PLG組織に必要な人材要件
MZ:SLGとPLGでは組織体系や、必要とされる人材が異なって来るかと思います。その点を詳しく伺えますか?
佐々木:SLGは『THE MODEL』型で分業することで生産効率を上げていくモデルです。ですから、しっかりと全体設計をしてから動くことが多いです。SLGにも様々な長所がある一方で、分業がデフォルトなので情報が点在化しやすいデメリットもあります。
PLGの場合は基本的にセールスもインサイドセールスもいません。プロダクト・デザイナー・開発エンジニアリングという組織が中核にあり、サクセスチームとマーケティングチームが衛星的なつながりをしています。

PLG組織はチームの協働によって成果を出すため、コミュニケーションスキルが求められます。ここでのコミュニケーションとは「何を目指しているのか」を誰でもわかるように伝える明文化スキルや、トークスキルを含みます。
また、人間が介在しないためデータが拠り所になります。そのため、データから仮説を立ててPDCAを高速で回すスキルも必要です。こちらは、何と何のKPIが相関しているのかといった、SaaSのKPIの解読を全メンバーに徹底して教育しています。その他のデータもルールがあるので、そこを解説することで教育期間は短縮できています。
MZ:協働というのは具体的にどういうことをするのでしょうか?
佐々木:例えばプロダクトや機能を常にアジャイルで開発するためには、マーケティングやファネル改善担当、デザイナーやエンジニア、カスタマーサクセス(以下、CS)チームが常に連携する必要があります。案件オーナーが指揮者のようにテーマを決めて、プロジェクトのアサインメントをして、全体に共有しながら進めています。
PLG化でformrunの売上は900%に
MZ:現在、PLG事業部のメンバーは何名いらっしゃいますか?
佐々木:外部も含めて、プロダクトマネージャーが8名、開発が20名、マーケティングが11名。あとは、CSが12名、データ担当が6名ほどですね。
MZ:2年ほど前は3名のチームだったことを考えると、規模拡大がとても早く感じます。
佐々木:私がCSOの立場で、全社視点で投資するに値する事業か否かをデータから判断しています。formrunの売上は当時の9倍になっていますし、SaaSの重要指標であるユニットエコノミクス(LTV/CACから算出される事業の健全性)や、ペイバックピリオド(投資金額の回収期間を算出し評価指標にする方法)などのKPIもすべてクリアし、健全成長であることが明らかです。ですから投資をしていますし、社内でも説得しやすかったですね。
ちなみに、これらの数値はデイリーで全部管理しています。マーケティングチームも日々全指標を見ながら、この調子ならば一段踏んでもリターンがもっと大きく入りそうだ、という判断をしてくれています。登録から有料転換するまでのリードタイム管理もしているので、月中にさらに売上を出すためにどれだけ投資するべきかの算出もしています。
マーケターの仕事は、既定路線にあるルーティン的なメディアの差配はもちろん、もう一弾踏める時にどうするべきかの手段を常に用意するイメージですね。