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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

特集:リテール最新動向

鍵は「UXへの落とし込み」リテールビジネスの今後を消費者調査から紐解く

オンラインで代替できるもの・できないものが浮き彫りに

――続いて、昨年11月に発表された「リテールDX調査」についてうかがいます。調査の概要と、そこから読み取れることを教えてください。

辻田:本調査は生活者のインサイトを踏まえたDX支援を推進していく目的で、今回初めて実施したものです。生活者600人を対象に、コロナ禍前後のリテール6業態の利用状況・利用意向などをうかがいました。今後も継続し、経年変化を見ていく予定です。

 大きな特徴として見られたのが、リアル店舗の来店頻度の変化です(図表1)

図表1 コロナ流行によるリアル店舗来店頻度の変化。どの業態においても、来店頻度が増えた人よりも減った人の方が多く、特に外食分野では約6割弱、百貨店では約4割弱、来店頻度が減ったと回答した。(タップで画像拡大)
図表1 コロナ流行によるリアル店舗来店頻度の変化。どの業態においても、来店頻度が増えた人よりも減った人の方が多く、特に外食分野では約6割弱、百貨店では約4割弱、来店頻度が減ったと回答した。(タップで画像拡大)

 緊急事態宣言などの影響で「人との接触を避けたい」という意向が高まり、特に外食や百貨店への来店頻度が大きく減少しています。

 同時に、少なくない生活者が購買の場をデジタルに移していることも読み取れます。本調査では、回答者の約15%が「コロナ禍以降、デジタルを用いた購買行動をとるようになった」と回答しました。また百貨店に限定すると、回答者の約25%が、来店頻度が減少した理由を「ECのほうが便利だから」と回答しています。4人に1人がECの利便性を評価しているというのは、予想以上に高い数字なのではないでしょうか。

 一方、外食においては、「店舗の代替手段としてフードデリバリーサービスが用いられている」という傾向は読み取れませんでした。フードデリバリーの経験率はコロナ禍で15ポイント上昇していたものの、「便利だから」という理由で継続利用しているユーザーは6%に留まっています。このことから、「外食の体験はフードデリバリーにそのまま置き換えられるものではない」と感じている生活者が多くを占めていると考えられます。

辻田:本調査ではコロナ収束後の来店頻度についても尋ねていて、外食については約7割の回答者が「コロナ収束後は来店頻度が戻ると思う」と回答する結果となりました(図表2)

図表2 コロナ収束後の来店頻度。コロナ収束後には、来店頻度が減った人の4割以上が以前のようにリアル店舗に来店すると回答。特に外食分野では約7割は、来店頻度が戻ると回答する結果となった。(タップで画像拡大)

図表2 コロナ収束後の来店頻度。コロナ収束後には、来店頻度が減った人の4割以上が以前のようにリアル店舗に来店すると回答。特に外食分野では約7割は、来店頻度が戻ると回答する結果となった。(タップで画像拡大)

 その理由を尋ねたところ、「店舗でしか食べることができないメニューがあるから(56.6%)」「複数人で外食する場合は、店舗のほうがコミュニケーションが楽しいから(46.5%)」などの選択肢が上位となり、家では代替できない店舗の世界観や雰囲気のなかで会食し歓談することや、限定メニューなどの出会いに価値を感じていることがうかがえます。

 一方、その他の多くの業態については「今のまま変わらないと思う」との回答も目立っています。リアル店舗のビジネスはコロナ収束後も完全に元に戻ることはなく、ある程度オンラインに置き換わっていくことが予想されます。

――この結果を踏まえて、リアル店舗の今後の役割や価値についてどのように考えていけばよいでしょうか。

辻田:私たちは本調査から得られた示唆を、コロナ収束後に生活者がリアル店舗に求めるのは、実物に触れる体験を通じた「確信」と「驚き」だと総括しました。

 リアル店舗ならではの経験の一つに、実物に触れられることがあります。自分の手で触って確かめたり、店員さんと会話したりする機会を通じて、安心感や納得感といった「確信」を得てもらうことは、大きな価値となるでしょう。加えて、セレンディピティという言葉でも表される思いがけない出会いや驚きも、店舗の役割として残ると思います。

 驚きや確信を感じてもらう上で重要なのが、五感に迫る体験です。五感すべてをリアルからデジタルに置き換えることは、今のところは不可能ですので、この点を念頭に、リアル店舗での体験を再設計していくと良いのではないでしょうか。

岡本:店舗では実物の商品を通した世界観を味わうことができ、オンラインでは口コミや購買の手間削減といった便利さが得られます。それぞれで得られる情報や価値の種類が異なることは、意識しておくと良さそうですね。

 現在ユーザーが求めているのは、デジタル上にあるオンラインショップのみの発達でもなければ、店舗だけを作り込んでいくこともでもなく、リアルとデジタルがマージした、いわばマーブルな世界です。双方のメリットを維持しつつ、両者が溶け合ったマーブルな世界で、五感をどう紡いでいくか。この点は今後、キーになってくると考えています。

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この記事の著者

タカハシ コウキ(タカハシ コウキ)

1997年生まれ。2020年に駒沢大学経済学部を卒業。在学中よりインターンなどで記事制作を経験。卒業後、フリーライターとして、インタビューやレポート記事を執筆している。またカメラマンとしても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/26 10:33 https://markezine.jp/article/detail/38803

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