代理店に応じた二つのコンテンツ提供方法
東京海上日動ではAdobe Experience Manager as a Cloud Servicesを活用することにより、各代理店へのコンテンツを二通りの方法で提供した。「API提供(※)」と「Web提供」だ。二種類の提供方法を用意したことが、本施策を成功に導く重要な鍵になったと吉村氏は振り返る。
※プログラミングを通じ、クライアントとサーバーでデータをやりとりする仕組み
吉村氏によると、代理店は全国に約4万6,000社も存在するという。企業規模も様々で「有資格者である損害保険募集人が何百人といらっしゃる大規模な代理店もあれば、数人で地域に根差して経営している小規模な代理店や、主業のビジネスと合わせて保険を提供している代理店も存在します」と説明する。
規模や環境が様々な代理店のWebページにコンテンツを載せてもらう場合、懸念点となったのがコンテンツの“届け方”だ。たとえば、東京海上日動が「記事をAPI提供するので掲載してください」と依頼しても、Webページを保有していない代理店はそもそも掲載のしようがない。一方で、既にリッチなWebページを持つ代理店に対してWeb提供で記事を送っても「外部サイトに遷移させたくない」と抵抗を示されてしまう。
こうした背景から、コンテンツのAPI提供とWeb提供の双方を実現させる必要があったわけだ。この「ヘッドオン(Web提供)」と「ヘッドレス(API提供)」という二つの提供方式を実装するために、東京海上日動ではAdobe Experience Manager as a Cloud Servicesを活用した。
営業担当者もデジタルマーケティングのスキルを獲得
吉村氏はAdobe Experience Manager as a Cloud Servicesを「非常に高機能なCMS」と評価し、その理由を次のように述べる。
「Web提供はもちろんのこと、ヘッドレス提供でAPIを連携させてコンテンツの中身だけ代理店に送ることもできます。これにより、リッチなWebページを持つ代理店に対してもコンテンツを提供し、既存のページの中にコンテンツを組み込んでもらえるわけです」(吉村氏)
本施策の推進にあたり、吉村氏が所属するデジタルマーケティングのチームに加え、営業部門や損害部門のメンバーもジョインした。参画メンバーの出自をマーケティング部署に絞らなかったことによる効能を、吉村氏は次のように説明する。
「本施策を進めるにつれ『保険をどのようにお伝えすれば、お客様にわかっていただけるか』という知見が社内に蓄積されるようになりました。また、この施策で得たナレッジを営業現場に還元する取り組みも始まっています」(吉村氏)
東京海上日動では、本施策から派生する形でリスキリングの取り組みを開始したという。「デジタルマーケティングユニバーシティ」という名称のもと、損害保険ビジネスにおけるデジタルマーケティングの知見の活かし方を、吉村氏を中心にチームメンバーが講師となって営業担当者に教えているそうだ。