SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究(AD)

コロナ禍を経てアプリユーザーが7倍に!@cosmeが語る、店舗送客へのモバイル効果測定活用

 コスメ・美容のプラットフォームとして、WebメディアやEC、店舗など、幅広いサービスを展開するブランド「@cosme」。各チャネルを活かすハブとしてアプリに注力する中で、Adjustが提供するモバイルマーケティングプラットフォームを活用し、効率的なアプリユーザーの獲得や店舗送客を実現しているという。「@cosme」を運営するアイスタイルの渡辺氏と後藤氏から、具体的な効果測定の施策やその活用方法について伺った。

店舗とECの併売。シームレスな購買体験をつくる

MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは、簡単なご経歴と現在の業務、ミッションについてお教えください。

(左から)株式会社アイスタイル 顧客体験事業ユニット カスタマーエクスペリエンス本部 グロース推進部 部長 渡辺智氏
株式会社アイスタイルリテール 営業推進部 店舗販促グループ マネージャー 兼 販売事業戦略本部 リテールマーケティング部 後藤文香氏

渡辺:代理店や事業会社で、デジタルに関わるマーケティング・グロースや経営企画などに従事してきました。アイスタイルでは、マーケティング、SEOの責任者を経て、Webとアプリにおけるグロースの責任者として全体を統括しています。アクティブ率やインストール数、その他弊社が定める指標の達成が現職におけるミッションです。

後藤:私は2010年にアイスタイルに新卒入社し、現在13年目です。最初は@cosmeのWebサイト運営や企画編集を行っていました。2015年に店舗事業部へ出向し、1年程の店頭経験の後、店舗運営に携わりました。2018年からは、営業推進部として販促業務や、SNS・ブログなどの情報発信の業務に従事しております。

 店舗の売上はもちろん、お客様あたりの買い上げ点数や再来店率の向上が主なミッションです。後は、@cosmeアプリを通じた体験促進ですね。2022年7月からは店舗とECを横断するリテールマーケティング部を兼務しており、店舗とECの併売、シームレスな購買体験づくりが今後のミッションです。

チャネル別の施策を振り分けるためにAdjustを導入

MZ:@cosmeは、口コミ・情報メディアからEC・実店舗に至るまで、コスメと美容に関わる様々なサービスを幅広く展開されています。現在の戦略に至った経緯や、横断的にユーザーを結び付ける戦略について教えていただけますか。

渡辺:@cosmeというブランドは一定の認知はされているものの、メディア、EC、店舗と、出会いのチャネルが複数あり、ユーザーが求めている用途もそれぞれ異なっているという状態でした。

 別々の入り口から@cosmeを知った方々をつなぐハブとして、アプリに注力していったのが当時までの経緯です。店舗会員のアプリ化やUIの変更、ECの実装、メディア連携が進み、アプリの中に一通りの機能が揃ったのが2019年頃でした。

コスメ・美容の総合サイト「@cosme」の公式アプリ

渡辺:アプリの機能拡充が一段落付いたため、次のフェーズとしてユーザー数を伸ばしていきたいという議論がされるようになりました。また、毎年12月に@cosme公式通販「@cosme SHOPPING」のスペシャルイベント「@cosme BEAUTY DAY」を行っているのですが、その開催時期を狙った、アプリシフトの促進もちょうどその頃話されていたと記憶しています。

MZ:コスメ体験のプラットフォームとして@cosmeアプリを活用されようとしていたのですね。アプリシフトの戦略過程において、モバイルマーケティング分析プラットフォームのAdjustを導入した狙いをお教えください。

渡辺:アプリシフトという議論がなされていたので、本格稼働前にどう転んでも必要になることをしようと考え行動に移しました。

 まず必要だと考えたのが、施策の振り返りができる環境の整備です。そこで導入したのがAdjustでした。複数のプラットフォームで検討しましたが、機能面、コスト面を考えての判断です。また、Adjustとは別にユーザーの状態を測る環境の整備も同時進行していました。

 もう1つは、アプリを伸ばすためのチャネルの検討と体制の構築、施策の整備です。@cosmeは当時からたくさんアセットがあったので、どれをどのように活用するかの方策は必要不可欠でした。他にも、@cosmeアプリがユーザーニーズに応えられているかどうかの検証なども行っていて、裏側でやっていたことは多かったですね。

【オンデマンドwebinar】「@cosmeのグロース戦略 - アプリと店舗の融合」

 Adjustでは、本記事で紹介された@cosmeのアプリを手掛けるアイスタイル社の渡辺氏と、実店舗のアイスタイルリテール社の後藤氏をお迎えし、@cosmeのプラットフォームをグロースさせるためのアプリと店舗を軸に置いたOMO戦略について解説するセミナーを実施。その模様をオンデマンド配信中です。

 アプリ戦略を強化する中における実店舗との具体的な取り組みから、相互送客するための工夫、KPIの計測方法まで、実体験に基づき解説いただいています。

Adjust導入が店舗のニーズと合致。販促物の効果測定に活用

MZ:Adjustが導入される前後の店舗側のご事情はどうだったのでしょうか? 実践した店舗送客施策とその効果計測についても、詳しく教えてください。

後藤:店舗スタッフの一番の仕事は、もちろんお客様の接客です。それに加えて、複数の雑務をこなす必要があります。売り場を考え、レジに入り、POPを書いて発注もする。忙しい中、アプリ獲得のために使える時間はほとんどありません。

 また、スタッフからの案内によって、アプリのダウンロードを促すにも限界があります。

 お客様側で能動的かつ効率的にダウンロードしてもらうためには、訴求を促すような販促物を作る必要がありました。販促物の効果測定をどうやって行うか考えていた際に、渡辺を通じてAdjust導入の話があった、という経緯です。

渡辺:先程もお話した通り、体制の構築と施策の整備をしなければならなかったので、メディア、EC、店舗に対してコミュニケーションをとっていました。店舗に関しては既存オペレーションもあるため、難しいかなと当初は思っていたんです。しかし、後藤にAdjustのレクチャーをし、活用例を挙げて説明したら自発的に施策化してくれて、すごい速度で実行していってくれました。

MZ:具体的にはどのような販促物を作ったのですか。

後藤:レシートやポスター、チラシ、カードなど様々ですね。Adjustで販促物別にトラッカーを作り、それをQRコードにして効果測定を行いました。今では直接Adjustの管理画面でトラッカーのQRコードが作成できるので、より便利になりました。

 店頭の場合、いらっしゃるお客様の年代は10代から60代まで様々です。ネットリテラシーもまちまちなので、簡単な話法を交えながら使える、わかりやすい販促物を何パターンも作りました。

 一番長く使えて効果があったのは、A7サイズのチラシですね。スタッフのメイクポーチにも入れやすく、掲示・配布ともに使いやすいため、現場のオペレーション的にも良く、結果として最もダウンロードにつながった販促物となりました。

店舗で実際に配布していた販促物。写真左のA7サイズのチラシはアプリダウンロードへの効果が最も高かった

後藤:季節や時期が影響する販促物もあります。たとえば、レジ前の床に貼っている、足跡シートのようなPOPです。普段はあまり効果がありませんが、レジ前に列のできる夏休みやセールの時期になると、一気にダウンロード数が増えます。後日分析していて「この月はレジ列ができた月なんだな」と気づきを得ることもありました。

 効果計測を基に試行錯誤を重ねたことで、顧客接点別の効果的な販促物が決まってきたように感じています。

夏休みやセール時に効果の高いQRコード入り足跡シートのPOP

コロナ禍でスタッフの意識が変わった

MZ:販促物から得られたデータが、店舗づくりやオペレーションに役立っているということでしょうか。

後藤:そうですね。この点に関しては、スタッフから上がった声がかなり影響しています。「足元のPOPが欲しいです」「アプリ訴求できるリーフレットはないですか」といった積極的な意見が現場から上がってくるようになりました。

後藤:ただ、アプリの重要性を意識付けするまでには時間がかかりました。

 店舗担当が店舗とのアクションプランミーティングでアプリ客の再来率の高さを伝えたり、月1回の店長会議での実績報告にアプリまわりのデータを加えて伝えること、アプリの販促施策を行うなど、各部署のメンバーが協力して、徐々にスタッフ全体を巻き込んでいきました。

 意外な転機となったのがコロナ禍です。@cosme STOREは、それまでフリー(非会員)のお客様が多い特長がありました。ところが、コロナ禍の影響でフリーのお客様がガクっと減ってしまったんですね。

 お客様のいない状況は、スタッフ自身が顧客化と再来店の重要性について考えるきっかけになったのではと思います。アプリを利用されているお客様とフリーのお客様では顧客単価も買い上げ点数も全然違いますし、アプリのお客様を増やすことが結果的にお店を支えてくれるという事実を、スタッフが身を以て実感できたことが大きな転換期になったのではないでしょうか。

 また、2020年に@cosme TOKYOができたこともあり、@cosmeを知らない方や若年層の方など、新規が増えたことも功を奏して、全体の数字が大きく変わっていきました。

アプリをビジネスのグロースに取り入れたい方におすすめです!

 アプリマーケティングを効率的に行い質の高い顧客を増やすための各キャンペーンの効果測定と最適化をサポートします。その他、ユーザーデータを保護するソリューションやアナリティクス機能、オートメーション機能を提供しています。日本のスタッフがお客様の成功をきめ細かくサポートいたします。

 本記事でAdjustに興味を持たれた方はAdjustの公式サイトからお問い合わせください。

アプリユーザー数は7倍、売上は前年比150%

MZ:店舗送客施策と効果測定によって、具体的に得られた成果についてお教えください。

渡辺:数字的な話をしますと、Adjustのトラッカー計測ベースで2020年の1月から3月までのわずか3ヵ月間で、アプリユーザーの数が倍増しています。その後、コロナ禍における店舗休業の影響で一時落ち込みますが、休み明けに回復し、2021年の6月には、2019年の約7倍にまでユーザーを増やすことができました

渡辺:また、売上ベースでは、同じく2021年6月の時点で、前年比の150%を達成しています。顧客の比率を見ても、やはりフリーのお客様よりもアプリ利用のお客様の占める割合が多かったですね。

後藤:売上のインパクトは大きいです。先ほどのコロナ禍の話も含め、アプリの重要性をスタッフ一人ひとりが把握し、それをきちんとお客様にご案内できる土台ができてきたと感じています。後は、施策を掛け合わせていかに効果をブーストさせるかですね。

 先ほど年末の@cosme BEAUTY DAYの話がありましたが、その小規模バージョンとして6月の頭に「@cosme SPECIAL WEEK 2022」を開催しました。購入金額の10%分のポイントを還元する施策です。

 このポイントバックキャンペーンは、元々店舗では効果の出にくい施策でした。社内では懐疑的な意見も多かったのですが、今回のSPECIAL WEEKでは一定の効果が得られ、ポイント系の施策の有効性が以前より増している印象でした。これはアプリのお客様が増えた証拠で、ポイントバックにメリットを感じるお客様が来店してくださった結果、と認識しています。

ユーザー体験の強化とEC併売率が今後の鍵

MZ:これまでの成果を踏まえ、今後の展望としてどのような取り組みを考えられているのでしょうか。

渡辺:プロデューサー、ディレクター、企画、テクノロジー・デザインの方々、そして店舗の方々が有志として動いてくださり、そしてプロジェクトを経て組織としてスケールさせてくれた方々がいたからこその今かな、という想いが前提としてあり、それら無くして今後は語れないかなと思っています。

 それを踏まえて、今後は@cosmeにおけるユーザー体験の磨き込み、より一層のメディア強化や、店舗とECの連携を求められてくると考えています。@cosmeに期待していただいている方々のニーズに応えていきながら、さらなる可能性や価値を作り上げていくような仕事を部門で手掛けていきたいです。

後藤:大まかに2つの展望があります。

 1つは、アプリ体験の強化。ポイントカードの利用だけではなくて、アプリをもっと使っていただく仕組みや仕掛けを増やしていきたいと思います。

 もう1つは、ECとの併売率向上です。大型販促キャンペーンの際、店舗とECどちらで買うか悩まれるお客様がいる一方、商品について相談したい、試したいという理由で店舗を選ぶお客様も多くいらっしゃいます。そういった店舗メインのお客様がECの商品を手に取る機会を増やせないかと。

 その施策の一環として、秋に「新会員ランクプログラム」の実施を計画しています。今まではECにしかなかった会員ランクプログラムを、店舗とEC共通にする取り組みです。店舗とECの両方でお買い物いただけるメリットを感じていただけるように取り組んでいきたいと考えています。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

坂本 陽平(サカモト ヨウヘイ)

理系ライター、インタビュアー。分析機器メーカー、国際物流、商社勤務を経てフリーランスに。ビジネス領域での実務経験を活かし、サイエンス、ODA、人事、転職、海外文化などのジャンルを中心に執筆活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/08/24 11:00 https://markezine.jp/article/detail/39458