自社のダッシュボードを公開するふたつの理由
——熱狂的なファンづくりを進める中で、苦労したことはありますか?
コロナ禍の影響もあり、この1、2年はデジタルに注力しすぎたと反省しています。デジタルでの体験設計も店頭での接客も思いは一緒ですが、デジタルに注力するあまりパートナーの採用や教育が手薄になってしまったんです。パートナー、エリアマネージャー、本社の担当者が三位一体で動く必要性を改めて感じています。

三位一体で動くためには、全員が共通のデータを見なければいけません。KPIひとつとっても「売上を見るのか」「客数を見るのか」はたまた「新規顧客の数を見るのか」で話が変わってきます。お互いの“当たり前”がわからないままでは、話が通じないでしょう。
共通言語を持つ取り組みのひとつとして、CRISPでは「CRISP METRICS」というダッシュボードを運用しています。売上や客数、LTV、アプリユーザーの離脱率、顧客満足度など、全てのKPIをリアルタイムかつオープンに公開している点が特徴です。皆がダッシュボードを日々確認していると、共通言語も自然と身に付いてきます。

売上、客数、LTVやアプリユーザーの離脱率、顧客満足度など
同社が指標にしている全てのKPIをリアルタイムに公開している
——CRISP METRICSは社内だけでなく、社外にも公開されているのですね。情報開示の意図を教えてください。
ふたつの目的があります。ひとつ目は採用広報です。外食業界にデータドリブンなイメージを抱いている人はまだ少ないため、CRISP METRICSによってイメージを醸成し、異業種の方が応募するきっかけになればと。また「ITを活用した最先端の会社」というコーポレートブランディングにもつながると考えています。
もうひとつの目的は、外食産業のベンチマークになることです。CRISPがデータドリブン経営を推進し始めた当初、可視化した数値の多寡を比較する対象がなくて困ったことが原体験となっています。他の外食企業にCRISP METRICSを見てベンチマークとしてもらうことで、ゆくゆくは外食産業自体をデータドリブンにしていきたいですね。
接客のマネタイズで熱狂的なファンを増やす
——最後に、今後の展望をお話しください。
今後は「接客のマネタイズ」に力を入れる予定です。多くの企業において接客は大きな価値をもたらしているにもかかわらず、売上やリピートへの貢献が可視化されにくいために、スタッフが適切な評価を受けていないように思います。
熱狂的なファンをつくるには“余分な行動”が大切だと私は考えています。お客様に「今日で10回目の来店ですね」と声をかけることも余分な行動です。声をかけてもサラダの売上に直接的な影響はないかもしれませんが、お客様との関係には変化が生まれるかもしれません。こうした余分な行動は、お客様からのレビューや1on1では社内になかなか伝わらないものです。
そこで、パートナーのことをもっと知るために「ワークプレイス」というアプリを開発しました。パートナーの出退勤時に「今日はどんなことができましたか」など、余分な行動に関する質問を投げかける設定にしています。これらのデータが貯まれば、パートナーの接客とお客様の満足度や売上との相関が可視化できるはず。これがCRISPの目指す接客のマネタイズです。パートナーの正しい評価にもつなげられます。
ファンは人につきます。お客様だけでなくパートナーのデータも活用しながら、熱狂的なファンづくりに取り組んでいきたいです。