VRでなら、若者も気軽に試乗してくれる
山田:企業がメタバースに取り組むのは、Z世代や若者を取り込みたいからというイメージです。バーチャルマーケットのユーザーの属性をお伺いできますか。
舟越:20~30代が一番多いですね。大きい企業を中心に既存の広告や、あらゆる手段をやり尽くして、それでもリーチできない層が存在するかと思います。そんな人々が集まっているイメージです。
たとえば、2020年に開催した「バーチャルマーケット4」に出展したアウディの事例は象徴的です。VR空間でAudi e-tron Sportbackの展示・試乗がされましたが、多くの若者たちが自動車に関心を持ち、試乗体験を楽しみました。実際にその車の説明を受けられるバーチャル接客も体験しています。

最近の若者は自分で車は持たずに電車やタクシーでいいやという考えの方も多く、広告が響きにくくなっているかと思います。そんな彼らが、なぜ試乗までしたのかというと、まず「高級自動車に乗る」というハイプレッシャーな障壁を、「バーチャル」という空間と「アバター」という自分とは別の人格と見た目でクリアしました。1台千数百万円する車自体は、そっくりそのままバーチャル上で再現できるので、本格的な疑似体験ができます。そしてVRの特徴は、「友達と一緒に行ける」点。
友達と複数人でドライブすることも可能なのです。ECサイトは早く便利に安く買うところであり、友達とは行けないですよね。そこが非常にポイントです。遊びながら目的地に行き、実際の街をぶらつくように様々なものに見て触れて、だからといって買わなくてもいい。でも購入することも可能。その中のアイテムの一つとして高級自動車もあったわけです。
山田:なるほど。リアルでは存在する障壁がなくなるのは、とても魅力的ですね。
スモールスタートで、ゼロからイチを生む
山田:メタバースをやってみたいけれど、成果につなげられるか不安な担当者も多いと思います。うまく始めるコツはありますか。
舟越:手前味噌ですが、バーチャルマーケットとVket Cloudの活用をお勧めしたいです。Vket Cloudは、スマホやウェブブラウザのリンクから誰でも簡単にアクセスできるVR空間を作れる開発エンジンです。
まずはバーチャルマーケットへの出展をご相談いただくと、当社の営業や制作の担当者が“いい感じ”のコンテンツを企画・提案します。バーチャルマーケットでは、いいもの・おもしろいものが純粋に評価されます。ただ、その基準がオフラインとは違うケースもあります。VRを肌感で知っている当社が企業様のコンテンツ作りをする意味はここですね。
そして、参加者の反応をベースに、プロモーションやサービス化のアイデアを出していきます。固まったらVket Cloudをプラットフォームとして展開するのです。
ですから一度バーチャルマーケットに参加して、VRのリアルな感じを掴むことは、スモールスタートを切るいい方法だと思います。旧来の価値にこだわらず、トライしてみるとわかることがたくさんあります。
山田:実際に一緒にお取り組みをされたパートナー企業の反応はどのような感じですか。
舟越:おおむね好評です。たとえば伊勢丹様も一緒に頑張ってまずはバーチャルマーケットへの出展を実施しました。それをテストマーケティングとして、今ではREV WORLDとして単体事業になっています。当社としても喜ばしい結果ですね。
未トライのことを実践して、今までにないユーザーが獲得でき、その反応が数字で得られる。これは、ゼロからイチを作ることです。あとは、そのイチをどう育てるかです。