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MarkeZine Day 2022 Spring(AD)

オーガニックコスメのネイチャーズウェイが展開する、店頭体験を補うデジタルコミュニケーション

 「ナチュラグラッセ」など、ナチュラル・オーガニックコスメを提供するネイチャーズウェイでは、コロナ禍による需要の変化でコスメ業界が変革を求められる中、デジタル戦略の変革に着手。MarkeZine Day 2022 Springでは、同社のDigitalグループ SNS・動画チーム 西宮 彩子氏が試行錯誤したInstagramやYouTube、SEOコンテンツの再構築について、SEO支援ツールMIERUCAを提供するFaber Companyの月岡 克博氏と意見を交換した。

コロナ禍で店頭での顧客体験の提供が困難に

月岡:まず、ネイチャーズウェイがどのような事業を展開しているか教えてください。

西宮:ネイチャーズウェイは、2022年で48年目を迎える企業で、ナチュラルやオーガニックに特化した化粧品を提供しています、自社でラボや工場、原料となるハーブを育てる農場を所有しており、自社ブランドの製造から販売まではもちろん、海外コスメブランドの輸入販売も行っています。

左:株式会社ネイチャーズウェイ Digitalグループ SNS・動画チーム 西宮 彩子氏 右:株式会社Faber Company 執行役員 IMC部 エグゼクティブマーケティングディレクター月岡 克博氏
左:株式会社ネイチャーズウェイ Digitalグループ SNS・動画チーム 西宮 彩子氏
右:株式会社Faber Company 執行役員 エグゼクティブマーケティングディレクター 月岡 克博氏

月岡:西宮さんはコロナ直前である2020年に入社されたと聞いていますが、コロナ禍で化粧品業界を取り巻く環境はどのように変化したと感じていますか。

西宮:緊急事態宣言によって外出できない状況が続き、化粧品業界は大きな打撃を受けました。特にメイクアップカテゴリー商品の店頭での売上が下がっています。

 人に会う機会の減少にともない、化粧をする機会も減っていることが大きな理由です。その一方で、自分の体や肌をいたわるボディケアやスキンケアのカテゴリーの需要は高まっています。

月岡:商品の選び方や顧客体験にも変化があったのでしょうか。

西宮:これまで店頭では、自分の手につけて香りや発色を確認し、より詳しく知りたい場合はショップスタッフに相談するのが一般的な顧客体験でした。しかし、店舗が閉まっていたり、店頭からテスターが撤去されていたりする状況ではこのような体験が提供できません。そこで私は、店頭での接客や感覚を補完する体験をデジタルコンテンツで補完したいと考えました。

デジタル接点の見直しを実施

月岡:店頭での接客を補う体験を提供すべく、デジタルにおけるタッチポイントの整理、再構築に取り組まれたのですね。

 元々Webサイト、ECサイト、Instagram、Facebook、Twitterなど様々なタッチポイントをお持ちでしたが、当初はどのような課題がありましたか。

西宮:コロナ禍の前は、新商品やブランドの世界観に関する情報の発信が中心でした。しかし、店頭で商品に触れる機会が減っていますので、よりお客様に寄り添った情報発信が必要だと考えたのです。

 SNSといっても、Instagram、Facebook、Twitterそれぞれの特性が違います。また、Instagramであればフィード投稿にストーリーズ、ライブ、リールなど機能別に向き合うべきお客様が変わります。そうしたタッチポイントごとのお客様像を細分化して、コミュニケーション方法を整理したのです。

月岡:再構築だけでなく、新たにYouTubeチャンネルの立ち上げやSEOを意識したコンテンツの制作にも取り組まれたそうですね。

西宮:YouTubeはブランドの公式チャンネルはあったので、それとは別に自社に複数あるブランドの垣根を越えて紹介できるオーガニックコスメのセレクトショップのようなチャンネルを作りました。これまで出会えなかったお客様が、YouTubeにはまだたくさんいるのではと思ったためです。

 SEOを意識したコンテンツも以前から制作していたのですが、さらなる強化に取り組みました。

お客様に寄り添ったコンテンツ発信のポイントとは?

月岡:各タッチポイントでのお客様が異なるため、それぞれに合わせたコンテンツ作りを模索されたと伺いました。なるほどなと思ったのは、Instagramの中でも、「ライブ」と「リール」で発信方法が異なる点です。詳しくお聞かせください。

西宮:Instagramの「ライブ」は、配信を開始するとアカウントをフォローいただいているお客様に通知が飛びます。そのため、日頃からブランドに関する投稿を見てくださっていることを意識し、ブランドの“中の人”とコミュニケーションできる内容を意識しています。具体的には、使い方やちょっとした小ネタを紹介して、出演者に興味を持ってもらうようにしています。

 一方「リール」は、フォロワーでない人にもリーチできる特徴があります。そのため、初めてネイチャーズウェイのコンテンツをご覧になるお客様を想定し、ていねいにハウツーや商品の選び方を紹介しています。

月岡:「ライブ」では、店頭で販売員さんから聞けるような情報を提供するなど、機能別にうまくコンテンツを使い分けているのがわかります。

 では、YouTubeチャンネルのコンテンツはいかがでしょうか。動画を拝見しましたが、皆さん楽しげに制作している印象を持ちました。

西宮:実際に商品を使った感想をお届けするYouTubeの動画には、口コミを発生させる効果があります。出演者に親近感を持って応援していただけるような内容を意識して、作っていますね。

 ブランドの人ではなく、1人のコスメユーザーという視点で発信することを心掛けています。動画は企画から出演、撮影、編集、公開まですべて内製です。

月岡:チャンネル登録数を大きく上回る再生数を稼ぐ動画もありますし、コメントにもていねいに返答されていますね。

西宮:コメントでのやりとりもお客様とのコミュニケーションの一つですので、コメントの通知に気づいたタイミングですぐ反応しています。InstagramなどのSNSは投稿して情報が流れていく一方で、YouTubeは検索を通じて見ていただけるので、動画の本数が増えれば増えるほどお客様とのタッチポイントが増えることがわかりました。

SEOコンテンツは、ブランドとの偶然の出会いを生む

月岡:SEOを意識したコンテンツはどのように展開していますか。

西宮:コロナ前は、自社サイトへブランド名での検索流入が目立っていました。しかし、コロナ禍以降、その割合が少なくなっていたのです。店頭でたまたま目にして商品名やブランド名を検索される方が一定数いたのだと思いますが、そういった出会いは減っています。

 このような偶然の出会いをオンライン上で生み出せるのが、SEO、検索ユーザーを意識したコンテンツの魅力だと思っています。

 たとえば、ブランド名ではなく、「くすみ」といった検索ワードに対するコンテンツを用意しておけば、それをきっかけに当社ブランドのナチュラグラッセなどを認知していただけると考えました。

月岡:SEOでブランドを知らないお客様との出会いを築ける、という考え方はいいですね。

 実際に「眉メイク」というキーワードで検索すると、検索結果の1ページ目にネイチャーズウェイさんのコンテンツが表示されます。

 YouTubeもそうですが、コンテンツは執筆からコンテンツ内で使用する画像・図解など、すべて内製化されているとお聞きしました。しかも、元店頭スタッフの方など、Web未経験のメンバーが担当されていて成果が出ているのは素晴らしいですね。コンテンツ制作でこだわっているポイントはありますか。

西宮:WebやSNS、そしてお客様の状況を知っているスタッフが作ったほうが、コンテンツの熱量が伝わると思っています。コンテンツでは商品の訴求をする前に、“お客様の悩み”に応えていくことを強く意識しています。

 たとえば「アイブロウペンシル」という当社商品に関するコンテンツも、「アイブロウペンシルの使い方」ではなく、「眉の描き方」に関する切り口にして、お客様の悩みから入るようにしています。

お客様の悩みを解消するコンテンツ制作に役立つMIERUCAとは?

月岡:お客様のお悩みを把握するために、弊社のMIERUCAを使っているとお聞きしています。MIERUCAには、検索エンジンで検索されるワードからユーザーニーズを抽出し、検索意図に応えるコンテンツ制作をサポートする機能が揃っています。どのように活用しているのでしょうか。

西宮:最初は1人で始めたデジタルコミュニケーションチームもおかげさまで10名程度になりました。ショップスタッフだったメンバーが異動してきていることもあり、Webに関してまだまだ勉強中というメンバーもいます。

 しかしMIERUCAは、Webに詳しくないメンバーでもユーザーニーズを容易に抽出できるのが素晴らしいと思っています。分析方法やコンテンツの書き方についても、サポートいただいて、とても助かりました。

月岡:たとえば、「眉メイク」というキーワードを入れるだけで、一緒に検索されているワード(=サジェストキーワード)などから、検索ニーズの総量と知りたいことのカタマリが見えてきます。

 眉メイクの場合、「初心者」「おすすめ」「プチプラ」「やり方」などの知りたいことのカタマリが見えてくるので、それごとにコンテンツを用意すればいいと瞬時に分かります。ネイチャーズウェイさんでも、日々このようなニーズの抽出を行われていると思いますが、ここからどのようにコンテンツ企画を行っているのでしょうか。

西宮:絶対に検索上位表示させたいキーワードの周辺に存在するニーズを見て、企画を考えています。また、コンテンツ制作時には必ずペルソナを作っていて、そのペルソナが「どのようなことに困っているか」「そのとき、どんな検索キーワードを使うか」を想定する際も、MIERUCAのアウトプットを参考にしています。

手厚いサポートにより、Web未経験者でもコンテンツ分析・企画が可能に

月岡:MIERUCAではツール提供だけでなく、カスタマーサクセス担当が施策に伴走します。勉強会開催やコンテンツのフィードバックなどを通じて支援していきましたが、サポート内容はどうでしたか。

西宮:弊社のメンバーのレベルに合わせて、ていねいにレクチャーしてもらって本当に助かりました。施策に伴走いただくご担当の手厚いサポートの数々は感動ものでした。MIERUCAとそのサポートがなければ、これらの成果は出せなかったと思います。

月岡:そのように言っていただけて、担当も喜ぶと思います!

 今日はネイチャーズウェイさんが顧客体験を高めるために実施してきた、デジタルの顧客接点の整理、再構築についてお聞きしました。各チャネルをご覧になるお客様のことを考えて発信していくことが重要で、それぞれでの発信内容やコンテンツの考え方も参考になったのではないかと思います。

西宮:はい。同じコンテンツであっても、チャネルによって見ているお客様の特性は違います。さらに、チャネルごとに投稿するタイミングなどもアレンジできると良いと思います。

 私たちのデジタルでの取り組みは、登山に例えるなら、五合目まできたところだと感じています。これから頂上を目指して、厳しい道を一歩ずつ着実に登っていきたいです。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

 就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/20 10:30 https://markezine.jp/article/detail/38684