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メタバースビッグバン、次々に生まれる世界をどう活用すべきか?

ゲームが産業課題を解決する、田畑端氏に聞く「ゲーミフィケーション視点」からのメタバースビジネス

 メタバースをマーケティングに活用するという目的のもと、客観的・体系的に分析する本連載。第6回は「ファイナルファンタジーXV」のディレクター・プロデューサーとしても知られる田畑端氏にインタビュー。田畑氏が率いるTBT Labグループでは、他企業が持っていない技術や視点でイノベーションを起こしています。メタバースやゲーミフィケーションの可能性についてうかがいました。

RPG生まれのメタバース技術「PEGASUS WORLD KIT」

山田:JP GAMESさんは2023年に企業向けのメタバース空間制作キット「PEGASUS WORLD KIT」ver.1.0をリリースされました。従来のメタバース空間と「ここが違う」という特徴はどんなところですか?

田畑:「PEGASUS WORLD KIT」はRPGから生まれた、新しい世界を作るテクノロジーです。私たちのRPG開発ノウハウを詰め込んだ、Unreal Engine対応のミドルウェアとして企業にライセンスで提供します。リッチなゲームを作るためのツールであるUnreal Engineでの開発は高度な技術を要するのですが、それを簡易化して多くの特徴ある機能を開発できるツールセットにしました。

 ユーザー同士で本格的なソードバトルができたり、AIで動くNPCたちがいたりする、高度なゲーム制作環境をメタバースに拡張しています。AIタウンメーカーやRIVテクノロジーなどの機能で美しい世界を手軽に作り込め、制作に困ればサポートAIスタッフが使い方と作り方をサポートしてくれます。ワークショップに参加したり、自分が制作したものをフリマで売ったりすることも可能で、ライブ配信や最大1,000人のオンラインサロンなども開けます。現在はバージョン1.0を提供開始したところで、2023年内にバージョン1.5にアップデートを予定しています。

 また自社技術に限らずに、他社の優れた技術とも積極的に組み合わせていきます。たとえば言語技術では、NTT人間情報研究所さんが開発したクロスリンガルというボイス生成技術が非常に優れているので、組み込ませていただく予定です。これは数秒の学習量で、自分の声と話し方でテキストからボイスを生成し、しかも自動的に複数言語に自動拡張できるので、世界中のユーザーと自分自身として思いのままにコミュニケーションができます。

 私が大事にしているのは、「ゲームを作るための技術」の拡張です。キャラクターが移動するのはもちろん、アイテムを見つけたり、クラフトしたり、レベルアップするなど、ゲームでできることは基本的にすべて入っています。Unreal EngineのミドルウェアなのでPCでもモバイルでもゲーム機でも動作し、クロスプレイもできますし、クラウドベースにしてブラウザやVRでも利用できます。

山田:企業がそれぞれ自分たちのワールドを作るということですか。

田畑:そうですね。私たちはハイクオリティな表現と体験を重視していて、「PEGASUS WORLD KIT」はそれを簡易的に実現するためのツールになります。仮に自社で本格的に開発ができなくても、オートで空間構築をしたり、既にあるアセットを活用して工夫を凝らしたり、イベント機能を使ったりして、その企業独自のメタバース空間を構築できますよ。まだまだ発展途上ではありますが、簡単便利な高機能ツールとして進化させていきたいです。

ゲーム開発を通じて確信した、産業活用への可能性

山田:田畑さんにとってメタバースとはどんな存在でしょう?

田畑:私にとってのメタバースはゲームの拡張領域です。私たちは長くRPGを開発してきたメンバーが集まる会社なので、会社の使命としてRPGの可能性を追求していたら、その領域をメタバースと呼ばれるようになったという感覚です。ゲームを含むデジタル空間にビジネスモデルが入ったもので、ITとSNSの次世代的なものとして捉えている感じです。

JP GAMES株式会社 CEO 田畑 端氏
JP GAMES株式会社 CEO 田畑 端氏

 ゲームは、人を魅了して可処分時間を過ごしてもらう集客ツールであり滞在装置です。そしてその世界で楽しみを共有する人たちがコミュニティを作り、さらに長い時間を過ごします。しかもキャラクターという「身体」があるので、本や映像、映画などよりもずっと自分の主観的な体験になりやすいのです。ゲームの可能性を広げることは産業活用にもつながると考えてきました。

 ですから、ゲーム技術を産業側に提供する方法として「PEGASUS WORLD KIT」をリリースしました。世界観、UXデザイン、それらを効率的に開発するための技術、優れたユーザビリティなど、アウトプットに必要なものはすべて揃っています。

 実は、ゲーム世界内の商品のプレイスメントに関しては開発に関わった「ファイナルファンタジー(FF)VX」から既に試みていたんです。ゲーム世界で日清食品のカップヌードルを売ったり、プレイヤーのキャンプ道具をColeman社製のリアルなものにしたり、旅の途中で立ち寄る街をベネチアにしてみたり。そのように現実とリンクさせていくと、ユーザーにエンゲージメントが生まれていきました。「別ブランドのキャンプ道具はないですか?」という問い合わせが来たり、ゲームを遊んだ後にベネチアに実際に旅行されたり、多くの反応や行動変容が見られました。

 そこから、ユーザーが自発的に楽しんでいる世界内に、企業も自然に新しい顧客との出会いの機会を作る可能性があると学んだのです。

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この記事の著者

山田 輝明(ヤマダ テルアキ)

NRIネットコム株式会社DSX推進部副部長2009年にNRIネットコムに入社。デジタルマーケティング事業を立ち上げ、特にGoogleアナリティクス、デジタル広告に関するビジネス拡大に注力。2018年にNRIネットコムから一旦退出し、株式会社MeeCapを設立、スタートアップのCEOとして2年半業務を...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2023/07/14 08:00 https://markezine.jp/article/detail/42628

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