米国最新情報レポート「MAD MAN REPORT」を毎月発刊している榮枝洋文氏の視点を借り、国内外の企業の動きやグローバルの潮流を解説している本連載。今回は、「AIエージェント型コマ―ス市場の形成」という転換点をテーマに扱う。長年、Amazonの独り勝ち状態だったコマース領域が大きく動き始める潮目を逃さずキャッチしたい。
NRF 2026、「Walmart×Google」のCEOによるBIG2セッション
「AIエージェント型コマース」への本格的なパラダイムシフトを示唆する発表が、2026年1月に開催された「NRF 2026」の基調講演で行われた。
時価総額1兆ドル企業Walmartの次期CEOであるジョン・ファーナー氏は、3兆ドル企業のGoogle/Alphabetのサンダー・ピチャイCEOを招き、「BIG 2」による歴史的な共同セッションを披露した。これは、単なる「WalmartとGoogleの提携」という枠に収まるものではない。Amazonが築き上げた「ウォールド・ガーデン(閉鎖的経済圏)」に対抗する、OpenAI、Anthropicを巻き込んだ「オープン・アライアンス(開放的連合)の形成」を意味している。
OpenAI、Anthropicによる「AIエージェント型コマース」との決定的な違い
Google×Walmartが構想するAIエージェント型コマースは、生成AIブームをけん引するOpenAIやAnthropicなどの「単体AI企業」が構想するそれとは、一線を画している。
単体AIは、「学習(情報の蓄積)」と「推論(過去データの分析)」という、いわば首から上の機能に特化している。意思決定や提案は可能だが、コマース領域で不可欠な「実行する手段」、すなわち物流、決済、カスタマーケアといった「身体機能」を持っていない。つまり、単一AI企業によるAIエージェント型コマースは、誤在庫や配達未達などの構造的な弱点を抱えたままだ。
これに対し、Google×WalmartによるAIエージェント型コマースは「脳(AI・検索・推論)」だけでなく、「身体(店舗網・物流網・決済インフラ)」と「記憶(長年にわたる購買データ)」を統合できる点に強みがある。詳しくは、以下3点を順に見ていこう。
- Google発表の新規格「Universal Commerce Protocol(UCP)」とは
- 在庫管理から発注・配送までを担う「Gemini Enterprise for Customer Experience」
- ドローン配送サービス「Wing」の4,000万人リーチ概況
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榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)
株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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