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アクション不在のパーパスにさらば!UXデザイナーが開発した「PJMメソッド」とは【お薦めの書籍】


 時代の移り変わりとともに、マーケティング手法のアップデートを求められるマーケター。バズワードに惑わされず、地に足の着いたメソッドを求める人は多いはずです。本記事ではパーパスと顧客体験の橋渡しを叶える、新しい発想法の指南書を紹介します。

UXデザイナーがパーパス・ブランディングを語る

 今回紹介する書籍は『クリエイティブなマーケティング パーパスを起点に新しい顧客体験をつくるPJMメソッド』。著者は、戦略クリエイティブ・ディレクター/UXデザイナーの藤平達之氏です。

『クリエイティブなマーケティング パーパスを起点に新しい顧客体験をつくるPJMメソッド』藤平達之(著)現代書林 1,870円(税込)

『クリエイティブなマーケティング パーパスを起点に新しい顧客体験をつくるPJMメソッド』
藤平達之(著)現代書林 1,870円(税込)

 藤平氏は博報堂において、クライアントの戦略設計からクリエイティブディレクションまでを一気通貫で支援。またUXデザイナーとして、サービスやプロダクトの開発にも携わっています。

 本書は、藤平氏が独自に生み出したマーケティング/ブランディングの新手法「PJMメソッド」の手引書です。前半では生活者の行動変容とコロナ禍による影響を踏まえ、従来のマーケティング手法が抱える問題点や、これからのマーケターに求められる新たな視点を提示。その上でPJMメソッドの理論と実践法を紹介し、パーパスの策定方法から顧客体験への落とし込み方までを指南します。後半は業種や目的別に15のユースケースを用意。具体的な解説でPJMメソッドの定着を促します。

 商品のコモディティ化やデジタル化にともなう手法の高度化により、マーケティングやブランディングがどんどん難しくなっている昨今。生活者に愛され、選ばれるブランドを作るためには何にどう取り組めば良いのでしょうか。

3C分析を逆転させたPJMメソッド

 PJMメソッドは「パーパス」「ジョブ」「モーメント」を組み合わせて顧客体験を創造・変革するアプローチだと藤平氏。以下のステップに沿ってアプローチを進めるといいます。

P:パーパスを掲げる
J:ジョブを見抜く
M:モーメントを絞る
UX:顧客体験を描く

 第1ステップとして、ブランドの社会的な存在意義・志にあたるパーパスを策定。第2ステップでは生活者がブランドにお金や時間や気持ちを投資する「本当の理由」を見抜くとともに、競合を捉え直します。ブランドへの共感が生まれるモーメントを第3ステップで絞り、各ステップでクリアになった視点を組み合わせて顧客体験を描く流れです。

 藤平氏はPJMメソッドの開発にあたり「マーケティングの代表的なアプローチとして知られる3C分析の順序を逆転させ、時代に合わせてアップデートした」と語っています。3C分析が生活者のニーズを起点に競合の動きを踏まえ、カテゴリにおけるナンバーワンを目指す競争戦略型の手法であるのに対し、PJMメソッドは生活者の心の中でオンリーワンのブランドを目指すクリエイティブな発想法だというのです。

「妄想リリース」でアクションを考える

 生活者にとってオンリーワンのブランドを目指すにあたり、私が本書を読んで特に重要だと感じたのはジョブの視点です。ある状況で生活者が達成したいことをジョブと定義し、生活者はジョブを片付けるために製品やサービスを「雇う」という考え方のもと、生活者が置かれる状況と気持ちを大喜利のように洗い出すことが重要だと藤平氏は述べています。

 パーパス・ジョブ・モーメントを整理できても、アクションに落とし込めなければ意味がありません。理想の顧客体験を描くために、藤平氏はいくつかのワークを紹介しています。中でもユニークなのが「妄想リリース」です。妄想リリースとは、ニュース番組のテロップやWebニュースのタイトル、新聞の見出しを妄想し「自分たちのブランドが何をしたら大きなニュースになるか」を考えてみる思考法のこと。「このフォーマットに沿ってアクションプランを一人10案ずつ持ち寄れば、打ち手の輪郭が見えてくる」と藤平氏は語っています。

 本書では、パーパス・ジョブ・モーメントを見定める際のチェックポイントや、陥りがちな誤りを網羅しています。藤平氏はPJMメソッドについて社内の方から「流行り言葉の幕の内弁当だ」と言われていたそうですが、同氏が実際に数年間取り組んできた業務から逆算して生み出した実務発のメソッドだからこそ、細かなポイントまで抑えられているのでしょう。パーパス・ブランディングに対し「正しいけど面白くない」「で、どうするの?」という印象を持つ方は、本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。

本記事は現代書林からの献本に基づいて作成しています

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/26 18:03 https://markezine.jp/article/detail/37924

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