相談窓口もファン作りの大切な場所
MarkeZine編集部(以下、MZ):利用者からの問い合わせを最適なチャネルへ誘導し、解決手段へ導くソリューションとして「ビジュアルIVR」が注目されています。
ピーチ・ジョンさんは、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供するビジュアルIVRを導入されています。今回は導入の狙いや効果についてお話しいただければと思います。まずは、大澤様と吉田様がどのような業務を担っていらっしゃるのか伺えますか?
吉田:リレーションシップセンターという、お客様相談窓口業務を行う部署に所属しています。CS推進を担当し、不満や疑問を発生させないこと、および応対品質の向上をミッションにしています。具体的な取り組みは、お客様アンケートによる、満足度やNPS(Net Promoter Score)の調査、ECサイトにあるFAQの改善、チャットボットの分析と運用改善、お客様の声の収集、他部署に共有するレポート配信などを行っております。
MZ:ピーチ・ジョンが提供したい顧客体験、形成したい顧客との関係はどのようなものですか? また、その中で、お客様相談窓口はどのような立ち位置にあるのでしょうか?
吉田:お客様に商品や快適なお買い物体験を通じて、ピーチ・ジョンのファンになっていただきたいと考えています。コールセンターを始めとした窓口も、お問い合わせをきっかけにファンになっていただきたいと思っています。そのため、顧客満足度の向上が必要だと考えています。
弊社は取り扱っている下着という商材の特性や、お客様の多様な状況に合わせたコミュニケーションを考え、時代に合わせて接点を増やしてきました。場所を選ばずお問い合わせできるチャットやメールでのテキストコミュニケーション、スピーディーな電話での応対、FAQやチャットボットなどの自己解決ツールといった各チャネルの強みを活かすことが必要です。それぞれの業務の効率化、運用改善を通して、お客様の満足につなげていきたいと考えています。
電話以外の問い合わせがわかりにくかった
MZ:「ビジュアルIVR」導入・活用以前にお客様相談窓口が抱えていた課題はどういったものだったのでしょうか?
吉田:問い合わせ履歴を見てみると、電話でのお問い合わせの割合が非常に高くなっていました。そこに、見直しの必要性を感じていました。もちろん、有人対応をなくすわけではありません。しかし、お問い合わせ内容によってはお電話いただくよりも、FAQや、チャットボットを使っていただくほうが手軽に早く回答を得られるものもありました。また、お買い物中に疑問を感じた時も、豊富なチャネルでの問題解決をご提案できれば、より便利にお買い物していただけると思いました。
各チャネルの利点を生かした対応ができるように使い分けをしていきたいと考えたのです。問い合わせの大部分がお電話という状況から、他の様々なチャネルに誘導していく手段として何が適切か検討した結果、ビジュアルIVRの導入に至りました。
MZ:ピーチ・ジョンのユーザー層は若い女性で、比較的デジタルに強いイメージがあります。それでもWebでは問題解決ができずにお電話をされる方が多かったのは少し意外です。
吉田:おっしゃる通り、20代や30代のWebの利用に抵抗がないお客様は多いです。しかし、導線として電話でのお問い合わせをさせてしまっていたのが実情です。他のチャネルの入口がわかりにくくなっていました。そこで、ビジュアルIVRの導入と併せて、Webサイトや紙媒体でも問い合わせ窓口の紹介文を改善しました。今まで電話窓口の番号を記載していたことが電話問い合わせに繋がっていたので、全窓口のチャネルと、よくあるご質問があるFAQサイトへの誘導へと変更したのです。
導入3ヵ月で問い合わせの13%が電話からデジタルに
MZ:ビジュアルIVRは各社が提供しています。なぜ、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供するモバイルウェブの「ビジュアルIVR」を採用されたのですか?
吉田:理由は3つあります。まずお客様に見せるメニューなどの変更が手軽にできることです。自部署で完結して行えるので、文言を切り替える際にもスピーディーに対応できます。2つ目は導入時のサポートです。導入時に画面設定の代行をしていただいたので、まったく専門知識がなくてもスムーズに導入ができました。3つ目はコスト面です。長期的な利用を考えた時、とても納得できるものでした。
MZ:ちなみに、選定から運用開始まではどのくらいの期間が掛かりましたか?
吉田:実際に導入が決まってからは本当にスピーディーに導入支援していただきました。1ヵ月程度で導入できたと思います。
MZ:実際に「ビジュアルIVR」をどのようにご活用されているのでしょうか。またどのようなKPIを定めていましたか?
吉田:2021年11月から導入しました。まず、スマートフォンから電話でお問い合わせされた方全員に、ビジュアルIVRのガイダンスをします。もちろん、お電話もお選びいただける設計になっています。Webをお選びいただいたお客様にはその後、URLを記載したショートメッセージを送信し、Webページへ誘導しています。
KPIは電話からメールへの移行率です。これまでは電話の比重が大きく、他チャネルへの誘導ができていない課題がありました。ビジュアルIVRによってWebチャネルへ誘導できれば、問い合わせの構成が変化すると考えたためです。導入から3ヵ月ほど経ったところで、目標の移行率13%を達成しました。
チャットへの誘導もスムーズ
MZ:ビジュアルIVRではお客様への情報の見せ方が肝であり、難しいところだと思います。御社が工夫されたところはありますか?
吉田:スマホで見ていただくので、1画面でお見せすることを考 えました。情報量はかなり限られるので、情報の絞り方に一番苦労しましたね。最終的には、これまでお電話でのお問い合わせで多かった内容を分析して、優先的に配置しました。現時点では項目の入れ替えも発生せず、お客様のお悩みに対応できていると感じています。
MZ:ビジュアルIVRの導入はお客様に今までとは違う行動を促すという側面もあります。その変革には勇気が必要だとも思うのですが、その点はいかがでしたか?
吉田:確かに、懸念はありました。すぐ電話につながらないこと への不満が顧客満足度の低下につながったり、ご意見をいただいたりしてしまうのではないかと考えました。しかし、導入後のお客様アンケートでの応対満足度が高いまま維持できています。
チャットについては、ビジュアルIVR 導入前から対応満足度アンケートの中で「電話よりも気軽に相談ができてよかった」というコメントを多くいただいていたので、満足度の高いチャットの選択肢を提案できることになったのは利便性の向上に繋がっていると思います。
ビジュアルIVRで安定したコールセンター体制を実現
MZ:業務効率化も導入目的の1つですが、効果はいかがですか?
吉田:電話からメールへ移行したことで電話の稼働削減に繋がっ ています。また、今後の体制作りにも寄与してくれると感じています。現在のコロナウイルス感染拡大の影響下においては、メールやチャット対応のスタッフについては比較的スムーズに在宅勤務に移行できました。これからは、ビジュアルIVRを活用してお電話以外の窓口をご提案することで、いつでもお問い合わせを受け続けることができると思っています
いざ何かが起きた時にすぐ体制を切り替えることは難しいので、平常時から在宅勤務を取り入れることで切り替えがスムーズになります。そういった意味で、今回の導入が今後の体制を見直していく機会になっていると考えています。
これからも、あらゆる接点からお客様の声を拾い続ける
MZ:相談窓口からファンになってもらう、という観点ではビジュアルIVRの活用はいかがでしょうか?
吉田:そうですね。それぞれのお客様に合った問い合わせチャ ネルをお選びいただき、素早い問題解決や商品選びが可能な環境をご用意できることはメリットだと思っています。実際に、「チャットで店頭のような接客を受けられた」というお声を、アンケートに書いていただくことも少なくありません。
弊社では、メールやチャットでのテキストコミュニケーションでも、お客様に寄り添う言葉がけを徹底しています。そういったところがお客様に伝わり、対応者の名前を出して「○○さんに相談してよかったです」と、メールやチャットの返事に一言添えていただけることもあります。その意味では、お問い合わせをきっかけにファンになっていただくという目標に近づいているのかなと感じますね。
MZ:ビジュアルIVRによって、既に用意されていた手厚いサービスに、より確実に導いていくことで、お客様はこれまで以上に迷うことなく問題解決ができるようになっているのですね。
吉田:お客様自身で事前に調べられる方も多いとは思いますが、 やはりこちらから「こういう接点もありますよ」とご案内できたほうがお客様にとってもいいと思います。それがこのビジュアルIVRによって叶ったのではないかと思っています。
MZ:今後ピーチ・ジョン様ではコールセンター業務についてどのような展開をお考えですか。
大澤:お問い合わせをきっかけにファンになっていただくところを引き続き重視していきます。また、問い合わせを受けて終わりではなく、FAQやチャットなど、カスタマーサポートにとどまらないお客様対応を目指していきたいと思っています。
あらゆる接点からお客様の声を拾い、商品やサービス開発・改善に生かすための材料を集めることがリレーションシップセンターの役割だと思っております。先ほど、「お問い合わせ窓口を止めない」という話をしましたが、私たちの活動も止めることなく、顧客満足度の向上を追求していきたいと思います。