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ポストSDGsとして注目されるウェルビーイング マーケ活用の鍵は「ブランドの再定義」【お薦めの書籍】

 「ウェルビーイング」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。「新しい幸福の形」と捉えられている概念ですが、アカデミック界隈のみならず、企業からも「ビジネスに応用が可能」との理由で注目を集めています。本稿ではウェルビーイングを活用したマーケティングの解説書を紹介します。

「ポストSDGs」なビジネストレンド

 今回紹介する書籍は『ウェルビーイングビジネスの教科書』。著者はインテグレートの藤田康人氏です。

『ウェルビーイングビジネスの教科書』 藤田康人、インテグレートウェルビーイングプロジェクト(著)
アスコム 1,650円(税込)

 藤田氏は、慶応義塾大学を卒業後、味の素に入社。2007年にはヘルスケアなどの分野に強みを持つマーケティングエージェンシーのインテグレートを設立しています。

 本書は「ウェルビーイング」の定義からマーケティングに応用するためのノウハウまでを網羅しています。第一章ではウェルビーイングを巡る世界的な潮流について解説。第二章では海外におけるウェルビーイングビジネスの現状を紹介し、第三章以降でウェルビーイングを取り入れたビジネスの展開方法を説いています。

 本書の冒頭、藤田氏は読者に次のような問いを投げかけます。

あなたは、あるビールメーカーのマーケティング担当者だとします。上司から「ウチの定番商品のビール、年々売り上げが落ちているんだ。新しいコンセプトを考えてくれ。今の時代の消費者ニーズに合った売れそうなものがいい」と指示を受けました。さて、どんなコンセプトを考えますか?(p.07)

 ビールといえば「味」や「のどごし」「コク」などが頭に浮かびますが「今の時代のニーズに合う」となればSDGsのような生活者の価値観に訴える切り口の方が有効です。しかし「企業にとってSDGsに取り組むことは今や必要条件。SDGs対応を競う時期は、もう終わろうとしている」と藤田氏は指摘します。つまり、SDGsに代わるキーワードが今後のマーケティング戦略には求められるのです。では、どのようなテーマがこれからの消費者ニーズには合致するのでしょうか?

米国では約600兆円と試算されるウェルビーイング市場

 藤田氏が提案するポストSDGsなキーワードが「ウェルビーイング」です。ウェルビーイングとは「肉体的にも、精神的にも、社会的にも満たされた状態」のことです。スパやヨガ、瞑想などを取り入れた「ウェルネスツーリズム」や、予防医療・公衆衛生関連のウェルネス産業がウェルビーイングな事業として挙げられます。

 GLOBAL WELLNESS INSTITUTEの調査によると、ウェルネス産業は2020年時点で4.4兆ドル、日本円で約600兆円と試算されています。なお、同様の枠組みで見ると、同年の日本の市場規模は10.3兆円です。ただし「『ウェルネス産業がウェルビーイング市場そのものか』といわれると、一部に過ぎない」と藤田氏。ウェルビーイングとは一見すると関係の薄そうな事業も、見方次第ではウェルビーイングになり得るといいます。

「新しい価値が生まれれば、新しい顧客が生まれ、新しい市場が生まれる──ウェルビーイングの視点で商品を見つめなおすことで今までにない消費者との接点が生まれるのです」(p.14)

バドワイザーらが実践するウェルビーイングなマーケティング

 藤田氏は、新しい視点から商品の価値を見直すことを「関係性のリデザイン」と定義。リデザインが可能な商品・サービスとして「ビール」を例に挙げます。過度な飲酒は肝臓病や心臓病、さらには睡眠障害やうつ病などの心の病をも引き起こすため「その視点に立てばビールはウェルビーイングなものとはいえない」と藤田氏。しかし、適量なら気持ちをリラックスさせる効果もあるため「『リラックス効果』に注目すれば、ウェルビーイングなものともいえる」と述べています。

 藤田氏は、既にウェルビーイングを実践しているビールメーカーの事例を二つ紹介しています。一つ目が「バドワイザー」を生産・販売するアンハイザー・ブッシュ社の事例です。バドワイザーのコピーは「人々を集めるために、我々は存在する(We exist to bring people together.)」。つまり同社は、従来の「のどごし」「キレ」「うまさ」のみならず「人と人との関係性を作る存在」にフォーカスしたマーケティング戦略に舵を切っているというのです。

 二つ目がヤッホーブルーイングの事例です。同社ではビールファンを一堂に集め、様々なテーマでビールを楽しむ「超宴」というイベントを開催。クラフトビールに加え、人との交流から生まれる“幸福感”を提供している点について、藤田氏は「ウェルビーイングなアプローチだ」と述べています

 ウェルビーイングなアプローチを実践しているヤッホーブルーイングでは19期連続で売上を更新。商品の価値を「美味しさ」だけでなく「仲間との交流で得られる心の充足感」を生み出すものとして再定義することで、売上拡大にもつなげているわけです。

 本書では、住友生命が提供する保険商品「Vitality」や、ライオンの浴室用洗剤「ルックPLUS」などの事例も紹介。最終章では、事業・ブランドをリデザインする具体的な方法をワークシートに沿って解説しています。「新たな視点を取り入れて既存の商品・サービスに新規性を持たせたい」と考えているマーケターの方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?

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この記事の著者

宮田 浩平(編集部)(ミヤタ コウヘイ)

MarkeZine編集部。香川県出身。2016年に時事通信社入社、広島支社、岐阜支局で勤務。2019年から広告・マーケティングの専門メディアで編集者。主にPR・ブランディングやプロモーション領域の取材を担当。2022年5月から現職。企業のサステナブルやDE&Iを軸にした取り組みに興味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/10 08:30 https://markezine.jp/article/detail/40458

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