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特集:リテール最新動向

鍵は「UXへの落とし込み」リテールビジネスの今後を消費者調査から紐解く

リテールテックはどれくらい浸透しているのか?

――本調査では、デジタル技術の利用経験をヒアリングする項目もありました(図表3)。技術ごとに数値が分かれる興味深い結果となりましたね。

図表3 デジタル技術の利用状況。コロナ禍で、生活者がセミセルフレジ(商品登録のみ従業員が行い、顧客自身が精算機で決済するレジ)やモバイルオーダーといった非接触・無人化を目的としたデジタル技術に触れる機会が増え、デジタルシフトが進行した。(タップで画像拡大)
図表3 デジタル技術の利用状況。コロナ禍で、生活者がセミセルフレジ(商品登録のみ従業員が行い、顧客自身が精算機で決済するレジ)やモバイルオーダーといった非接触・無人化を目的としたデジタル技術に触れる機会が増え、デジタルシフトが進行した。(タップで画像拡大)

辻田:はい。今回の調査では、消費をより手軽にするオンラインショッピングやキャッシュレス決済といった項目が高い数値を記録した一方で、消費体験を豊かにするライブコマースやオンライン接客(図表3の「無人店舗」以下)は伸び悩む結果となりました。同時に行ったアンケートにおいて、オンライン接客系のデジタルソリューションは20代までの若年層の経験率が高く、年代が上がっていくにつれて低くなっていることがわかっています。

 これらの結果から、デジタルソリューションを導入する場合は、負担を軽減するツールとしてどの年代でも扱いやすい形で慎重に導入するか、新たなソリューションとしてターゲットを若年層に絞り導入するか、の二つの方向性があると考えられます。

岡本:接客系のデジタルソリューションの利用率が上がらない、といった課題について、我々は2つのフリクション(摩擦)が存在すると考えています。1つは「難しそう、怖い」といった印象から、新しい技術の利用を後ろ向きに考えてしまうこと。特に世代が上の方々にとっては、ハードルが高いと受け取られてしまうことがあります。

 2つ目は接客系のデジタルソリューションそのものがまだ発達しきっておらず、特別なツールと受け取られてしまっているということです。

辻田:こうした課題を乗り越え、接客系のデジタルソリューションの利用率を上げていくためには、次の4つのアプローチが重要であると考えています。

(1)わかりやすいUXの設計

(2)情報の透明性の担保

(3)不気味さの払拭

(4)デジタルならではの付加価値の提供

岡本:(3)不気味さの払拭については私たちもかなり議論を交わしており、いわゆる“不気味の谷”を越えていくことが大切なのだと考えています。不気味の谷とは、ロボットなどの人工物をどんどん人間に似せていくと、ある程度までは親近感が増すものの、人間にかなり近づくと、不気味さや嫌悪感が出てくるという現象を指します。

 また、デジタル接客が人間らしくなればなるほど、購入を本格的に検討している利用者以外は使いにくいと思ってしまうところもあります。企業としてはそれを望んでいなくても、利用者側は「気まずい」と感じてしまうところがあるのです。改善の方向性としては、気まずさは人間同士のコミュニケーションから発生するので、企業側かユーザーがデジタル化をしていくしかないと思います。しかしデジタル化し過ぎてしまうと、今度はBotとの会話と同じになってしまう。この辺りのちょうどいい塩梅を探すのが、UXの役割なのかもしれないと、いままさに社内で議論しているところです。

各ソリューションのUXへの落とし込みが課題

――最後に、これからリテールDXを進めていく企業に対し、推進のコツを教えていただけますか。

岡本:お客様からご相談をいただいた際、私たちはよく、フェーズのお話をさせていただきます。リテールDXの推進フェーズは、大きく4つに分類することが可能です。まずはデジタルを導入し生産性の向上や効率化をはかる「DX導入」、次にデジタルを用いて新規事業に取り組む「イノベーション」、ECと店舗を統合する「統合推進」、そして経営指針やパーパスにもDXを反映していく「経営推進」です。まず、現状どのフェーズに位置しているのか、今後どこを目標にしていくのかを整理することがスタートです。

 もう一つ、DXを進めていく際に、それぞれの施策が「売るためのものなのか?」それとも「お客様とのファーストコンタクトをとるものなのか?」といった目的を明確化することで、取り入れ方がガラリと変わってくると感じています。自社がどういった価値を提供していきたいか、そのためにツールをどうUXに落とし込むのかを考えることで、突破口が開けるのではないでしょうか。そのためにも、私たちのような組織が、お客様の課題を整理し、知見を還元していくことで、業界全体の活発化に貢献できればと考えています。

調査概要

調査対象者:15~69才の男女
算出用サンプル数:600サンプル(年代ごとに100サンプル)
調査対象者の住所:東京都、名古屋市、大阪市
調査対象者の職業:会社員、パート/アルバイト、自営業/自由業、公務員、医療関係者、専業主婦・主夫、学生、年金が主な収入の方、お勤めでない方、その他
調査時期:2021年8月11日~8月18日
主な調査項目:デジタルサービスの利用経験、現在のリアル店舗来店頻度、コロナによるリアル店舗来店頻度の変化とその理由、コロナ収束後のリアル店舗来店頻度

詳細は電通デジタルプレスリリース「コロナ収束後に生活者がリアル店舗に求めるのは、実物に触れる体験を通じた『確信』と『驚き』―電通デジタル、リテールDX調査(2021年版・6業態)を発表―を参照。

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この記事の著者

タカハシ コウキ(タカハシ コウキ)

1997年生まれ。2020年に駒沢大学経済学部を卒業。在学中よりインターンなどで記事制作を経験。卒業後、フリーライターとして、インタビューやレポート記事を執筆している。またカメラマンとしても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/26 10:33 https://markezine.jp/article/detail/38803

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