人材成長を支える3つの取り組み
──若手からベテラン、また海外からの人材など多様なスタッフが集まる組織だと思いますが、人材育成に関してはどのような取り組みを行っているのでしょうか。
吉田:現在デジタルエンターテインメント事業本部では、人材育成を効率よく行うため、「エースの複製化」「小さな達成」「実務とアカデミックの融合」をテーマに様々な取り組みを行っています。それぞれについて紹介します。
エースの複製化
吉田:どんな組織でも、エースと呼ばれるような優秀な人材が1人は在籍していると思います。エースは会社を支えてくれる一方、頼られがちになり、業務などが集中してしまうことなどは良くある話です。そうなると他のメンバーのスキルが拡充できず、成長が鈍化し、組織としての厚みが出ない。
そのため、デジタルマーケティング担当やPR担当といった業務ベースで極力切り分けず 、失敗してもいい、フォローできるような体制を整え、新しい領域にチャレンジできる環境を構築しています。たとえば、あるマネージャーは元々デジタルマーケティングに特化したスキルを持っていたのですが、今では海外マーケティングの責任者として戦略設計から携わっています。
若いメンバーも多い組織なので、様々な領域を理解し、苦手とする部分は他のメンバーが補い合えることを目指しています。
2.小さな達成
吉田:小さな達成は、成功・失敗に関係なく、その月にチャレンジしたことを必ずほめ、評価しようというスローガンです。毎月行われる会議で、マネージャーが取りまとめた取り組みを共有するようにしています。
毎月1人のメンバーが何かにチャレンジすれば、1年間で12個の新しい知見や学びが得られます。そのような小さな達成を積み重ねることで、自社内に事例やノウハウが貯まっていき、チャレンジする文化も根付いていくと考えています。
久保:現場から見ても、「小さな達成」に関する取り組みはとても力になっています。チャレンジを推奨してくれる環境はもちろん、自分の施策を制作している間にもリアルタイムで他のメンバーの取り組み状況や結果が共有されるため、それを参考にしてトラブルを未然に防ぐことに役立てたり、施策の横展開がすぐにできたりします。
たとえばTwitterを活用したキャンペーン設計において、Twitter社のオリジナル機能だけでなくベンダー各社の特別なキャンペーン機能を使用し、得られた効果やトレンドインのコツなどを即日チームへ共有しています。これにより、後続のキャンペーンで想定以上の結果につながった事例があります。
また、マーケティングだけに留めず開発事業部にも共有することで、普段マーケティング部門がどのような取り組みをしているのかの可視化や、そこを起点とした次回以降の協業について話し合える環境も非常に貴重だなと思っています。
3.実務とアカデミックの融合
片瀬:変化の激しいゲーム業界の情勢に対応するには、実務で得られる知識だけでは足りないと考えて始めたのが実務とアカデミックの融合です。具体的には、日本マーケティング学会の理事を務める大学教授をお招きし、消費者行動学やブランドロイヤリティーなどについて、半年程実践的な講義を行っていただいています。
たとえば、消費者行動学に基づいてお客様がゲームをどのように認知し、態度を形成し、行動(購買)につながっていくのかをアカデミックな面から考察することは、事業の強みや市場環境を俯瞰でき、戦略を策定する上で思考の幅を広げることや、論理性の向上につながります。アカデミックな知識は、すぐ実務に役立つものではありませんが、重要な取り組みだと考えています。
コトダマンを過去最高の売上にしたマーケティング
──現在、デジタルエンターテインメント事業本部が運営する「共闘ことばRPGコトダマン」が好調だと聞いています。マーケティング部門では、どういった取り組みを行ったのでしょうか?
吉田:コトダマンは「ことば遊び」を採用したゲームで、「ことば遊び」のシステムが強みです。私が入社した当時の印象としてはマーケティング領域において、取り組むべき課題や優先順位の整理などをすれば、もっと成長の余地があるタイトルであると感じたことを覚えています。
その際「戦略の作り込み」と「戦術の実行」について各々が注力できるよう組織体制を見直すと同時に、片瀬や久保などのメンバーと戦略を一から検討し、やるべきこと、やめるべきことを決める作業に取り組みました。
そして、やるべきことを緊急度と重要度の2軸のマトリクスで整理し、メンバー全員に整理した内容と今後行うべき施策を伝えていきました。衝突もありましたが、着実に小さな達成を積み上げて約半年で過去最高の売上を生み出しました。そこからはコンスタントに目標を達成できる状態が続いています。
──施策を緊急度と重要度で整理したとのことですが、具体的にはどのような基準で判断していたのでしょうか。
久保:「他がやっているから」という理由で行っていた施策は一旦すべて止めました。また、コトダマンは著名なIPとのコラボが多いタイトルでもあったので、各コラボレーションの費用対効果などを整理しました。
加えて、以前よりも遊んでくださっている方々がどのような情報・体験を求めているのかを突き詰めるようになりました。組織としての判断軸をお客様にとって重要か、緊急性が高いかという部分により注視するようにしたため、実行できたと考えております。