売上最大化の大前提となる「リード」の存在
マーケティング活動の大きな目的は「売上最大化」することにありますが、そのためには前提となる「リード(見込み顧客)」が存在しなければなりません。一方で、リードの獲得からクロージングに至るまでのプロセスは複雑であり、体系的な理解が求められます。
本稿ではリードの定義・分類についてと、売り上げに必要なリードの創出から絞り込みまでの各プロセスを分解して解説します。リードについて整理したいマーケティング担当者は、ぜひお役立てください。
マーケティング文脈での「リード」の定義とは?
マーケティング・営業の文脈で用いられる「リード」とは、まだ顧客として固定しておらず、受注確度の不明瞭な「見込み顧客」のことです。 実際には、自社と接点をもった際にニーズがあると判断される行動を取った層が見込み顧客に振り分けられます。
たとえば、以下のような行動を取ったユーザーがリードと判断されます。
- 問い合わせ
- 資料請求
- メルマガ登録
- 自社サイトを閲覧
もちろん、上記の各アクションでは、ニーズの顕在化度合いや成約見込みも異なります。しかし、いずれも将来的な「見込み顧客」であることには変わりありません。
ただし接点を持ったとしても、自社側が不適切なアプローチをしてしまうと、かえってリードが離れていくリスクもあります。ここで言う不適切なアプローチとは、「ニーズが顕在化していないタイミングでの架電」「興味・関心から外れたメルマガの高頻度な配信」などです。そういった事態に陥らないためにも、次項から紹介するリードの分類とアプローチ手順について、しっかりと把握しておきましょう。
マーケティングにおけるリードの分類
マーケティング文脈におけるリードは、以下の2通りの分類方法があります。
- プロセスによる分類
- 購買意欲による分類
ここからは、それぞれの方法について詳しく解説します。
プロセスによる分類
まずは、リードの購買プロセスごとに分類する方法です。
BtoBのマーケティング活動では「マーケティング→インサイドセールス→営業」という分業制によって、リードの購買プロセスに応じたアプローチを行うケースがあります。以下のように購買プロセスに応じてリードを分類すれば、「どの部門がアプローチを行う段階か」についての判断をするうえでも役立つのです。
- MQL(Marketing Qualified Lead)
- TQL(Teleprospecting Qualified Lead)
- SAL(Sales Accepted Lead)
- SQL(Sales Qualified Lead)
まずMQL(Marketing Qualified Lead)とは、自社が抱えるリードの中からマーケティング部門がアプローチするべき段階のリードです。MQLは自社商材を活用する意欲はあるものの、成約までにはまだまだハードルがあります。
そのため、リードが必要とする情報を適宜提供し、自社商材に関する理解促進を促すことで購買意欲を高めなければなりません。
TQL(Teleprospecting Qualified Lead)は、インサイドセールスなど架電でコミュニケーションをとるフェーズのリードです。テレ(遠隔)のコミュニケーションでニーズを拾い上げつつ、受注見込み次第では営業部門へと渡すことになります。
SAL(Sales Accepted Lead)とは、マーケティング部門やインサイドセールスから営業部門が受け取ったリードであり、訪問営業(フィールドセールス)などを通してアプローチを図っていく段階です。ここで、営業部門がSALの段階でないと判断すれば、TQL・MQLに戻すケースもあります。
最後のSQL(Sales Qualified Lead)は、すでにニーズが明確で、受注確度も十分に高まっているリードです。あとひと押しで成約となる可能性がある見込み顧客ですが、比較検討も進んでいるため、競合に流れてしまう可能性もあります。
なおプロセスによる分類には、以下のようにMQLの直前に「Inquiry」を配置する考え方もあります。
- Inquiry
- MQL
- SQL
- Close
問い合わせを意味するInquiryは「接点を持ったばかりのリード」を指します。Closeは「クロージング」のことであり、成約の段階です。
購買意欲による分類
リードは、顧客自身の購買意欲による分類も可能で、「ホットリード」「コールリード」と呼ばれます。
「ホットリード」とは、自社商材への興味・関度合いが高く、受注も十分に見込めるリードのことです。ホットリードの定義については各社さまざまですが、その定義が曖昧だと部門間のアライアンスが取りづらくなり、顧客リスト自体の信頼性が落ちかねないので自社内で明確にしておきましょう。
対する「コールドリード」とは、自社に対する関心が少ない見込み顧客層です。まず優先するべきは ホットリードであるものの、コールドリードであっても地道な情報提供を行うことでニーズの顕在化を促進できます。
マーケティングで必須となるリード管理の3ステップ
リードを獲得し、効率的にクロージングまで運んでいくためには、リードの属性情報や自社との関係値を分解したうえでの管理する、リードマネジメントが必要です。リード管理の方法は、大きく以下の3ステップに分けられます。
ステップ1.リードジェネレーション(顧客獲得)
ステップ2.リードナーチャリング(顧客育成)
ステップ3.リードクオリフィケーション(顧客の絞り込み)
次項よりリードマネジメントの各ステップについて、個別に解説します。
ステップ1.リードジェネレーション(顧客獲得)
リードジェネレーション(顧客獲得)とは、自社商材を購入してくれる見込み顧客を集めるための「集客行動」です。リードジェネレーションの段階で得られる情報は「氏名」「連絡先」「所属企業」などの属性情報に過ぎないため、売り上げにつなげるにはリードナーチャリング、リードクオリフィケーションも実施する必要があります。
リードジェネレーションの施策は大きく「アウトバウンド」「インバウンド」の2種類に分けらますので、それぞれ個別に解説します。
アウトバウンド型の顧客獲得
アウトバウンド型の顧客獲得とは「自社から外部へ向けた直接的な訴求」でリードを拾っていくことです。たとえば、「広告出稿」「架電」「展示会」のような施策がメジャーでしょう。
このような情報発信を通して、接点構築前のユーザーに自社商材に対する興味・関心を抱いてもらえるようにしていきます。アウトバウンドの施策は「プッシュ型」とも言われ、自社商材および競合他社に対する情報収集が進んでいない層に有効です。
ただし、ネット時代においては比較検討も容易に行えてしまうため、アウトバウンド型の手法によるユーザー獲得の確度は下がっている点も否めません。
インバウンド型の顧客獲得
インバウンド型の集客では、見込み顧客が求めている情報を提供することで問い合わせや資料請求などのアクションを誘引していきます。 取り組みの代表例は「オウンドメディア」「メールマガジン」などで、プッシュ型のアウトバウンドに対し、インバウンドは「プル型」のマーケティング手法 とも呼ばれます。
インバウンド型の集客、取り組みの初期段階では目に見えた成果が出づらく、施策を支えるためのコンテンツの準備に労力がかかる点がネックです。
ステップ2.リードナーチャリング(顧客育成)
リードナーチャリングとは、見込み顧客を育成することで、「受注がある程度見込める、有望な見込み客」に変えていくための取り組みです。
ナーチャリングの目的
リードナーチャリングに取り組む意義としては、以下のようなものが挙げられます。
- 競合他社への流出を抑止
- 集客コストを抑えられる
- 受注確度の向上
自社商材に関する関心が低いリードに向けて情報提供や双方向のコミュニケーションをとっていくことで、理解促進を促すのがナーチャリングの取り組みです。
リードナーチャリングの大目的は、顧客と接点を保ちながら、情報交換を続けていくことで関係性を深める点にあります。顧客ニーズを起点にした情報提供が前提にあるなら、よりホットなリードに熟してもらうという程度に認識するのがよいのではないでしょうか。
リードナーチャリングの手法
リードナーチャリングの手法としては、以下のとおりです。
- ブログ記事
- ホワイトペーパー
- SNS運用
- セミナー開催
伝統的な訪問営業のスタイルでは、「挨拶ついでに、セールスや情報提供を行う」という営業手法が取られてきました。しかし、近年では多様化する顧客ニーズに対応するため、MA(マーケティングオートメーション)などマーケティングツールの導入が進み、デジタルを活用した情報提供もメジャーになっています。
ブログ記事やSNS運用など、見込み顧客ごとの特性に合わせたチャネルを活用し、自社商材への興味、関心度合いを深めていきましょう。
ステップ3.リードクオリフィケーション(顧客の絞り込み)
リードクのオリフィケーション(絞り込み)では、ナーチャリングしたリードのなかでも成約率が高そうな層を抽出し、営業担当へとパスする行為です。
リードスコアリングの基本
リードクオリフィケーションの代表的な手段に「リードスコアリング」があります。
これは自社の基準をもとにリードに「点数付け」を行い、確度の高いリードであるかをスコアリングしていく方法です。この作業で得点が高いリードから優先的にインサイドセールスや営業部門にパスすることで、効率的に商談を成功させられるでしょう 。
福田康隆氏の『THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(翔泳社)を参照すると、リードスコアリングは以下の2つの観点から行うとされています。
- 属性スコア……所属企業の規模や業種、役職などの属性情報
- 行動スコア……自社サイトへのアクセスや資料ダウンロードといった行動情報
リードスコアリングは、上記のようなリードの情報を「属性情報」「行動情報」に分類したうえで行いましょう。
スコアリングの方法について例示すると、「サービスページを閲覧したら3点」「メルマガのリンクをクリックしたら5点」といった形です。自社の価値基準に応じて各アクションに点数をつけておくことで、ニーズの高いリードとそうでないリードを分類できます。それにより、リードごとのアプローチ戦略の策定に役立てられます。
スコアリングで用いるデータに対する考え方
リードスコアリングの目的は「リストが適切な顧客層で構成されているか(=明示的スコアリング)」「そのリードが適切なレベルの関心を示しているか(=暗黙的スコアリング)」を理解することにあるという意見も聞かれます。
顧客リストが「明示的」とされているのは、フォーム入力などで顧客が入力した情報に基づいた“明らかな”データであるためです。
対して、リードの興味関心度合いが「暗示的」と定義されているのは「直接何かに興味があるか」は分からないまでも、Web上の行動履歴から興味・関心の度合いを察することができます。たとえば、自社商材に関する資料請求を行なったなら「比較検討しているのかも」と予測できるでしょう。
明示的データは信頼性が高いと思われがちですが、暗示的データの方がリードの潜在的なニーズについての仮説立てには役立ちます。各アクションのスコアリングの優先順位づけは、以上も踏まえて行いましょう。
まとめ
マーケティング文脈におけるリードとは、単なる見込み顧客を表すだけでなく、「購買フェーズのどこに位置するのか」「ニーズの顕在化度合いはどの程度か」などによって、細かく分類されます。
成約につなげるためには、3つのプロセスに分かれたリードジェネレーションの取り組みが重要です。その際には、部門間で共有する情報の粒度を揃えつつ、足並みをそろえた取り組みを行いましょう。