カンヌ・ライオンズはもはや単なる広告祭ではない
続いて友松氏は、自身の経験から毎年5月に開催される世界的な広告アワード「カンヌ ライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル(以下、カンヌ・ライオンズ)」参加のメリットについて言及した。同イベントでは近年、優れた広告クリエイティブを表彰するのみならず、データ活用も含めた総合的なマーケティングに関する講演が開催されるなど、テーマの裾野を広げているという。

友松氏は、フェスティバルのプログラムの中でも特にCMOだけが参加可能な「CMOアクセラレーター・プログラム」の活用を勧める。参加料金もリーズナブルで、世界中から集まるCMOたちとの交流を通し、グローバルなマーケティングトレンドを知ることができるのだという。
「カンヌ・ライオンズに参加する広告代理店はわずかで、最近は参加企業のほとんどをメディアやIT企業などが占めています。つまり、カンヌ・ライオンズは単なる広告祭ではなく、CMOが人脈を築け、広告のみならずビジネスに関する最新潮流も学べる場となっているのです」(友松氏)
またCMOがフォローすべき昨今のテーマとして「ビッグデータやブロックチェーンなどのテクノロジーのプレゼンスも高まってきている」と友松氏。ブロックチェーン技術によって、データの改ざんがしにくくなった結果、NFTの売買や暗号資産などペイメントの領域にも大きな変化をもたらしているからだ。友松氏は経営や自身の業務に応用するため、これらの新しいテクノロジーに対して、常にアンテナを張って新しい情報を収集しているという。
CMO一人ひとりが「自身ならどうするか」を考える
友松氏は、講演を振り返り「CMOは経営チームの一員であるため、自社の経営に対し、深いコミットメントが求められる」と強調。たとえば、商品・サービスの価格設定においては、消費者が手に取りやすく、かつ企業が利益を回収できる値段にする必要がある。そのために、マーケターが確かなデータを収集・分析し、正しい経営判断へ導くことが重要だという。よって前述の通り、データアナリストや第三者機関発のデータも、鵜呑みにすることなく精査するべきだと友松氏は指摘する。
また、日々進む技術革新に対し、情報をキャッチアップする姿勢もこれからのマーケターには求められるという。専門家にすべてを任せるのではなく、自らが積極的に調べ理解しておくことで、テクノロジーに関するデータを精査したり、斬新なマーケティングプランを考えたりする上で「投資判断に自信を持てるようになる」と加えた。
一方で、専門性が求められる業務をCMO一人が担うのは現実的ではない。データサイエンティストなどの専門人材を組織内に配置し、最新のデータ分析手法などCMOがキャッチアップできていない情報があれば専門家にその場でヒアリングし、相互にエデュケートし合う。そんな環境作りや組織作りもCMOの業務の一環だという。
友松氏は最後に「CMOは責任も業務範囲も、そしてビジネスに与える可能性も格段に広がっています。聴講された方も『自分ならどうするべきか』を考えてもらえると嬉しいです」と話し、講演を締め括った。
