか?
篠原:ネイティブアプリはダウンロードのハードルがありますが、LINEはすでに多くの人が使っているので、それがありません。
また、お客様に提供するデジタルサービスを導入する際は必ず、「いちユーザーとして利便性やユーザビリティが良いかどうか」を考えるようにしています。たしかに、ロイヤルカスタマーを自社アプリ内に囲い込むという方法もありますが、ユーザビリティを考慮するとLINEミニアプリが最適でした。
9ヵ月で友だち数が32万人を突破!脅威のROIにも注目
MZ:LINEミニアプリを導入されて、どういった成果が出ていますか?
篠原:まだリリースして9ヵ月ですが、デジタル会員向けのLINE公式アカウントで、友だち数が急激に増加しており、現時点ですでに32万人を突破しています。店舗とデジタル会員専用のLINE公式アカウント両方から配信したクーポンの利用者数は約24,900人となっており、ROI1,800%と非常に高い成果が出ています(2021年11月時点)。
店舗ごとのLINE公式アカウントの友だちと比べて、ポイントカード会員のLINE公式アカウントのお客様は、エンゲージメントの高いロイヤルカスタマーです。よって、デジタル会員様には通常よりもお得なクーポンを配信するなど、店舗ごとのLINE公式アカウントとは配信するメッセージに差をつけています。個々に最適な最新情報やクーポンをお送りできているので、より高いリアクション率に繋がっているのだと思います。
MZ:すでに高い成果が出ているのですね。ポイントカード会員向けのLINE公式アカウントを友だち追加できるのは、来店客のみですか?
篠原:「ふるいち情報サイト」よりオンライン上からも入会は可能ですが、現在は実店舗でのみご利用いただけるポイントサービスとなっています。
MZ:LINEミニアプリは、サービス利用と同時に友だち登録が行われる点に大きなメリットがあると言えますね。
篠原:そうですね。また、LINEミニアプリの導入を機に、既存のポイントカードのシステムも設計し直しました。弊社のCRMとLINEミニアプリをAPIで連携させることで、データの一元化も実現しています。
デジタル会員様は仮会員/本登録会員/VIPとランクを分けているのですが、こうした会員ステータスのデータやポイント数、購買履歴などは弊社のCRMに蓄積されています。CRMに蓄積されたこれらのデータに基づき、LINEで配信するメッセージをパーソナライズする試みも行っています。
今後は目玉商品の抽選販売やECとの連携も視野に
MZ:LINE活用について、新たに考えている施策などはありますか?
篠原:人気ゲーム機が品薄になっている状況の中、コロナ禍の影響もあり、お客様に店頭に並んでいただくということは難しく、この1~2年で抽選販売が増えました。現在、弊社ではこの当選連絡を電話で行っているのですが、当選者のリストを作り、それを店舗に連携して、お客様へご連絡……と大きな労力がかかっています。
そこで、LINEミニアプリを通じて当選されたお客様にダイレクトに連絡できないかと考えています。お客様にとっても負担にならない方法に変えていきたいですね。
これだけでなく、購買履歴をお客様自身で確認できるような仕組み、今後展開予定の弊社ECサイトと連携など、LINE公式アカウント、LINEミニアプリともに活用の可能性はまだまだ広がると考えています。
MZ:LINE公式アカウントとLINEミニアプリの相乗活用はまだ事例が少なく、貴重なお話しを伺えました。ありがとうございました。