皆で楽しむバーチャル空間を創造したHIKKY
山田:御社はVR法人と銘打って、2018年からバーチャル空間上でのマーケットイベント「バーチャルマーケット(通称:Vket/ブイケット)」を開催されています。日本において、メタバース関連の事業にいち早く取り組まれていますね。
舟越:HIKKYは元々、バーチャル空間にものを作ったり、アバターとなって自己表現したりするクリエイター・VRユーザーたちの集まりでした。
集まった皆でバーチャルの環境を便利にしようと、いろいろなものを作って持ち寄るようになり、そのうち作ったものを「誰かに見てほしい」、「良いと言ってくれた人にあげたい、売りたい」などの要望が出てきて、それを実現できる場をデジタル空間上に作ろうとバーチャルマーケットを発案したのが、当社のCVO(Chief Virtual Officer)「動く城のフィオ」です。
実はこのようなユーザーが作って、ユーザーが消費するバーチャルなUGC空間は、ありそうでありませんでした。そこが、他との圧倒的な違いです。
山田:ユーザーのための場所作りから始まったのですね。
舟越:そもそも、HIKKYの社名の由来は一般的に言う“引きこもり”です。精神または身体にハンディキャップがある等で、なかなか外に出られない人たちや、時間の都合で働けない人たちも、場所や距離の制約を解決できるVRでなら働く機会やものづくりの機会が持てます。
僕は「創りたい」思いに制限がかかったり、「うまくできないと恥ずかしい」と思ったりすること自体が、価値の損失だと思っています。ですので、それが思う存分発揮できる場所作りをしました。今ではバーチャルマーケットが、クリエイターの価値を存分に提供できる経済圏としての拠り所となっています。
創作欲を刺激するようなコンセプトとクリエイティブな場所を作ったら参加する人が増え、人は人を呼び、参加者たちは触発されて自分も作るというサイクルができあがりました。このサイクルがどんどん膨れ上がり、成功事例や私たちの上手くいかなかったケースも含めてノウハウが蓄積されています。
現在、バーチャルマーケットには100万人規模の来場者が見込めるので、企業も安心して参入できます。これは世界中を探しても同様の成功ケースがありません。
バーチャルマーケットは実験の場
山田:御社のビジネスモデル、マネタイズ方法はどのようになっているのでしょうか。
舟越:バーチャルマーケットの起源はUGCです。「自分事」として参加者が宣伝をするので集客性が高い。これ自体も強みです。かつ当社はそれを独占するのではなく、他のクリエイターやコミュニティの宣伝活動、あらゆる企業に還元することで、多くの人のメリットとなりそれが元となり、経済が回る、その一部が弊社のマネタイズにもつながっています。これらをビジネスモデルの原点としています。
山田:他社のユーザー数が少ないメタバースでは、協賛企業が投資回収するのは難しいと聞きます。御社のサービスではいかがでしょうか。
舟越:今、日本で展開されているビジネスモデル、たとえばバーチャル展示会などはかなり難しいと思います。なぜなら、企業だけを集めて、お金を使って宣伝するからです。このあたりの構造が当社とは異なります。当社のサービス、経済圏には既に集客サイクルができているので、出展する場所としての価値があります。
出展企業様は、プロモーションの観点で十分な露出があり、成果を得られます。また、もしKPIが達成できなかった場合でも、まずは参加することでメタバースに関する知見がたまり、他社からみても優位を取れますし、次に活かせるというのは継続的な事業においてメリットでしかないかと思います。
また、単なるバーチャルイベントへの出展だけが企業サイドの目的ではないケースも多いです。新たな事業モデルを検討する際にバーチャルマーケットに出展し、ユーザーが非常に喜んだもの、利益が出たものからヒントを得て、それらをベースにサービス化する流れができています。
HIKKYはバーチャルでの無数の事例、アウトプットのノウハウがあるので、それを用いて出展までのお手伝いをしています。このように、バーチャルマーケットでテストマーケティングを行い、事業化するという取り組みを総合的なビジネスとして重要視しています。