様々な立場でクリエイターと関わるスピーカーが集う
榊原:本日は日々クリエイターをサポートする立場のスピーカーの皆様それぞれの目線から、クリエイターズエコノミーの現状と将来を議論してまいります。まず、皆様がどのようにクリエイターに関わっているかご紹介ください。
明石:ワンメディアという会社でクリエイターを支援しています。数年前までは動画クリエイターとしての仕事が多く、会社としても2019年までは8割がいわゆる自分たちでコンテンツを作る仕事でした。
しかしコロナ禍をきっかけに、TikTokやYouTubeなどそれぞれのプラットフォームでクリエイターさんが沢山新しく出てきました。彼ら彼女らと一緒に動画やSNSのクリエイティブを作っていくという方針にしてから、今年は逆に8割がそういった社外のクリエイターさんと一緒に行う仕事になっていますね。
竹嶋:アドビの主力製品の一つ「Creative Cloud」でクリエイターの皆様をサポートさせていただいております。私の立場としては特に、企業向けに弊社の製品の導入・活用のソリューションを提供しております。
付け加えさせていただくと、私自身インディーズでミュージシャンを40年ほど続けております。ですから、いちクリエイターとしての立場としても本日お話ができればと思います。
外山:我々特許庁は、特許権や意匠権、デザインの権利、商標権などの登録審査を行っています。特許というと自分のものとして権利を取る、他の人の利用を制限して守る、というイメージが強いかと思います。
しかしこの特許を含む知的財産という考え方を、クリエイターが作ったものを「権利」という形にして世の中に出す準備をすることだと捉えると、もっとクリエイターにとって便利で安心につながるものになるのではないでしょうか。そういった観点から権利の大切さや、ユーザー思考になって物事を考えることが今の経営に必要だというデザイン経営の考え方を発信することが、今の私の仕事です。
榊原:私はピンタレスト・ジャパンで現在クリエイターマーケティングを担当しており、自身もクリエイターとして活動しています。ピンタレスト以前はエンジニアをやったり、Googleアドセンスやアドエクスチェンジに関わったりしていました。
その後YouTubeの事業に関わったことでクリエイターの世界に入り、YouTuberの育成に携わっておりました。それを経てCS放送の番組の制作やマーケティング、出演などをしている中で、クリエイターによく関わるようになった形になります。
クリエイターの定義とはなんなのか?
榊原:まず、皆さんはクリエイターをどのように定義されますか?
明石:私にとって現在のクリエイターは、SNSなどのプラットフォームで発信し続けて自分の持っているアテンションを高める人たちを指す言葉ですね。こういう人たちって、ひと昔前の裏方として物を作るような職人気質なクリエイターからすると、いわゆる邪道だったわけです。でも私自身はそうではないと思っていて、アクティブに自分のものを発信していく形がこれからの時代のクリエイター像なのかなと感じます。
外山:ドイツのアーティストでヨーゼフ・ボイスという方が「社会芸術」という概念を唱えていて、「社会に参加する皆がクリエイターであるべき」とおっしゃいました。これについて私の解釈ですが、たとえば教員や経営者であってもその仕事の中でクリエイティブな発想する人がクリエイターだと考えます。
解決すべき課題があるとクリエイティブにならざるを得ないですから、アイデアって「誰かのために」「課題を解決するために」生まれると思うんですよね。「誰かのために何かをクリエイトする人」がクリエイターなのかなと、個人的には解釈しています。